シアン化合物(青酸化合物)とは



< 薬品名 及び 性状 >
  • シアン化水素    (HCN)   ・・・・・・・・無色の液状、アーモンド臭
  • シアン化カリウム  (KCN)   ・・・・・・・・白色塊状または粉末状結晶 (アルカリ性)
  • シアン化ナトリウム (NaCN)   ・・・・・・・白色粒状体または溶融片 (アルカリ性)

< 中毒量 ・ 致死量 >
  • HCN  : ヒト吸入推定致死量      50〜100r                   
  • KCN  : ヒト経口推定致死量     150〜200r 
  • NaCN : ヒト経口推定致死量     200〜300r 

< 作用機序 >
  • 細胞呼吸障害 (チトクローム酸化酵素系統破壊)
         シアン化カリウム、シアン化ナトリウムは胃液によってシアン化水素を遊離し、これ
         吸収される。      

< 中毒症状 >
  • 経口、吸入の場合 ・・・ 直ちに以下の症状が発現する
                  呼吸困難、呼吸停止、チアノーゼ、心房細同、ST・T変化、期外収縮
                  心停止、瞳孔散大、対光反射消失、痙攣、意識喪失

             ※ 大量の場合は数秒あるいは数分以内に死亡する 
  • 軽症の経口、経皮、吸入の場合
                  めまい、過呼吸(化学受容体を直接刺激するため)
                  嘔吐、顔面紅潮、頭痛、血圧降下、頻脈、胃部の不快感
              (急性シアン化物中毒では、4時間生存すれば通常回復の見込みがある)

  • (代謝)
           主にシアンは肝・腎などに存在するチオ硫酸と反応して毒性の低いチオシアナイ
           ドとなり尿中に排泄される。

 処置法 
< 経口の場合 >
      @ 胃洗浄 ・・・・・ ただし軽症で服用してまもなくの場合のみ有効

      A 心肺蘇生 ・・・ 100% 酸素で人工呼吸する

      B 直ちに ・・・・・ 亜硝酸アミルの吸入を行う。〔 1A(0.2ml)を3分間かけて5分毎に〕 
                   (ヘモグロビンをメトヘモグロビンに変化させ、シアン・メトヘモグロビンを
                    生成させチトクロームオキシダーゼを回復させる)
                  (注) ヘモグロビンのメトヘモグロビン化は40% を越えてはいけない。

      C 続いて ・・・・・ 3% 亜硝酸ナトリウム 10ml を約3分間かけて静注する。
                   ただし、25s 以下の小児は、亜硝酸ナトリウムとして10r/s を投
                   与する。(作用は亜硝酸アミルと同様である)

      D 続いて ・・・・・ 10% チオ硫酸ナトリウム 125m を10分以上かけて静注する。
                   ただし、25s 以下の小児は、チオ硫酸ナトリウムとして 50r/s 
                   を投与する。(ロダナーゼが触媒となり、シアンをチオシアナイドに変換
                    させ尿中より排泄させる)

          以上によって効果がなければC D を初回の半量投与する。

      E 持続輸液  (アシドーシスの補正も行う)

      F 対症療法

< 吸入、経皮の場合 >
      状態に応じてA〜Fの処置を行う。 



※ 備 考 



参考文献 : 「 急性中毒情報ファイル 第2版 」   (株)廣川書店発行