電池の直列接続・並列接続

 前回までに電球やシャープペンシルの芯には電流が流れようとするのを妨げる働きがあり、電池には電流を流そうとする働きがあることを見てきました。また、電球やシャープペンシルの芯の電流を妨げる働きはこれらを直列に接続すると強く(電流が流れにくく)なり、並列に接続すると弱く(電流が流れやすく)なることも確かめてきました。

 では、電池を直列に接続したり並列に接続したりしたりするとどうなるのでしょう?今回は、これを確かめてみることにします。


 実はこれまでの実験ではすでに電池を2本以上直列接続した状態で実験を進めてきました。これまでに出てきた写真でも電池はすべて2本以上直列接続されています。これは、電池ケースが電池をセットすると2本の電池が勝手に直列接続されるようになっていたのでそのままにしていただけのことで、深い意味は無かったのですが、今回はがんばって接続して電池1本と2本、あるいはそれ以上の状態を比較することにします。

 では、早速電池1本を電球に接続した場合と、電池2本を直列接続したものを電球に接続した場合、さらに、電池3本、4本と直列接続した場合を比較してみることにしましょう。それぞれの接続は次のようになります。

   

 おのおのの場合の電球の様子は次のようになります。(写真では分かりにくいですが、電池ケースに電池を1本しか入れないことで電池1本を実現しています。電池ケースには2本の電池を入れられるので、よくよく写真を見ないと違いが分からないのです。)

   

 次に、2本の電池を直列接続にしたものを、2つ並列に接続した場合も実験してみましょう。電池は4本使っていますが、つなぎ方が次のようになっているのです。

 

 このようにつなぐと、電池2本を直列接続した場合と同じ明るさになるようです。

 整理すると、次のようになるでしょう。

電池1本直列 電池2本直列 電池3本直列 電池4本直列 電池2本直列を2つ並列
最も暗い 3番目に明るい 2番目に明るい 最も明るい 電池2本直列と同じ

 前の章までに確かめたように、電球には電流が流れるのを妨げようという働きがあります。電池は逆に電流を流そうという働きがあります。この実験結果は、2本または、それ以上の電池を直列に接続すると電流を流そうという働きも2倍などと強くなり、片や電球の電流が流れるのを妨げようという働きは変化しないので、結局多くの電流が流れてより電球が明るく輝くということを示しています。電池を直列に接続すると、電流を流そうという働きが直列接続した電池の数だけ強くなるということを覚えておいてください。

 では、電池をどんどんとたくさん直列接続していくと、電球はどんどん明るく輝くのでしょうか?ある程度までは明るくなっていくのですが、やがて電球に電流が流れすぎると耐えられなくなって切れてしまいます。例えば、照明に使う100Wの電球などはやはりそれなりに丈夫にできているので家庭の電源(コンセント)に接続しても大丈夫で明るく輝くのですが、もし、私たちの実験で使用している程度の電球をここに接続したりしたら一瞬で切れてしまうはずです。(危険なので決して行わないでください。)

 さて、直列接続は分かったのですが、問題は並列接続です。電球の明るさは、電池ケース1つのときも、電池ケース2つを並列接続したときもまったく同じように見えます。電池を並列接続しても意味が無いのでしょうか?これは、しばらく時間を経過すると分かってきます。次に、電池ケース2つを並列接続したときと、電池ケース1つだけのときそれぞれに電球を接続して点燈させ、2時間後の様子を撮影したものです。

 

 電池ケース2つを並列接続したほうは2時間たってもまだ電球が点燈していますが、電池ケース1つの方は電池が切れて消燈してしまいました。実は、並列接続しても電池の電流を流そうとする働き(電圧)は変わらないので電球には並列接続しない場合と同じだけの電流しか流れない(従って明るさは変わらない)のですが、このとき、おのおのの電池は電流を半分ずつ流せばよいので電池の減りも半分になるのです。つまり、電球に流す電流を並列接続した電池で分担して流すので1つ1つの電池にとっては仕事量が減るというわけです。2つを並列接続すると2倍の時間電池が保ちますし、3つを並列接続すると3倍になります。

 例えば、強力な光が必要な懐中電灯なら多くの電池を直列接続して使えば電球が明るく輝きますし、暗くても良いので長時間点燈させたいランタンのような場合は、多くの電池を並列接続すればよいわけです。

 次回からは、電気を通したり通さなかったりする部品−スイッチ−について見ていくことにしましょう。


 さて、いつものようにKamiSimを用いて上記の実験をしましょう。今回は、電池を1.5Vに、電球を6V4Wに設定して下さい。あとは、いつもの通り、部品を接続するだけです。ただ、電池の寿命の実験だけはKamiSimではできません。KamiSimの電源は「電池が切れる」という状況を想定していませんので、いわば無限の寿命をもつ理想の電池です。現実の電池は上で確かめたように、使うと必ず電気がなくなってしまい使えなくなります。

   

 6V2Wの電球を1.5Vの電池1本でシミュレーションすると、電球が点燈しないかのようなシミュレーション結果になってしまっていますね。確かに、実際に実験しても点燈しているかどうか微妙な程度でしたから、納得といえば納得の結果といえます。並列接続の場合もシミュレーションしておきましょう。(※注意: KamiSimの不具合といえば不具合なのですが、電池を並列接続する際にはごくごく小さな抵抗を電池に直列接続しなければ解析エラーが発生してしまいます。下の様に抵抗を挿入してください。この問題には、将来のバージョンアップで対応いたします。)

 確かに、このように2本の電池を直列に接続した物を並列に2つ接続すると、単に2本の電池を直列に接続した場合と同じ明るさで電球が点燈するようです。電池の寿命は...KamiSimでは調べられませんが、2倍になると思ってください。


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