・無農薬でも野菜は作れる・

以前、農家を営む叔父に5坪の畑を借りて野菜を作り始めたと話した。無農薬有
機栽培でやっていることに話題が及ぶと叔父の表情が変わった。無農薬で野菜が
作れるわけがないと言うのだ。「まあ、家庭菜園だから」とお茶を濁すつもりで
言ってみたが、叔父は「農薬なしではまともに食べられる野菜はできない」と断
言した。
それから数年たち畑も15坪と拡張(大袈裟ですね)できたので、たくさん採れ
た野菜を近所の知人や親戚に食べてもらうまでになった。収穫したての野菜を実
家に届けた際に、叔父と出くわした。大根、人参、コマツナ、タマネギetc.それ
らを見て「頑張っているな」と声をかけてくれた。お百姓さんの大先輩である叔
父にそう言われるのは照れくさいし正直に言えば嬉しかった。無農薬有機栽培で
あることをことさらに言わなかったのは、叔父の一言から「少しはわかってもら
えた」と感じたからだ。
農薬が体に悪いと最初に気づいたのは農家である。しかし、その影響を自分たち
の体で実感するまでには長い年月がかかりすぎた。野菜を見栄えよく提供できる
魔法の薬、厳しい野菜作りが楽になる万能薬。これらを使わない手はない。今の
時代に誰が洗濯板と石鹸で洗濯をしているだろう。センサー付きの全自動洗濯機
と合成洗剤、漂白剤にソフト仕上げ剤。快適便利を追求して何が悪い。これと同
じことだったのではないか?ましてや野菜作りが生業となればなおのことだ。
ただし、気づいてみれば体調が優れない、何が原因か?もしかしたら、農薬では
ないだろうか?そして今では農家は自分のところで食べる野菜には少量の消毒
(農薬散布)しかしない。売り物とは別待遇の少しでも安全な野菜を口にしてい
ると聞いた。家庭菜園でも農薬を使う人は大勢いる。農家と違って狭い面積に濃
度を的確に調整もせずに、散布の時期もいい加減に使うのでこちらの方が危険で
あるという。(無農薬・有機肥料をたっぷり入れて作った野菜をお薦めしたい)
かなり前に叔父は筑波に山を買いそれを未だに放置してあると聞いたので、冗談
混じりに「三郷から筑波まで常磐新線が開通したら山を耕しに行ってもいいです
か?」と聞いたところ「ああ、いいよ好きなだけ耕しなさい。しかし、お前も物
好きな奴だなぁ」と笑われた。叔父は70歳を過ぎただろう。そして常磐新線の
開通は6年後の2004年だという。叔父はあのときの口約束を覚えてくれてい
るだろうかと、ふと思った。(1998.6.4)

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