重症急性呼吸器症候群対応のマスクについて

(Severe Acute Respiratory Syndrome;SARS)
 
< 医療従事者及び家族等の場合 >
 
◇◇ 注 意 ◇◇
喘息や慢性気管支炎などの肺機能が低下している人がN-95タイプのマスクをすると呼吸困難になることがありますので、注意しましょう。

 


世界保健機関(WHO)の重症呼吸器症候群(SARS)の院内感染対策指針(2003年4月24日3訂)では、

 外来/トリアージ時(外来受診時の誘導)

  ・SARSの診断検査を必要として医療機関を受診した患者には、マスクを渡し着用させること。
  ・外来でのトリアージの段階に関与するスタッフは、下記(N95以上の基準)のようなマスクとゴー
    グル(眼を防護するもの)をつけ、全ての患者に接する前後、汚染が起こる可能性のある手技の
    後、手袋を外した後に必ず手洗いをする。

 入院時
 SARS「可能性例」の看護

 ・患者の隔離ユニット外への移動は避けなければならない。移動する場合には、患者はN95マスク
   着用しなければならない。
 ・仮に医療機関によって面会が許された場合も、面会者は最低限に抑えなければならない。
  面会者にはマスク、手袋などの個人防御用具(PPE)を渡し、医療従事者による監督下で患者と
   接すること。
 ・PPEは隔離領域に立ち入る全てのスタッフ及び面会者が着用しなくてはならない。
 ・着用されるべきPPEは以下のようなものである。
   適切な呼吸器の防護が行えるマスク(下記参照)
   手袋(両手)
   眼の防御用具(ゴーグルなど)
   使い捨てガウン
   エプロン
   汚染除去可能な履物
 ・呼吸器の防御:導入可能なところでは、*P100/FFP3あるいは、P99/FFP2のフィルターレベル
   (順に99.97%と99%の効果)のものを用いる。
  *N95(95%のフィルター効果)も高い防御効果をもつので、それ以外の高度の防御対策がとりにくい
   ところ、例えば隔離の前の段階のトリアージの場で働いているスタッフ等が着用する。
  できれば使用するマスクは、適切な「装着試験キット」を用いて、業者の仕様書に沿って、装着試験
  を行うべきである。
  使い捨てのマスクは絶対再使用しないこと。

 *N/R/P 95/99/100、またはFFP 2/3、またはこれと同等の国家工業基準(NOISH N, R, P 95, 99,
   100)、あるいはEuropean CE EN149:2001(FFP 2,3)と EN143:2000 (P2)、または製造国における
   これと同等の全国的/地域的基準を満たすもの。

と示されています。

 上記のN95マスクは米国のNIOSH規格の製品です。
 日本においては、厚生労働省が定める国家検定規格RS2区分(取替え式防じんマスク)とDS2区分(使い捨て式防じんマスク)に合格した防じんマスクが、上記のN95マスクに相当する粉じん捕集効率を有していると考えられます。



 
 <防じんマスク規格表>
    

日本・米国・ヨーロッパにおける防じんマスク規格

規格
日本
(国家検定規格)
米国
(NIOSH規格)
ヨーロッパ
(EN規格)



試験粒子
NaCl
NaCl
NaCl
粒子の大きさ
(マイクロメートル)
0.06〜0.10
(個数基準中央径)
0.075±0.02
(個数基準中央径)
0.6
*1(質量基準中央径)
捕集効率試験流量
(リットル/分)
85
85
95
区分

DS
 D:Disposabie(使い捨て式)
 S:Solid(固体)

Nシリーズ
 N:Not resistant to oil
FFR
 Filtering Facepiece
          Respirators
 (使い捨て式防じんマスク)
判定基準

100mg供給させる間の最低値
 DS1:80%以上
 DS2:95%以上
 
DS3:99.9%以上

200±5mg供給させる間の最低値
 N95 :95%以上
 N99 :99%以上
 N100:99.97%以上
測定開始から3±0.5分後の測定値
 FFP1S:80%以上
 FFP2S:94%以上
 FFP3S:99%以上



吸気抵抗試験流量
(リットル/分)
40
85
30及び95
判定基準
(  )内は排気弁付
 DS1:45Pa以下(60Pa以下)
 DS2:50Pa以下(70Pa以下)
 DS3:100Pa以下(150Pa以下)
 N95 :343Pa以下
 N99 :343Pa以下
 N100:343Pa以下

30リットル/分
 FFP1S:60Pa以下
 FFP2S:70Pa以下
 FFP3S:100Pa以下
95リットル/分
 FFP1S:60Pa以下
 FFP2S:70Pa以下
 FFP3S:100Pa以下




排気抵抗試験流量
(リットル/分)
40
85
160
判定基準
(  )内は排気弁付
 DS1:45Pa以下(60Pa以下)
 DS2:50Pa以下(70Pa以下)
 DS3:100Pa以下(150Pa以下)
 N95 :245Pa以下
 N99 :245Pa以下
 N100:245Pa以下
 FFP1S:300Pa以下
 FFP2S:300Pa以下
 FFP3S:300Pa以下

    *1:EN規格の試験粒子の大きさは、個数基準中央径では0.06マイクロメートルに相当します。

 下記に紹介する使い捨て式防じんマスクは、ウイルスの体内への侵入や空気感染の危険を確実に減らしますが、疾患または感染のリスクを皆無にするものではありません。マスクが血液や体液で汚染された場合、直ちに交換してください。不適切な着用や誤った取扱いをした場合、健康に害を及ぼしたり、死に至ることがあります。


< 一般の人の場合 >
  

 マスクは目の細かいものが効果が高いと考えられますが、息苦しさ等で長時間の使用に向かない上記のマスクよりも、近くにSARS(サーズ)感染者がいなければ、サージカルマスク(外科用マスク)、活性炭マスク、花粉用マスク、アトピーマスク等の使用で十分と考えられています。 ただ、目の粗い布製マスクは余りおすすめできません。なお、マスクは洗うことでフィルターの効果が減少しますので注意してください。