ローコスト・モデルにもトレモロ・ユニットの必要性を認識したフェンダーでは,
'67年に新たなローコスト・モデルとして“ブロンコ”を発表した。
ブロンコは,すでに発売されていたローコスト・モデルのミュージック・マスター
(正式には'64年にミュージックマスターUにモデル名変更)と同じく,
1ピックアップ仕様であったが,ミュージック・マスターではフロント側なのに対して
ブロンコではリア側にピックアップがマウントされている。
ブロンコの最大の特徴は,このモデルのために新たに開発されたトレモロ・ユニットであろう。
それは,トレモロ・スプリングの配置などが異なるものの,ストラトのシンクロナイズド・トレモロを発展させたものと言え,
シンクロナイズドと同様に,ブリッジ・プレート前方のスタッドを支点としてプレート全体が可動する方式であった。
シンクロナイズでは単なる6本のネジが支点になっていたが,
ブロンコのトレモロ・ユニットではプレートを受ける部分が溝状に加工された2本のスタッドを支点として動作するようになっている。
近年こそ,2本のスタッドを持ったシンクロナイズド・タイプのトレモロ・ユニットも珍しくないが,
'67年という時期に,すでにこうした構造が考案されていたことは驚異的だ。
'75年までのブロンコは,この'72年モデルのようなレッド・フィニッシュ(フィエスタ・レッドに近い色)ボディのみの設定であった。
“ブロンコ・アンプ(バイブロ・チャンプと同仕様)”とのセットで精力的に販売されたようだ。
ピックガードは白3プライ・タイプで,当初は12本のネジでボディに固定されていたが,すぐに15本止めに変更されている。
またコントロール・ノブは,この'72年モデルのように,
当初はフェンダー・エフェクターにも使用された下部が金属製のソンブレロ型だったが,
'74年頃にはジャズ・ベースと共通パーツの7角形タイプに変更されている。
'75年後期にはボディ・カラーがブラックとホワイトの2色に設定されたのと同時に,
コントロール・ノブがテレキャスター・カスタムと共通(ソンブレロ・タイプ)となった。
'77年からはピックガードが黒3プライ・タイプに,コントロール・ノブがストラトと共通の黒いタイプに変更されている。
そして,'80年に製造中止。
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