知床ブルースな夜

知床峠を越えると羅臼の漁村だ。出合った旅人は口々に羅臼はいいぞ。と言う。初めての地に期待を膨らませて
バイクを走らせる。今回の旅はオフロードバイクでの北海道初上陸だ。何年か前のチャリンコの旅とは
違いかなりの機動力で旅を進められる。もしかしたらバイクが北海道を旅するには一番いいのかもしれない。
1988年のこの夏まだオートキャンパーは少なくバイクやチャリンコでの旅人の天国だった。
今思えばどこに言っても綺麗だったし、流行とかじゃなく本当に旅が好きな連中が北海道を旅していた気がする。

羅臼に入ると右に無料の露天風呂、左に国設キャンプ場がある。このキャンプ場も無料だ。
早速適当な場所を見つけテントを設営。今日のネグラを仕上げる。話によるとこのキャンプ場には
食料を狙ってヒグマが出ると言うことだ、数年前にキャンプしていた人がテントごと潰されて怪我をしたという話が
言い伝えられている。ぞっとする話だが、なるほど熊が出てきてもおかしくない雰囲気だ。

時間に余裕があったのであたりを散策したりコーヒーを沸かしたりしてのんびりと過ごす。今日のキャンパーは、
テント20張り位だろうか。バイクは専用の駐車場だが、チャリは皆テントの横まで持ってきている。
またまた、今夜もお誘いがあるのだろうか。

ホエーブス725の音とともにコーヒーの良い香りが1日の旅の疲れを和らげてくれる。ブスのバルブを右に回し
火を止めると一気に静寂が訪れる。この瞬間とても好きなのである。やっぱりホエーブスは良い。
重いのがたまにきずだが。。。いつもそうなのであるが今日も1人のキャンパーが近づいてきて、
山屋さんですか?と聞いてくる。ちょっと自慢げに山もやりますよ。なんて言ってみる。

荷物を全てテントに押し込み空になったバイクにまたがり海に向かって走らせる。夕方近くの漁港に立ち寄ると、
数人の地元の人に声をかけられる。内地からきたのかい?と。しばらくいろいろと話してるとこれもってけ!
とウニをくれた。正直それまでウニはあまり好きではなかったのだ。しかし、それまでの僕の食生活をくつがえす代物だったとは。。

漁師は夜熊の湯に行くから一緒に飲もうと言うことになった。そしてとりあえず僕は獲得した食料を持って
キャンプ場へ帰った。キャンプ場につくと早速飯を炊く、そしてもらったウニをナイフで割りアツアツの飯の上にのせた。
恐る恐る口に運ぶ。何ともいえない甘さが口いっぱいに広がる。こ、こんなうまいもの〜!
なぜに今まで嫌いだったのか〜。思わずつぶやいてしまった。とにかくうまいウニ丼だった。
それからと言うもの北海道にきたら必ずウニは食すことになったのは言うまでも無い。

夕闇がキャンプ場を覆い、どこからとも無くアコースティックギターの音色が聞こえてくる。
ブルースのフレーズだ。お〜なかなか良いではないか。こんなところで生音を聞けるなんて。
そう思い思わずこちらもブルースハープを取り出しそのリズムにあわせて吹いてみた。
一瞬ギターの音が止まったが、また同じフレーズを刻んでいく。そのうちギターとハープの音が共鳴し合い旅人の場所を包んでいった。

次回へ続く。。。

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