| ごとく （とくひめ） |
| 生没年 | １５５９〜１６３６ | 信長の長女 |
| 幼名・別名・官職 | 五徳、徳姫、尾張御新造、岡崎殿 | 生母 | 生駒家宗の娘（吉乃） |
| 徳川家康の嫡男信康に嫁ぐ。 このころ家康は居城を浜松へ移していたが、正室築山殿とその子信康は岡崎城に残している。 築山殿は家康が今川義元の人質であった頃迎えられた妻で今川の一族の娘であった。 今川家は桶狭間の戦いで義元が討死してから急速に破滅の一途をたどる。 それ以降、家康は今川から離反し織田と同盟を結んだことは皆さんもご存じの事だと思う。 主筋であり正室の実家筋でもある今川家を見限ったうえ、さらに宿敵である織田信長と急接近した家康に 対して築山殿はおもしろうはずない。 さらにその宿敵信長の娘が息子の嫁として嫁いできたのである。 築山殿が徳姫を暖かく迎えてくれるはずもない。 単に感情的に嫁姑のいがみ合いではすまされぬ程、憎しみの情があったのであろう。 天正七年（一五七九）徳姫は父・信長に対して、夫・信康を讒訴する１２ヶ条の訴状を送る。 それにより、信康は切腹せねばならなくなった。 なぜ、このような事が起きてしまったのであろうか。 いかに嫁姑の中が悪かろうと夫をみすみす死に追いやる妻が居るであろうか。 徳姫はまさか父・信長が夫・信康の切腹を命じるとまでは考えていなかったのであろう。 築山殿は徳川家にとって屈辱の時代であった頃の今川家の象徴でもあり、 今は敵となり没落していった今川家の遺物でもある。 家康自身が既に築山殿は遠ざけていたものと思える。 だが、そんな築山殿も信康にとっては実の母である。 徳川家から、またかばうべき夫である家康から疎んじられた母を不憫におもうことは、 信康にとっても当然の感情であったのであろう。 只でさえしっくりといかぬ嫁姑の二人である。 たとえ威勢をほこる信長の娘を本当に愛していたとしても、いざ嫁姑があらそうと不憫な母を かばってしまうことがある事も想像できよう。 事実そうであったのかもしれない。 当然、徳姫はおもしろくない。 妻をあしらい母ばかりをかばう夫を父からこらしめてもらおう。 父・信長から叱ってもらえば、信康も震え上がり少しは自分の気を惹くようになるであろう。 そんな思いで訴状を書いたのかもしれない。 だが信長と家康の出した答えは徳姫の意思とは違う思惑が働いていた。 信康の死後、父信長のもとへ戻る。 尾張岩倉で三千石の扶持をあたえられる。 その後の事はよくわからない。 彼女が自分の行った行為をどう思い、それによって招いた結果をどう考えてたのか。 切腹を命じた信長、それを受けた家康に対する感情。 それらはみな想像のうえでしか知るよしがない。 晩年は京都ですごし岡崎殿と呼ばれていたという。 寛永一三年正月、７８歳で没する。 |
| 末裔 | 信康との間に二女あり。 福姫は家康の養女となり小笠原秀政に、国姫は本多忠政にそれぞれ嫁いでいる。 |