1. 薬物問題の現状 


Q. 日本の薬物乱用の現状はどのようになっていますか。  
A.
我が国で最も多く乱用されているのは覚せい剤で、薬物事犯全体の90%以上を占めています。  覚せい剤乱用は、第2次世界大戦後急速に拡大して(第1次覚せい剤乱用期)昭和30年代にいったん沈静化しましたが、40年代半ばから再び検挙人員が増加を続けて昭和59年には約2万4,000人に達し、戦後2度目のピ−クを迎えました。(第2次覚せい剤乱用期)  その後、厳しい取り締まり等によって検挙人員は減少傾向を示し、平成に入ってからは年間1万5,000人前後で推移してきましたが、平成7年から再び増加に転じて平成9年には1万9,722人と2万人に迫り、情勢はまさに「第3次覚せい剤乱用期」にあるものとみられます。
 特に、中高校生をはじめとする少年の補導人員が増加しているほか、初犯者(初めて覚せい剤取締法違反により検挙された者)の占める割合が年々上昇しているなど、覚せい剤乱用のすそ野が広がり、深刻な情勢となっています。


Q. 特に、少年の覚せい剤乱用の状況はどのようになっていますか。 
A.
   平成9年中に、覚せい剤事犯で補導された少年は1,596人(前年比160人増)で、なかでも、中学生が43人と8年のほぼ2倍となり、高校生も219人で減少の傾向がみられません。 この背景として、覚せい剤に対して「ダイエット効果がある」などと誤った認識を持ったり、「S(エス)」「スピ−ド」などと呼び、抵抗感が希薄になっているなど、少年に薬物の危険性、有害性についての認識が欠如していることが考えられます。

    平成5年 平成6年 平成7年 平成8年 平成9年
少年総数
 うち女子
 980
 494
 827
 446
1,079
  540
1,436
  676
1,596
  742
中学生
 うち女子
  17
  16
  13
  13
  19
  14
  21
  14
  43
  27
高校生
 うち女子
  38
  22
  41
  23
  92
  59
 214
 131
 219
 135


Q. 薬物はどこで密造され、どのように密輸、密売されているのですか。 
A.
   我が国で乱用される薬物のほとんどは、海外において密造され、薬物犯罪組織によって密輸・密売されています。

覚せい剤は、そのほとんどが中国で密造されているものとみられていますが、近年、タイ、ミャンマー、ラオス国境地帯の「ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)」でも錠剤型の覚せい剤「ヤ−バ−」が密造されており、我が国への密輸の増加が懸念されています。

大麻は世界中多くの地域で自生し、また栽培されていることから、世界で広く取り引きされていますが、近年我が国への主要な仕出地となっているのは、乾燥大麻ではタイ、パラオ、大麻樹脂ではタイ、ネパール等です。

コカインの原料となるコカのほとんどは、コロンビア、ペルー、ボリビア等南米で栽培され、その多くがコロンビアにある密造工場に運ばれてコカインが密造されています。密輸には主にコロンビアの薬物犯罪組織が関与しており、我が国へは、コロンビア、ブラジル等を仕出地として密輸入されています。

ヘロイン、あへんの原料となるけしの主な不正栽培地域は、「ゴールデントライアングル(黄金の三角地帯)」パキスタン、イラン、アフガニスタン国境一帯の「ゴールデンクレセント(黄金の三日月地帯)」で、これらの地域で密造されたヘロインやあへんがタイ等を仕出地として我が国へ密輸入されています。

密輸入の方法としては、航空貨物や船舶貨物等への偽装隠匿、携帯品としての持ち込み、身体への巻き付け、体内への飲み込み、洋上で漁船等を利用しての受け渡しなど、巧妙な手口が取られています。 国内においては、暴力団等を中心に密売網が広がっていますが、近年では、イラン人をはじめとする来日外国人密売人が、覚せい剤等複数の薬物を、街頭などで無差別に、かつ携帯電話等を利用して巧妙に売りさばいており、こうした密売方法が少年にまでも容易に薬物を入手できる状況を作りだし、薬物乱用の拡大に一層の拍車をかけていると見られています。