最近のダイオキシン問題


1.はじめに

最近、我が国においてもダイオキシンに関する話題が大きく取り上げられ、社会問題ともなっている。特に都市ゴミ焼却炉から放出されるダイオキシンは、これにより近隣住民の健康が今にも侵されるかのような不安を与えかねない報道がなされている。 はたして、ダイオキシンが環境中にそれほど危険な物として存在しているのであろうか。 また、我々人類は昔からダイオキシンを摂取してきたであろうことは科学者の間ではかなり以前から分かっていたのに、最近特に問題視されるようになったのは何故であろうか。 ここでは、ダイオキシン問題に日本で最も早くから関与してきたかがくしゃの一人として、この問題を科学的視点に立って論じてみたい。

<ダイオキシン問題の歴史>
  • 1872年   ドイツで塩化ジベンゾジオキシンが初めて合成
  • 1962年   ベトナム戦争で米軍が2.4.5ーTなどの枯葉剤を使用
  • 1968年   日本でカネミ油症が発生
  • 1972〜1984年  フェノキシ系除草剤、木材防腐剤、PCBなどの製造過程で、副製物として生成することが判明
  • 1976年   イタリアのセベソ市で農薬工場爆発。ダイオキシン被害が発生
  • 1978〜1985年  ダイオキシンの強い毒性を確認
  • 1980年   第1回国際ダイオキシンシンポジウム開催
  • 1983年〜  ダイオキシン類含有製品の規制
  • 1984年〜  土壌、大気、水中など環境中に広く存在することが問題視
2.化学物質の毒性

急性毒性と慢性毒性
天然化学物質でも合成化学物質でもすべての物質は有毒である。人体に影響があるかどうかはその毒性と摂取量によってきまる。

   人体への影響 = 物質の毒性 * 摂取量(暴露量)

ダイオキシンは急性毒性も慢性毒性(特に発ガン性)も極めて大きいが、環境中の存在量や人体の摂取量は極めて小さい。

分析機器の農薬に対する感度と試料中の濃度
     (原図は住友化学工業(株)より提供)
  %    ppm   ppb    ppt        
     百分の1   百万分の1   10億分の1   1兆分の1     
1g      1μg   1ng   1pg   1fg 
1kg(L)  10g  1mg   1μg   1ng   
1000km  10km  1m   1mm   1μ