コンピュータルーム等における電磁波の影響について


<はじめに>
 パソコン、携帯電話等エレクトロニクスの進歩によって、ネットワーク社会というものが身近に感じられるようになってきました。Y2K問題を乗りこえ新千年紀の生活はこうした便利な機器、システムによってずいぶん便利で豊かなものになるのではと思われます。
 が、その反面、私たちがヒトという生物であることに変わりがないのも事実で、こうした電子機器から発生する電磁波の様々な影響が今、社会問題化され始めています。ここでは、電磁波の影響について簡単に説明するとともに、これから増加して行くであろう小中学校のコンピュータルームの電子機器や携帯電話における電磁波の状態を実際に測定してみることでこうした問題を考えていきたいと思っています。
<電磁波>




 放射線・光・電波を総称した呼称で、電界(電場)と磁界(磁場)が相互に共存、振動しながら真空又は物質中を伝搬する波動のことで、極低周波から中波、短波、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、ガンマ線まで含まれます。電磁波は、波長の長短、周波数の高低にによってその性質が変化し波長が短くなるほど波、さらには粒子としての性質が際だってきます。ここで問題になっている(害があるのではと考えられている)のは、超低周波(ELF)と呼ばれる電磁波でテレビ、パソコン、電子レンジ、携帯電話等の電化製品のほとんどから発生しています。

<上方ほど周波数が高く、波長が短くなる>
放射線   ガンマ線
X 線
 
紫外線      日焼けサロン 
可視光線       
赤外線   熱 線 暖 房
極超短波 300MHz〜30GHz ミリ波
マイクロ波
UHF
レーダー・衛星通信
電子レンジ・携帯電話
UHFテレビ
超短波 (FM/VHF) 30MHz〜300MHz   VHFテレビ・FM放送
短 波 (HF) 3MHz〜30MHz   テレビ・短波放送・アマチュア無線
中 波 (MF) 300KHz〜3MHz   AMラジオ
長 波 (LF) 30KHz〜300KHz 低周波  船舶・航空機航行用
超長波 (VLF) 3KHz〜30KHz 超低周波 電磁調理器・船舶向け通信
極超長波 (ELF) 3Hz〜3KHz 極低周波 電灯線・送電線

単位: 1 ガウス(gauss,記号 G)とは
電磁CGS単位系で1電磁CGS単位の磁極から1cm離れた地点での磁束密度のことを言う。
1gauss=0.0001Wb/m²=0.1mWb/m²
< 1mG=1/1000 G >

光は電磁波か?
光が重ね合わせの原理に従い、干渉・回折の現象をあらわすことから波動であると結論される。が、これだけでは何の波動かは分かりません。Maxwellは
 1.電磁波も光も等しい速度を持つ
 2.どちらも横波である
 3.金属面などでの反射のしかたが同じである
ことから、光は電磁波に他ならないと結論した。その後、光が電磁波であるとの考えに基づいた理論の発展や光が原子や分子から出てくる機構が明らかにされたことなどから、現在では光が電磁波であることは疑いがないと考えられている。ただ、通常の通信などに使う電磁波は物理光学での波動の理論に従うが、光のように波長が短くなると量子論的に扱う必要が起こってくる。つまり、光は量子論によって考えなければならない電磁波と言うことが出来る。
電磁波の
作用効果
発熱効果
  1. 電波で分子を振動させ、熱が発生することを利用して電子レンジがつくられています。ヒトの身体にも影響がないとはいえません。
  2. 変動磁場の中にヒトが入ったとき、体の中に渦電流が生じそれがジュール熱を作り出すことで影響がでる。
※1 渦電流 時間的に変化する磁場の中におかれた導体の内部に電磁誘導によって生ずる渦状の電流
※2 ジュール熱 電流が流れると導体の温度が上がり、温度を一定に保つときは熱が導体の外に流れ出します。この熱をジュール熱といいます。
※3 変動磁場 磁場には、


磁場が時間に対して一定であるもので直流電流や永久磁石から発生する。エレキバン等身近な磁石の静電磁波(数十ガウス程度)であれば問題ないと思われる。



磁場が時間に対して変動する磁場で、一定の周期で変化する電気の流れである交流送電線や電波などから発生するもので、体内の荷電粒子を振動させ人体に悪影響を与えると言われています。
非熱効果
  1. 細胞の分子間で電子の移動が起きることで生体電気反応が乱され細胞レベルでのCa漏洩現象を引き起こす。
  2. メラトニン・セロトニン・ドーパミンといった脳内ホルモンに影響を及ぼす。
その他
  1. 航空機・ペースメーカー等、他の電子機器を誤作動させる。

身体的
影 響
OA化によって電磁波症候群といった言葉が使われるように、顔面紅潮・興奮・神経質・疲労・倦怠・憂鬱・不眠・めまい・頭痛・月経異常・光過敏性てんかん等があります。電磁界を長期間にわたって身体に浴びることは幼児期の白血病やその他の癌の原因になりうる、といった主張が一部の学者によってなされています。そうした主張や関連した疑問は未解明ですが、現在のところもっとも一般的な対処法は、長期間にわたって過分な電磁界に身体をさらすことは避けるということです。米国環境保護庁によって提唱されている「慎重な回避」を勧めます。なお、60Hzまでの電磁界についての国際的な規格はありません。
電磁波の
防止規制
日本では電磁波防止処置としてはVDT(テレビやパソコンなど画面がある電化製品)労働者に関わるガイドラインがあるのですがあくまで目安といったもので、電磁波対策が施されていない製品でないと販売できない欧米各国に比べて明らかに見劣りしています。日本企業も欧米向け輸出品には電磁波対策をしているそうなので、是非国内向けにもお願いしたいものです。
参考 : スウェーデンにおけるVDT電磁波規制ガイドライン
電磁波 区 分 測定距離 規制ガイドライン
交流
電場
超低周波(EFL)3〜3000Hz
超低周波(VFL)3000〜3万Hz
50pの距離
   〃
25V/m以下であること
2.5V/m    〃
磁 場 超低周波(EFL)3〜3000Hz
超低周波(VFL)3000〜3万Hz
   〃
   〃
2.5mG/m   〃
0.25mG/m  〃 
※世界の規制ガイドラインは人体に有害な電磁波は2.0mG以上と規定され
  る方向に動いています。
防御及び注意 電磁波から逃れることが出来るかと言うと答えは出来ません。携帯電話のマイクロ波はペースメーカー・医療機器・航空機等の計器に異常を起こさせる程のものですがこれを遮断・吸収することはほとんど不可能です。もしやるとしたら、電波や磁力線を反射・吸収する金属で何重にもシールドし全体を地面にアースした電波暗室とでもいったところに入る以外にないのが実態です。下で述べる「電磁波カット」といわれるものは多少電場の減衰には効果があるのですが磁場には全く効果がないのが普通です。実際、生体に悪影響を与えるのはこの変動磁場で地球の地磁気が極低周波(0〜100Hz)と共鳴し、生体内のDNAを損傷したり(進化上の突然変異もこうしたことが1つの原因だったのかも・・)細胞の生命活動に不可欠な原子イオン(Ca,Kなど)の漏洩など生体に重大な影響をあたえると考えられます。ただ、出来るだけ避けるのが望ましいということから少し対策・注意点を書いておきます。
  • 携帯電話などはハンズフリーのイヤホンマイクなどを使用することで頭からはなして使用する。
  • テレビ受像器などは出来るだけ離れてみる。又、電磁波は壁を突き抜けてしまうのでたとえ壁があったとしても近くで寝たりしない。
  • 妊婦・乳幼児は特に注意を要する。
  • 電磁波遮断スーツ、OAエプロン等の利用も考えてみる。
<方 法>
小牧市内のそれぞれ1校の小・中学校に協力していただき、授業中におけるコンピュータルームでの電磁波の状態を測定するとともに身近にある電子機器の電磁波を簡易型テスターを用いて測定した。
使用機器 電磁界テスター(EMF TESTER) MODEL EMF-822
  レンジ(ミリガウス) : 1〜199.9mG
  周波数範囲      : 30Hz〜400Hz
<測定結果>
1) S小学校コンピュータルーム
測定日 平成11年11月17日
在室人数 児童37名 大人3名
条件等 授業中に測定
パソコン NEC Pc9821Cx2
モニター 15インチディスプレイ
台 数  22台
教室内の様子
<パソコン机上> <6年生のお友達>
<室内平面>
最近導入された液晶ディスプレイ付きパソコン
(1台のみ)

ディスプレイ Flat Panel Display Pro Lite 36a
14.1' TFT ColorLCD
liyama electric Co.Ltb
(2) K中学校コンピュータルーム
測定日 平成11年12月 2日
在室人数 生徒20名 大人2名
条件等 パソコン使用時に測定                    
パソコン NEC Mate NX MA26D
モニター NEC 15inch Color Display N8571-11
台 数 44台
教室内の様子
パソコン机上

教室内平面

(3)その他の電子機器

<A> 携帯電話

機種 IDO DIGITAL(Sony) NTT DoCoMo DIGITAL D207
距離 かかってきた時 かけた時 話し中 かかってきた時 かけた時 話し中
0 cm 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上
2 cm 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上 181mG
5 cm 200mG以上 200mG以上 200mG以上 200mG以上 119mG 148mG
10cm 200mG以上 70mG 190mG 176mG 60mG 13.6mG
20cm   27.1mG 7.6mG 2.2 mG
30cm 69.3mG 0.4 mG 0.8mG 0.2 mG
機種 J-PHONE (J-SHO 2)
距離 かかってきた時 かけた時 話し中
0 cm 200mG以上 200mG以上 200mG以上
2 cm 179mG 200mG以上 200mG以上
5 cm 58.6mG 167mG
10cm 22mG 35mG
20cm 6.4mG 3.0mG
<B> 親子電話の子機
機種 Panasonic VE-L10子機 SONY SPP-C7子機
距離 かかってきた時  話し中 かかってきた時 話し中
0 cm 115mG 22.4mG 9.0mG 5.5mG
2 cm 76.7mG 7.3 mG 4.5mG 1.8mG
5 cm 16.4mG 4.3 mG 1.3mG 0.5mG
10cm 5.9 mG 3.7 mG 0.3mG 0.3mG
<C> テレビ
Panasonic
TH-21 Z3
Panasonic
TH-21 EV15
Panasonic
TH-14Z 3
0 cm 16.3mG 19.4mG 36.8mG
5 cm 11.1mG 13.5mG 23.5mG
10cm 7.3mG 9.5mG 15.2mG
20cm 3.9mG 5.3mG 7.7mG
30cm 2.1mG 3.3mG 3.6mG
50cm 0.4mG 1.1mG 1.5mG
100cm 0.1〜0.2mG 0.1mG 0.2mG
<D> 電子レンジ
日立
MRO-A80(990W)
SHARP
RE-6200(1600W)
0 cm 38.9mG 86mG
5 cm 10.4mG 60mG
10cm 5.6mG 45mG
20cm 3.7mG 26mG
30cm 12.9mG
<E> ドライヤー
<F> 電気毛布・電子カーペット
電子カーペット
MICON MKP-1140KD
電子カーペット
KORONA DC-204
0 cm 200mG以上 177mG
2 cm 136mG 55.3mG
4 cm 78 mG 12.9mG
6 cm 51.2mG
8 cm 40.6mG 11.3mG
10cm 35.8mG 9.6mG
<G> 他のパソコンディスプレイ
ブラウン管式 液晶パソコン
FUJITSU
17inch
SONY
17inch
SONY PCG-868
13.3型TFT
0 cm 8.2mG 8.0mG 1.0mG
5 cm 5.2mG 4.8mG 0.6mG
10cm 3.3mG 3.5mG 05mG
15cm 2.3mG 2.2mG 0.3mG
20cm 1.4mG 1.5mG 0.3mG
30cm 1.0mG 0.9mG 0.1mG
<考 察>
今回のコンピュータルームの調査からは機器から1m程離れた地点ではすべて0から0.1mGという結果になり問題なしと考えられた。パソコンの前に座った状態で身体に受ける電磁波は0.3〜0.6で、キーボード上では2.1〜3.9mG(機種で差がでる)という結果で長時間利用するのであれば扱うのが子供と言うことを考えればOAエプロン等電磁波防御の方法を考えるのが望ましいと思われる。また、予算等が可能であればブラウン管型式とは電磁波の値が1桁近く違う液晶型パソコン(液晶ディスプレイ)への移行がより望ましいと考える。
今回の調査で一番驚いたのはデジタル式携帯電話の測定値で、5cm離しても200mGを越え10cmでも200mGを越える場合があった。頭部に接触させての使用が一般的であり若年層の使用が多いことを考えて早急な対策が必要なのではないだろうか?
電気毛布、電子カーペットは6cm離れたところでも50mGあるものがあった。電気毛布などは寝る前に暖めておき寝るときには切って寝るようにするとよいと思われる。
<おわりに>
 各小中学校にパソコンが導入されネットワーク環境が整備されるとともに、パソコン・携帯電話の個人への普及はとどまるところを知らない状態です。そんな時、「電磁波の問題はどうなっているのか?」という質問を受けました。少し前に問題にされた光過敏性てんかんなども含めて対策がとられているのかどうかといった疑問から今回簡単な調査をしてみました。
 この結果から一番強く思ったことは、携帯電話は危ないかもしれないと言うことです。アナログからデジタルの変化に伴ってかなり出力が強くなったようですし、さらにまだ調査していませんがcdmaOneや来年ぐらいにでてくるWcdmaなどはよほど電磁波対策を施していただかないと使用するのを考える必要がでてくるかもしれません。日本のメーカーは一般に安全対策は後回しにしがちな面がありますのでWcdmaなど世界標準の規格でヨーロッパのメーカーが出す製品の対策を見たいものです。(日本のメーカーでこうした対策に積極的なところがあるかもしれません。もしありましたらご連絡ください。利用させていただきます。) とりあえずは、ハンズフリーのイヤホンマイクを出来るだけ利用することにしました。
 パソコンについては、これからは液晶ディスプレイ付きパソコンに切り替えていくべきではと思います。パソコンは使い始めると長時間利用することが多いと思いますので根本的に電磁波の発生が少ない液晶型がおすすめのようです。

 最後に、電磁波による健康被害はまだ完全には証明されてはいません。が、その性質上、害を及ぼす可能性は非常に高いと考えられます。欧米では電磁波対策が講じられていない製品の販売はできないなどという話を聞くと日本でもそうあってほしいと思わずにはおれません。日本のメーカーのみなさんよろしくお願いします!!