チョコ トマト



                    偶然でもあり、必然でもあるこの出会い…       
                    もしかするとこれは、ある種の運命なのかもしれない
                    否、これこそが運命と呼ぶに相応しいものに違いない

                   ト マ ト
                    暖かな日差しを受け、シャワーを浴びたばかりの僕ら
                    の、柔らかな身体はキラキラと輝いて見えた。   
                    少し早く、成熟した兄姉は観衆をも魅了するまでの美
                    を兼ね備え、足繁く通い詰めていた男と3日ほど前に
                    家を出た。今日はそろそろ僕がここを出る番であろう
                    銀のマットの反射を受け一段と色づいた身体はすでに
                    兄姉さえも羨むであろう美しさだ。             

                    そして僕はここを出る。ここへ通う人間には珍しい、
                    まだ、あどけなさを残す少女に身を任せ、僕はここを
                    出る。      君が僕を選んだのは偶然ですか?
                    
                    
                    
                   チ ョ コ
                    物心ついたときには自由など既に無く、型にはめ込まれ
                    機械的に、皆同じように寸分の狂い無く、育てられた。
                    そして、身体ができあがれば、銀のドレスに身を包み、
                    窮屈な部屋へ閉じこめられる。私の身体の甘さを夢見ながら、
                    多くの人間が私を求めた。
                    
                    ガタンッ 雑な扱いに体を痛めながら、私は誰かに買われた
                    ことを悟りました、私はこの狭い箱を出たときなにを目にする
                    のでしょう…願わくばそれが辺り一面を血色に染める太陽の
                    断末魔でありますように…。
                    
                    
                    
                   悲 劇
                    アッ… 、
                    それは突然で、一瞬で、悲劇的な出来事だった、
                    少女は落ちてゆく僕を必死に捕らえようとがむしゃらに
                    手を伸ばした、 フワリ、一瞬宙を舞う感覚が身体を支配し
                    次の瞬間 僕の体は固い地面に叩き付けられていた…
                    痛い…のだろうか 体はグチャリと潰れ、ゼリー質の内蔵が
                    太陽に照らされ、テラテラと瑞々しく美しい光を放っていた。
                    
                    
                    
                    出 会 い
                    あっ…
                    余りの眩しさに私は目を開けることが出来なかった。
                    どうやら今は私が夢見たすべてをセンチメタルにさすような
                    夕暮れではなく、青空の広がる真昼のようだ。
                    
                    ようやく目が慣れてきたそのとき、フワリと何とも表現しがたい
                    恐ろしい感覚が私を襲った。 
                    落ちる。落ちる。落ちる。  何処へ??
                    グチャッ−…
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                    
                                        

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