あの人とこんな話


BIG BLUE代表   松元 恵 さん


 海から誕生した私たちはそこに入るだけで満ち足りる。

日本のフリーダイビングのパイオニアであり、その深い魅力を伝えるために独自な「海とのふれあい方」を追求している人である。フリーダイビング(スキンダイビング)とは、空気タンクなどの器具を用いない素潜りだという。

 松元さんがそのすばらしさに目覚めたのは故ジャックマイヨールとの出会いからだった。

 「自然への思いがあれほど強い人は他にいないと今でも感じます。彼は人間が自然を破壊することに怒りを持ち続けていたし、時には自分自身が人間であることさえ受け入れ難そうでしたから(笑い)。そしてそのジャックマイヨールから、私は海に潜ることの意味を教えられた。それは自分も自然界の生き物だと体中で歓びとして感じることだったのです」


 海に抱かれる、海と遊ぶ、潜っていく。リラックスして海に自分を預けると、孤独感も焦りも静かに去っていって、優しく満ち足りた思いが体中にあふれてくるというのだ。年齢も何も関係なく。

 「ジャックと一緒に30mまで初めて潜り浮上してくる時に、私は経験したことのない充足感に驚き、すっかりボーッとしていました。陸に上がり時間がたっても、その満たされた感覚が消えない。自然界は家族だと確信しましたね」


 イルカやクジラと泳ぐ幸せも同じだという。私は一人じゃないとはっきりと感じるそうである。

 フリーダイビングの競技では、松元さんは女子日本記録を持っている。その記録はさらに更新されていくだろう。競技の面白さ、可能性への探求心は衰えていない。

 「もうひとりの自分を連れて潜っていく感じですね。大丈夫、大丈夫と自分に語りかけながら集中していく。なぜ苦しいのに潜るのかと問われれば、究極の探求心としか言えないのですが、やはり自分の内面と向き合えるからでしょうか」


 小さい頃から、孤独感にさいなまれ、自分に自身を持てないトラウマを抱えていたのだと松元さんは正直だ。誰にでも何らかの悩みはあるけれど、海は手を差し伸べてくれる、と。取材スタッフはみな海に入りたいと水かきのポーズをしながら帰路についたのだった。




まつもと・めぐみ


 鹿児島県生まれ。1982年スクーバダイビング指導団体NAUIインストラクター取得、89年”フリーダイビングの神様”と言われる故ジャックマイヨール氏と出会い、トレーニングパートナーとして親交を深めフリーダイビングの世界へ。98年イタリアのサルデーニャ島での「第2回フリーダイビング・ワールドカップ」に日本代表として初出場後、フランス、スペインなどで開催された大会に出場。92年マリンショップ「BIG BLUE」オープン。日本におけるフリーダイビングのパイオニアとして普及・研究にあたる。2006年現在、コンスタント60mの実績。


ホームページ BIG BLUE サイトhttp://www.bigblue-ds.jp/
朝日新聞より


なぜか彼女の名は知っていた

ナウイの指導員合格発表で雑誌に載っていたのである。

ずいぶんきれいな子が指導員になったなあ ってな事思ってました。