【責任ある地位を得るには】

ビジネス社会で頻繁に聞かれる不平には、若手の幹部が洩らす「会社は自分に十分責任ある仕事を与えない。自分の腕を見せるチャンスを一度もくれない」という理由があります。

もっと年をとった人でも、さらに重要な地位につきたいと思って焦っている人は、同じようなことを違った文句で言っております。誰か他の人が仕事の指揮をとることに執着しているとか、手綱を離さないとか、といって不平を鳴らしがちです。

大抵の場合、この様な言いぐさは事実と相反します。責任ある地位は、非常に獲得しやすいものです。しかし、……このようなことを言う人のよう に……、自分が大きい責任を背負い込む前に、大きな事務所に移り、新しい肩書きを貰い、給料が増額する事を期待していることであれば、自分は、それを得るのに チャンスだけに頼っていることになります。

事務所の他の人を見てみると大抵の人は、他の誰かが、責任をとることを無意識的に待っています。十人のうち九人迄が、しかも、幹部の中でさえ、誰か他 の人が決定し、難しい問題を肩代わりしてくれることを願っているのです。そのような人でも、仕事が成功裡に終われば、その功績を自分のものにしたがるのです。しかし、真に頼りになる人は、長い間不遇裡に過ごすことはありません。経済学の原理にいわゆる「賃金ラッグ」があります。普通この意味するところは、イン フレで商品の価格が騰貴する際に、労働者の賃金の増加はいつも遅れるということなのである。

この原理は理論経済学上のものであって、普通、個人の昇給の場合に当てはまりません。しかし、これは今取り上げている主題「地位を得るには」にぴったりするものです。業績をあげる前に、昇給を望むのは、自然の順序に反するということです。

指導者の仕事である責任の背負い込みには尻ごみしながらも、大きな地位を欲しがるという長年の習慣をひっくり返し、先ず、大きな仕事を果たす機会を逃さないようにすることです。そうすれば、自らを昇給昇進させたことにより、ついには認められることになります。

しかしながら、この原則には、二つの「禁句」があります。
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