Back still growing up

  2000年9月2日(土)18:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 大宮アルディージャ
 
 夏の終わりを感じさせるような大雨も束の間、肌に突き刺さるような強烈な日射しが襲ってくる。強い風が吹いているが、涼しいというよりも湿った熱風が吹いていると言った方が適切かもしれない。高温、多湿、強風とサッカーの悪条件が3拍子そろった今日の試合は日本五輪代表の壮行試合と時間が重なっているせいか、いつも以上に客の入りが悪い。いつも以上に空席が目立つスタンドには寂しさすら感じられる。
 キックオフを1時間後に控え、ようやく夕日が雲に隠れ、幾分か涼しさを感じることができるようになる。聞き慣れないDJが今日の対戦相手、大宮アルディージャの紹介と試合の見どころを説明しているが、緊張しているのか異常に早口な上、滑舌が悪く良く聞き取れない。だが大宮のジョルジーニョがスタメン復帰ということと、新潟は木沢に代わって井上がスタメンということだけはかろうじて聞き取れた。なぜ、木沢がサブ?練習でも好調を維持してると聞いていたが。
 木寺を先頭に選手が入場してくる。両主将のコイントス、そして写真撮影の後、選手がピッチに散らばり、キックオフを待つ。
 大宮のキックオフで試合が始まる。右サイドから短いパスをつないでいこうとするところを秋葉が出足良くカット。そして素早く左サイドのシンゴへ縦パスを送る。大宮のDFがボールに先に追い付き、サイドへクリアする。
 中野のスローインをシンゴが足元で受け、中野に返す。中野はワンフェイント入れた後、縦にドリブル。さらに体を左右に揺さぶりDFの体勢が崩れた瞬間、左足でセンタリングを上げる。ゴール前で鳴尾と奥野が競り合うが、お互いにボールに触れることができない。ファーサイドで岡本がクリアしようとするが、足がボールにジャストミートせず中途半端なクリアとなり、ペナルティエリアの中でボールがこぼれる。そこへ本間が一早く反応し、右足を振り抜く。横っ飛びするGKの指先をかすめ、ボールは逆サイドのゴールネットに突き刺さり、新潟が先制する。まだ試合開始1分。先週の湘南戦に続き、早い時間での先制点に選手の顔もほころぶ。
 改めて大宮のキックオフで試合が再開される。先制の勢いそのままに早めのチェックを仕掛ける新潟に対し、簡単にDFに下げて試合を落ち着かせようとする大宮。新潟の2トップも深追いはしない。
 またもや中盤のチェックでボールを奪った新潟が速攻。CKを得る。いつもならセルジオ、高橋の両CBがゴール前に行くのだが、2人ともセンターサークル付近におり、上がる気配は見せない。残り時間は85分以上あるだけにまだ守りに入るには早すぎる気がするが・・・。
 2人が上がらなかったことでゴール前には高さのある選手がいない。シンゴの蹴ったボールは簡単にクリアされると大宮が速攻をしかける。秋葉が早めにチェックにいき、独走はさせないが斜めにパスをつないで攻め込んでくる大宮。ボールを持った宮下が右サイドから中央へをドリブルで突破しようとする。一瞬対応が遅れた中野は思わず腕を伸ばしてしまう。もつれ合うように倒れ込む二人。主審がホイッスルを吹き、大宮にFKが与えられる。距離にして約30M、右サイドからのFK、キッカーはマーク。壁を越えて直接狙うこともできる。ゴール前ではセルジオとジョルジーニョがもみあいながらポジション争いをしている。マークの蹴ったボールはDFとGKの間を通っていく。セルジオが必死にクリアにいこうとするが、わずかに届かず。ノーマークになったジョルジーニョが胸でトラップすると体を投げ出すように飛び出してくる木寺の脇を狙ってシュート。早くも同点ゴールを決められてしまう。コーナーフラッグに向かって走りながら恒例の飛び回し蹴りのパフォーマンスを見せるジョルジーニョ。前半5分でお互いが1点づつを取り合う展開。このまま点の取り合いになるかと思いきや、逆にお互いが守りを重視し、膠着状態に入ってしまう。
 お互いの選手がコートに均等に散らばっているように見えるが、良く見ると両チームの違いが分かる。まず守備の際、大宮はDFラインを押し上げ、3ラインをしっかり守り、FW、MF、DFのラインでチェックにいくが、新潟は各ポジションが入り混じっており、効果的な囲い込みができないでいる。規律正しいポジションを取っていないため、どうしてもスペースを作ってしまう。
 攻撃の場合はボールを奪ってから2トップにあてて、そこから攻撃の起点を作るところは同じだが、ジョルジーニョ、磯山に比べ、鳴尾、ナシメントはトラップミスが多く、起点になれない。さらに新潟は攻撃的MFがワイドに開き過ぎ、さらに若干上がり過ぎているのでサイドバックのオーバーラップの妨げになると同時に中盤での組み立てに参加できずにいる。両チーム共に4ー4ー2のダブルボランチのシステムを敷いているが、新潟はときおり4ー2ー4のようにも見える。ときおり秋葉が最終ラインに入っての3バックも見せるが、サイドの選手が上がって受けるわけではなく、すでに上がった状態ではボールを受けることすらできない。
 強風も計算にいれてだろうか、セルジオが頻繁にDFラインの裏へロングボールを蹴り込む。何回かナシメントがDFの裏へ抜け出てボールを受けるが、スピードがなく簡単にDFに追い付かれてしまう。
 対して大宮はDFラインの前にボールを蹴り込んでくる。磯山、ジョルジーニョともにセルジオ、高橋を背負ったまま胸でトラップして中盤に落とすというポストプレーを忠実にこなす。体を寄せ過ぎた高橋が磯山に体を入れ替えられ、独走されかけるが磯山のシュートはワクをそれる。
 新潟も中央からの細かいパス回しから寺川が抜け出しボレーシュートを放つ。だがボールは大きくバーの上を越えてしまう。さらに同じように寺川、鳴尾とつないだボールを受けたシンゴが左足でシュートを放つが、これはGKのファインセーブに阻まれてしまう。
 大宮は基本的にはドリブルを交えたサイドからの攻撃が多いが、なかなかサイドを切り崩せない。一瞬ゴール正面でフリーになった原崎から縦に走り込んだ磯山にスルーパスが出る。完全に裏をかかれた高橋は追い付けない。中野が後ろから必死に足を伸ばし、かろうじてクリアする。
 お互い何回かチャンスはあったが、このまま前半終了。両チームともサイドを切り崩せないため、中央からの攻めが多かったせいか、どうも面白みにかける前半だった。特に新潟の右サイドには木沢が不可欠だということが改めて分かった。
 後半は新潟のキックオフで始まる。大きく右サイドに蹴りだし、鳴尾が懸命にボールを追いかけるがボールはラインを割る。
 後半最初にチャンスをつかんだのは新潟。寺川が中盤でボールをカットするとそのままのスピードを保ったままペナルティエリアの中へ侵入する。スピードでDFを置き去りして左足でセンタリング。だがファーサイドで合わせる人がいない。
 さらに中野とシンゴのコンビで左サイドを切り崩し、シンゴがセンタリング。ニアサイドでフリーのナシメントが頭で合わせるがわずかにポストの脇を抜ける。
 大宮は前半終了間際、負傷の原崎との交代で横山が入った。横山は右サイドバックに入り、氏家がボランチに上がる。後半はその氏家からボールが良く散らばり、攻撃の起点となっている。左右のサイドにボールを散らしたかと思うとミドルシュートでゴールも狙う。しかしシュートは大きくバーの上を越える。
 新潟は中央からの縦パスに鳴尾が走り込む。クリアしようとしたDFと飛び出してきたGKが交錯する。GKが転倒している間にシンゴがこぼれ球を拾い、右サイドのナシメントにパス。ナシメントはGKのいないゴールに向かって思い切りシュートを放つが、体を寄せてきたDFに当たってクリアされしまう。
 後半10分過ぎにようやく木沢、そして神田がユニホームに着替え、センターライン近くで交代の準備をしているが、なかなかボールが切れない。お互いに攻守を繰り返しながらもなかなかボールがラインを割らないのだ。ようやく新潟側のファールで試合が切れ、木沢が公平に代わって右バック、神田は秋葉に代わってボランチに入る。
 ようやく木沢が入ったが、すでに右の攻撃的MFの本間の疲労が激しく、なかなかオーバーラップのタイミングが掴めない木沢。
 大宮もチャンスをつかむ。ゴール前の細かいパス回しからマークがシュート。必死に木寺が腕を伸ばすも届かない。しかしボールはゴンッという音ともにポストに跳ね返って外側に弾かれる。
 運動量の激減した本間をカバーするかのようにシンゴが右サイドまでボールを受けにくるが、そこからがつながらない。シュートが打てない。
 大宮は岡本からの横パスを受けたジョルジーニョが一瞬コースが空いたところを狙ってミドルシュート。右のインフロント気味のシュートは木寺の伸ばした指先から逃げるようにゴールマウスの左上へ突き刺さった。今日2回目の飛び回し蹴りで喜びを表すジョルジーニョに大宮の選手が集まって喜びを分かち合う。とうとう大宮が逆転してしまう。
 永井監督はここで本間に代えて深沢を投入。しかし、これが裏目に出た。サイドに張りついてボールを受け、ドリブルで勝負する深沢と木沢の相性は良くない。右サイドは最後まで活性化することはなかった。
 ドリブルを交えたキープのうまい大宮は逃げ切りに出る。ボールを失わないことを念頭においた試合運びは結果として球離れが速くなり、サイド攻撃が活性化する。サイドで詰まったら後ろへ戻し、サイドを変えるという教科書通りの大宮の攻撃に組織的ではない新潟のプレスは簡単にかわされてしまう。
 焦りからかますますプレスがバラバラになり、奪ったボールも凡ミスで失ってしまう。主審に抗議している間に大宮に攻め込まれてしまうなど、すべてが裏目裏目に出る。
 終了間際のパワープレーもオフサイドでボールを失い、最後はボールを奪われた中野がファールを犯し、ゆっくりFKが蹴られた後に試合終了。1ー2の逆転負けを喫してしまう。
 昨年から合わせてこれで大宮に5連敗。選手にも苦手意識があるのだろうか。かなりつけいるスキはあったように見えたが。内容が良くないまま連勝を続けてきた新潟には当然の結果だったかもしれない。
 後半半ばくらいから寒さを感じ始めたのは僕だけではないはずだ。陽が落ち、強風に加え、木沢、寺川のロングパス、つまりサイドチェンジがなくては見ていて面白みに欠ける。これからの寒い季節、気温以上に寒い思いだけはしたくないものだ。

〒〒〒
ご意見、ご感想がある方は アルビサポ まで