Back still growing up

  2000年9月15日(金)13:00キックオフ
於 新潟市陸上競技場
アルビレックス新潟 対 ヴァンフォーレ甲府
 
 9月の半ばを過ぎたというのに、照りつける日射しは真夏のようだ。ときおり吹く風はまったく涼しさを感じさせない熱風である。熱されたシートに腰を下ろすとあまりの熱さに声が出た。
 まだデーゲームには早すぎたことは明白である。ただ座っているだけの観客でさえ、顔を真っ赤にして暑さに音を上げているのに、選手はこれからピッチの上で90分間も走り回らなければいけないのだ。この暑さの中、観客が楽しめるだけのパフォーマンスを要求するのは酷である。
 試合前の練習をする選手達。ストレッチの段階で額に大粒の汗が流れているのが見える。この暑さの中、白い歯を見せる余裕があるのはナシメントと久しぶりのベンチ入りとなるマルコぐらいか。木沢、神田の両ベテランの表情は苦しそうだ。
 スタメンが発表される。出場停止のセルジオの代わりは柴。DFでの出場は久しぶりである。そして甲府のFWは藤田慎一。昨年まで新潟のDFだった選手である。
 キックオフ時間が近付き、選手が入場してくる。ホームである新潟の青とオレンジのユニホームに比べ、アウエーである甲府の白のユニホームは涼しげだ。とはいえ、甲府は現在引き分けをはさんで28連敗中。暑さも何も言ってられない状況だ。
 新潟のキックオフで試合が始まる。一旦後ろに下げたボールを神田が左サイドを走る鳴尾目がけてロングパスを送る。ボールは長すぎて、そのままDFがトラップ。縦に大きくクリアする。コーナー近くまで転がったボールを吉原がダッシュで追いかけ、ボールをつなごうとするが、ミスパスで結局甲府のスローインになってしまう。
 今度は甲府のロングパスを柴がダイレクトでクリアしようとするが、これもミスキックでラインを割ってしまう。非常にミスの多い立ち上がりだ。
 3バックながら全体的に引き気味の甲府に対し、新潟は細かいパスをつないでいく攻撃を試みるが、手数をかけすぎてシュートが打てない。シュートが打てそうなところでもパスを出してしまい、結局パスミスやパスカットでボールを失ってしまっている。
 甲府の攻めはシンプルだ。実質藤田のワントップになっており、スペースに出したボールを藤田がキープし、攻撃の起点となる。味方の上がりが遅ければ、藤田が強引にシュート。とにかくシュートで攻撃を終え、カウンターを絶対許さない。
 新潟の最初のチャンスはCK。寺川が蹴ったボールに鳴尾がドンピシャのタイミングで飛び込み、ゴール中央フリーでヘディングシュート。だが体を捻り過ぎて、ボールはファーサイドに外れる。
 甲府のチャンスはサイドからの速い攻めから生まれる。甲府のカウンター、下がりながらのディフェンスで新潟のDFのチェックの遅れた瞬間、右サイドからクロスが入る。高橋と柴の間に新明が走り込んでヘディングシュート。完全にフリーだったが、わずかにバーの上を越える。
 今度は木沢から速いクロスにナシメントがDFと体を入れ替えての絶妙のトラップ。しかしナシメントよりも一瞬速く、オーバーラップしていた高橋が右足でシュートを放つ。シュートはGKの正面を突くが、珍しい高橋のオーバーラップにスタンドから驚きの声がもれる。
 相変わらず新潟のDF陣のチェックが遅い。甲府の選手に自由にプレーするだけの時間を与えてしまっている。特にゴール前でのチェックの遅れは即失点につながってしまう。
 失点はそのチェックの遅れから生まれた。右サイドでボールを持った甲府の選手にチェックが遅れ、フリーで中央へセンタリング。ボールを受けた新明がトラップしてボレーシュートを打つ。遅れて高橋が体を寄せにいくが、寄せ切れず、結局足を高く上げてブロック。これがファールとなってしまい、甲府に直接FKが与えられる。
 足をおさえてうずくまる新明にタンカが要請される。その間にほとんどの選手が給水してるのが見える。ピッチ上の暑さも相当なものに違いない。
 ペナルティエリアのすぐ外、ゴール中央やや左、距離にして約25、6Mだろうか。吉原が大声で壁に指示を送る。キッカーは阿井。2、3度フェイントをかけて蹴ったボールは壁の中を抜けてそのままゴールマウスに入ってしまう。信じられないという表情の吉原。フェイントの際、壁が割れてしまったのか、ボールの弾道は壁に入ったDFの胸の辺りを抜けていった。
 前半の半ばとはいえ、この暑さの中では先制点は重要である。後半まで追い上げるだけのスタミナが残るか、どうかも未知数である。
 新潟のキックオフで試合が再開される。当然、今まで以上に全体的に引いて守りに入る甲府。新潟は前半のうちに追い付きたいところだが、失点で意気消沈してしまったのか、足元でのボール回しになってしまい、まったく守備陣を崩せない。
 右サイドから木沢が果敢に攻め上がるも、ゴール前で合わせられない。チャンスらしいチャンスといえば、こぼれ球を寺川がシュートした場面ぐらいだろうか。これはワクを外れてしまう。
 そして前半終了。暑さのせいもあるだろうが、いつも以上に運動量が少ないのが気になる。運動量の少なさがチェックの甘さ、動きだしの遅さにつながって、攻守ともにリズムを作れないでいる。
 後半が始まる。暑さを考えると後半最初から飛ばして同点にしてしまわないと勝つことは厳しい。なんとか体力のあるうちに攻め続けなくてはいけない。
 後半の立ち上がりはまさにそんな心境が存分に出た攻め方だった。トップにボールが入るとボランチやサイドバックまで一気に駆け上がる。最終ラインを積極的に押し上げているので、こぼれ球を拾いやすく、攻撃に厚みが出てくる。だが、この暑さに適した作戦ではないことはたしかだ。いつまでスタミナが持つかどうか。
 寺川が独特のスピードを活かしたドリブルでサイドを深く切れ込んでシュートを放つが、GKに弾かれて、CKとなる。
 CKには全員がペナルティエリアの中に入って守る甲府。新潟も木沢を残して、残りの選手はペナルティエリアの中で待つ。シンゴの蹴ったボールに5、6人の選手が競り合うので、シュートはおろかクリアすることもできない。こぼれ球を拾った甲府の選手は誰もいない前線に蹴りだし、時間を稼ぐ。
 新潟はサイドからの放り込みより中央からの崩そうとするが、鳴尾、ナシメント共にポストプレーがかみ合わず、チャンスを作れない。
 永井監督はナシメントに代えて、式田を投入。シンゴをトップに上げる。さっそく式田はサイドのスペースへ走り込み、センタリングを上げるがDFにブロックされる。
 なかなかチャンスを作れない新潟に次第に焦りの色が見られる。副審のジャッジに本間が怒ってに副審に詰め寄って大声で抗議。木沢にいたっては相手のチェックに怒り、相手の足を蹴って、主審から注意を受ける。
 甲府もカウンターで追加点を狙う。DFの裏のスペースを果敢に突き、吉原のポジションを見て、冷静にループシュート。これは吉原が指先でコースを変え、ピンチをしのぐ。
 トップにポジションを変えたことで左右自由にうごけるようになったシンゴが右サイドでボールを受け、DFをドリブルでかわし、内側に切れ込む。左足でカーブをかけるように蹴ったボールはゴールバーを叩く。天を仰いで悔しがるシンゴ。
 今度は前線に上がってきた高橋が寺川からのパスを受けてGKと1対1になるが、無情にもオフサイドのジャッジ。
 今度は中野を下げて、秋葉を投入。秋葉を中央に柴、高橋と3バックを組ませる。両サイドに木沢と神田を張らせてサイドからの攻撃を強化する。早速、神田からのクロスを鳴尾がヘッドで折り返して、シンゴが右足でボレーシュート。しかし、ここはGKがファインセーブ。
 3人目の交代は神田に代えて、マルコを入れる。マルコはトップ下に入り、積極的にボールを受け、攻撃にリズムを作ろうとする。
 そして左サイドでシンゴがセンタリングを上げる。ボールはニアサイドの鳴尾の頭上を越え、マルコのやや後ろに飛んでいったが、ここでマルコは後ろに下がりながらのオーバーヘッドキック。GKが見送ったボールはわずかにポストの外側を抜ける。
 結局ロスタイムも甲府に粘り強く守り抜かれ、0ー1のまま終了。甲府の連敗は28で止まった。
 結果的に最下位のチームにホームで負けてしまったわけだが、この暑さの中、選手達は最後まで攻め続けた。これは十分で評価できると思う。
 ただ、攻めざるを得ない状況になる前になんとかできなかっただろうか。試合開始からあれだけの攻撃を見せてくれれば決して負けることはなかっただろうに。
 リーグも終盤に入り、第3クールが終わる。だが順位は上がらない。来年のためにも、単なる消化試合にしないでもらいたいものだ。

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