秘宝館に出仕することにしました。 これは一時間ゲームを基にしたサンプルSSです。 状況、キャラ調査1時間、 執筆に2時間半程度かかっています。 元ログ: http://ninjagames.at.webry.info/200802/article_1.html _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ 宰相府藩国。 春の園といわれる公園区画では、戦闘が始まっていた。 夜闇に映える花々も、今は戦火に彩られている。 いや。 花々に映えるものがもうひとつ。 そびえる巨体。 ぬばたまにひかる女性形のRB−−−太陽号だ。 暗い夜空にも光るその黒い機体は、 戦いを憂いているようにも、 出番を得て嬉しがっているようにも、見えた。  一方、機体を遠間に眺めつつ走る影が3つ。 一人は黄色いジャンパー、片手に銃、長い睫毛。名前をシーズ・スターという。 続く二人は医師だろうか? ともに手術着のような緑の服に、白衣を重ねている。 ともに首には聴診器を、一人は肩に医療鞄を下げ、 もう一人は手ぶらであった。手ぶらの女はハイヒールだ。 シーズは後続を手招きしつつ春の園へと侵入した。 「分かった」手ぶらの女が答える。 名前を藤崎。 友の危機を救うため、国を越えて医療の力を得た女だ。 「きれいな機体ですね。あれに要救助者が回収されているといいのですが」 もう一人は室賀という男。普段は医療国リワマヒの指揮を執っていた。今は太陽号を目にしながら、油断なく辺りをうかがっている。 「それはないな。多分、戦闘だろう」シーズは言う。 太陽号はロングスカートに七つの武器を収めた、戦闘用RBだった。 「私たちの相手(治療対象)が増えるのは悲しいことです」 室賀がそういうと、藤崎も答えた。 「ですね。リワマヒ王のおっしゃるとおりです」 歩みを止め、シーズは言った。 どうにか味方と合流して治療したいと。 「連絡取る方法はないか?」 室賀は鞄から干し草と水薬を取り出しながら言った。 「私たちは高位南国人の治療師であり、医師です。 虫を燻し出す薬がありますから、そいつで煙をたたせるというのはどうでしょう」 「なるほど」藤崎も同意する。 「ちょっとくさいですけどね。人が居るのはわかるでしょう」 「それでいくか」 シーズは同意した。その笑顔は意外にやさしい。 室賀は火を焚き草を燃すと、水薬をかけた。 藤崎は風向きを見ている。 煙は暗い上空に頼りなく上がっていった。 室賀が一人火を焚く間も、藤崎とシーズは周囲警戒を怠らない。 「戦闘が起きてるな。2箇所」 シーズは藤崎にささやく。 太陽号から行けば・・・と言いかけた所でシーズは空を見上げ、つぶやいた。 「こりゃたまらんな」 「見ろ」 言われて藤崎が見ると、空からは音もなく青い光が、星粒のように瞬きながらひとひら ふたひらと降っていた。 それは青い青い、雪のようだった。 「これは・・・・・・・・・・・・・あの雪・・?」 「俺も動作停止しそうだな」シーズは言う。 藤崎はこの光にさらされて石のように動作を止める、ACEと呼ばれるキャラクターたちのことを思い出す。 藤崎は火を焚く室賀に声をかける。 「リワマヒ王、お疲れ様です。雪が、青い雪がこんなトコまで」 藤崎は吏族の者として藩王という立場に気を使っていた。 「それは危険な予感がしますね。 逆に言えば、そこでACEキャラクターが倒れていれば、治す手立てがなくなりかねません」 藤崎は二人に尋ねた。 「急いで治療して、ここから移動したほうがよいでしょうか」 「そうだな」 「そうしましょう。 要救助者が居ないか確認しなければ」 煙に気づいてサインを送っているかもしれない。 周囲を見回す藤崎。 そのとき三人の耳に響く声があった。 「了解。2箇所で戦闘中  日向、消息不明、ケント戦闘中 敵はセプテントリオン」 アイドレス界に名をはせる青にして正義、S43の声だった。 絶技メッセージという。 室賀は太陽号に近い位置を提示する。 シーズは太陽号までのおおよその位置を伝えた。 「ドンパチへ向かってる」 室賀は言う。 「そこに要救助者が居るのなら行きましょう」 藤崎はうなずく。 シーズは答えない。 シーズをうかがう藤崎。 「もう少しまてないか」付け加える。 「この煙向けて、味方がくるかも」 「気づいていればいいんですが」やや懐疑的な室賀。 藤崎は受けて答えた。 「もう少しだけ待ってみて、それで駄目なら移動しましょうか」 シーズは言う。 「どうせ、戦闘に巻き込まれてもやることは少ない」 言葉に詰まる二人。 二人にはI=D、機動兵器主体の戦場について少なからず苦い覚えがあった。 「……たしかに、I=D戦闘に医師が混じっても意味はないですね」 「この煙を信じよう。もう少し」 うなずく二人。 「はい。せっかくリワマヒ王が匂いをガマンして炊いてくださったんですし」 藤崎は少し笑った。 やがて戦火の中から一機のI=Dが現れる。 夜闇に光る単眼に巨大な盾。 帝国の量産型I=Dケントだ。 目の前に着地した。 室賀、藤崎が手を振る。 ケントの腕には若い男が二人抱えられていた。 一人は浅黒い肌に、藤崎と同じような格好をしている。 竹内と、トラオ・テンダーブルーだ! 「藤崎さん、出番です!」室賀が声をかける。 「治療対象は二名だけですね」そう確認した藤崎は白衣の袖をまくると腕を輝かせ始めた。 光が拳に集い始める。 では治療します、といいながらちらりとシーズを見る藤崎。 一瞬、躊躇する。 顔が紅潮しているよう見えたのは光のせいか。 『死なれるほうがたまりません。  嫌われても死なれるよりずっといい』 そうつぶやくと、藤崎は震える拳に力を込めて二人を殴る、殴る! 竹内の顔に血色が戻る。 が、トラオの瞳には光が戻らない……! 「今は患者を助けることだけを考えましょう」室賀が励ます。 「はい。ありがとうございます。落ち着けました」 藤崎はそう礼を言うと、再び光を腕に集める。 治療師の一撃! しかしトラオの容態は変わらない。 藤崎の顔色が引く。 「大丈夫、藤崎さん、あなたならできる」 室賀兼一は藤崎の汗を拭き、励ます。 再び藤崎の光る拳がひらめく。 拳の光がトラオの目に灯ったような気がした。 ふたたび鼓動をはじめるトラオの心臓。 ほっとする一同。 しかし間の悪いことに三人目の要救助者が運ばれる。 名前は田島。 藤崎は両手を輝かせながら 「もう一人、全力で」 拳をたたきつける。 田島は一瞬全身をびくつかせ、そして 再び息をし始めた。 こうして藤崎の冒険は成功に終わった。