(生活科学センター)


ホルムアルデヒド・揮発性有機化合物の実際の測定方法については、「学校環境衛生の基準」において検査は、普通教室、音楽室、図工質、コンピュータ教室、体育館等必要と認める教室において、原則として次の方法によっておこなうとされている。
A)
  
採取は、授業を行う時間帯に行い、当該教室で授業が行われている場合は通常の授業時と同様の状態で、当該教室に児童生徒がいない場合は窓等を閉めた状態で、机上の高さで行う
B) 採取時間は吸引方式では30分間2回以上、拡散方式では8時間以上とする。
C)
 
 
測定は、厚生労働省が室内空気中化学物質の濃度を測定するための標準的方法として示した、次の、(ア)、(イ)によって行う。または(ア)及び(イ)と相関の高い方法によって行うこともできる
(ア)
 
ホルムアルデヒドは、ジニトロフェニルヒドラジン誘導体固相吸着/溶媒抽出法によって採取し、高速液体クロマトグラフ法によって行う。
(イ)
 
揮発性有機化合物は、固相吸着/溶媒抽出法、固相吸着/加熱脱着法、容器採取法の3種の方法のいずれかを用いて採取し、ガスクロマトグラフィー−質量分析法によって行う。
 ここで、文部科学省より平成13年12月21日付けの事務連絡中で「学校における室内空気中化学物質に関する実態調査の結果」が示されるとともに、この中の検査方法の検討においてパッシブサンプリング法が標準法と概ね相関しているとされたことからも、機器分析法で紹介したパッシブサンプリング法(拡散方式)が簡便なこともあり、実際、学校の教室で測定するのに適していると思われます。

測定時間については、8時間〜24時間放置して採取する。
季節としては夏期、7月〜9月が望ましい。
机上の高さということで、夏休み等(平日、職員は出校)、学校が休みであれば教室中央机上で三脚等を用いることにより測定可能です。それ以外、平日授業がある時においては児童生徒がさわったりしないように担任の机の上に置くか、つり下げる方法(大抵の普通教室では、ビデオ機器が担任の机の上方におかれている場合が多いと思われ  、これに引っかけてつるすとよい)が良いと思われます。

 測定時間についてはパッシブサンプリング法が、揮発性有機化合物濃度が高いと思われる作業環境での簡易調査を目的に開発された手法であること、また、学校・一般住宅といった比較的低濃度が予想される場所においては8時間では感度がとれない場合が発生するおそれもあるため24時間放置による測定が望ましいと思われます。このため今回は24時間での測定としたいと考えます。(新築・改装等の場合は高濃度が予想されるため8時間でも問題ないと思われます。
一般の住宅における検査では、24時間放置で行われています)


 なお、検査事項については「学校環境衛生の基準」でホルムアルデヒド(夏期が望ましい)及びトルエンについて行い、特に必要と認める場合は、キシレン及びパラジクロロベンゼンについても行うこととされたため今回はホルムアルデヒドとトルエンについて考えることとします。ただ、キシレン及びパラジクロロベンゼンはトルエンと同様、パッシブチューブで同時に測定できます。GC−MSでの測定時に標準ガスが別途必要となるため検査料が高くなるだけです。
 
<判定基準>
(1) ホルムアルデヒドは、100μg/m (0.08ppm)以下であること
(2) トルエンは、260μg/m (0.07ppm)以下であること
(3) キシレンは870μg/m (0.20ppm)以下であること
(4) パラジクロロベンゼンは、240μg/m (0.04ppm)以下であること

実際の測定方法(生活科学センター)

<用意するもの>
 
DSD-DNPHサンプラー(ホルムアルデヒド用)    センターで用意
  Lapelクリップ
パッシブガスチューブ(トルエン用
 パッシブガスチューブ用ホルダー
ミニ三脚(理科室にある三脚、スタンドの使用も可能) 自分で用意
クーラーボックス(冷所保存のため)
(吊す場合はタコ糸等を用意する)

<測定時間等>
24時間測定の時の例 ・・・ PM 2:00 〜 PM 2:00(翌日)
   ※  夏休み等であれば児童生徒を気にせず閉め切った状態で測定可能と思われる。




<測定方法>
@ アルミ製保存袋中のDSD−DNPHサンプラー(右上)とパッシブガスチューブ(右下)
DND−DNPHサンプラー、パッシブチューブをクーラーボックスに入れ、現場まで運ぶ。

A DSD−DNPHサンプラーのセット方法
1.DSD−DNPHサンプラーをアルミ製保存袋より取り出す。
2.測定場所において暴露開始時に充填剤(黄色い粉)の入っているDND−DNPHサンプラーを保存容器から
  取り出し、拡散フィルター部を下にしてDNPH含浸シリカ(黄色い粉)を拡散フィルター内(白い部分)に移行さ
  せる。 (白い部分は手をふれない)
3.Lapelクリップをサンプラーのキャップ部分に取り付ける。
 

B パッシブガスチューブのセット方法
1.パッシブチューブをアルミ製保存袋より取り出す。
2.指でチューブの両端を持つ。(リングより内側を手で触れないようにする)
3.アルミニウムリングを指で押してホルダーに取り付ける。

C DSD−DNPHサンプラーとパッシブガスチューブのセット方法
三脚等にセットする場合 糸等で吊す場合

D 机上の三脚へのセット
サンプラーはほぼ垂直になるようにする(チューブは特になし)

E 教室内での測定
三脚等を利用して中央
机上にて測定
テレビやスクリーン等を
利用して机上の高さま
で吊して測定

F ビデオ機器取り付け台座よりつり下げた例

G 以上の状態で8〜24時間暴露する。
H 暴露終了後、DND−DNPHサンプラーはクリップをはずして保存用容器に入れ、さらにアルミ製保存袋で密封保存。
パッシブガスチューブもアルミ製保存袋に入れ密封保存。
I クーラーボックスに入れ持ち帰る。(冷所保存
J 学校名・測定日時等を記入の上、センターにクール宅急便等で送る。


パッシブサンプリング法における室温の影響

 パッシブサンプリング法は拡散原理を利用した簡易測定法であるため一般に温度の影響を受けやすく、注意が必要です。つまり地域・季節・時間によって室温に大きな差を生じることで条件によってはホルムアルデヒドのパッシブ捕集量が異なる可能性が考えられます。
 実際、国立公衆衛生院建築衛生学部の全国の住宅を対象とした実態調査で、10℃から30℃の温度範囲で約0.02μgの捕集量の差がみられ、温度による拡散係数への影響により10℃と30℃では20℃に比べて約6%前後の捕集量偏差が見られたことから、パッシブサンプリング法によるホルムアルデヒドのサンプリングを行う場合、10〜30℃の室温範囲では約6%の定量誤差が、0〜40℃では約11%の定量誤差が生じるとされ、このことから、VOCとカルボニル物質のパッシブサンプリング法による定量評価では物質により差はあるものの、室温による影響で約10%の誤差が生じることが確認されたと発表されています。