BRUFORD
THE BRUFORD TAPES

曲目

  1. hells bells
  2. sample and hold
  3. fainting in coils
  4. travels with myself - and someone else
  5. beelzebub
  6. the sahara of snow (part one)
  7. the sahara of snow (part two)
  8. one of a kind (part two)
  9. 5g

演奏者

寸評

2枚目の紹介はいきなり範囲外の作品です。しかし、この作品の主人公のビル・ブラッフォードは範囲内の重要人物名ので紹介しない訳にはいきません。

ということで、このアルバムはビル・ブラッフォードのリーダーバンド、ブラッフォードの唯一のライブアルバムです。私の手持ちの盤(ヴァージン・ジャパン盤CD)のライナーノーツによるとこのアルバムの音源はカナダのラジオ用の音源らしく(アルバムのバックカバーのクレジットにもその旨書いてあるので多分本当のことでしょう)、このアルバムが発表された1980年にはカナダと日本の限定リリース作品だったそうです(現在はワールドワイドで発売されています)。だから正式なオリジナルアルバムにカウントするのは憚られるのですが、一応ブラッフォードの2枚目(ビル・ブラッフォードの1stソロをもし1枚目とカウントするなら通算3枚目)ということになります。

1曲目の「ヘルズ・ベルズ」のオープニングのけたたましいシンセの音から最後のジェフ・バーリンがスラッピングベースを弾き続けてフェードアウトして終わる「5G」まで、ハイテンションで疾走し続けるこのアルバムは、ブラッフォードというバンドのライブパフォーマンスの凄さを教えてくれます。と同時に、各人の演奏テクニックに則った即興とアンサンブルのバランスの良さに感心させられます。ただ、オリジナルメンバーだったアラン・ホールズワースの替わりにギターを弾いているジョン・クラークなる人物(私はこの人物を知りません。誰かブラッフォード以外での経歴を知っている人がいたら教えて下さい)は、ある意味アラン・ホールズワース以上に弾きまくって、他の手練れのメンバー達に必死について行っています。とにかく、名ライブが封じ込められた名アルバムであることには間違いないでしょう。

しかしこのバンドは、ある意味カンタベリー系(注)の頂点にあるバンドだと思っています。メンバーの全員がカンタベリーには元々縁も縁もない人たちばかりなのですが、デイヴ・スチュワートはロンドンのシーンの人ながらカンタベリー系には非常に縁があり最重要人物ですし、ビル・ブラッフォードもロンドンのシーンの人ながらカンタベリー系に腰掛けた人です。オリジナルメンバーのアラン・ホールズワースは、カンタベリー出身ではないのですが、70年代中頃はカンタベリー系のバンドばかりを渡り歩いていた経歴の持ち主。ということで、ある意味、カンタベリー系のサウンドが凝縮されているといえば、もしかしたらそういえるのではないかな?というやんわりとした意味合いですけど、頂点だと思っている訳です。カンタベリー系のオリジネイターであるソフト・マシーンやキャラヴァンとは違った地平で育ち育まれたサウンドのいわばコアサウンドだと思っています。このバンドより前にデイヴ・スチュワートが在籍していたハットフィールド・アンド・ザ・ノースで一応の完成を見たといわれている(カンタベリー系流フュージョン)コアミュージック化した、ハードコアフュージョンという言い方が正しいのかどうかはちょっと分からないのですが、そんな音楽で、イエスや、キング・クリムゾンといったいわばイギリスの人気バンドを渡り歩いてきたビル・ブラッフォードと、人気は、ビル・ブラッフォードが在籍していたバンドほどではないにしろ、それなりの人気があったカンタベリー系の人気バンドを渡り歩いてきたデイヴ・スチュワートの二人が、作り上げた世界なのでしょう(U.K.で、ビル・ブラッフォードとアラン・ホールズワースが果たせなかったサウンド(デイヴ・スチュワートはそれを実現するための飛び道具)の発表場所という考え方もあります)。

とにかく、何にしても、このアルバムの持つ刺激的なサウンドは、ジャズロックが好きな人には堪らないでしょう。しかし、妙にフュージョンっぽかったり、ロック色が強かったりするので、その辺が鼻につく人がいるかもしれません。しかし、名うての名人達が複雑で高度な曲をかなり聴きやすく聴かせているので、その部分をじっくりと聴いてみると面白いと思います。そして、ジャズ系のライブアルバムならではの、即興の妙も楽しめるはずです。

(注)カンタベリー系とは、イングランドのロンドンの南になる港町のカンタベリー(イギリス正教の総本山があったり、チョーサーの「カンタベリー物語」で有名です)で60年代中頃活動していたローカルバンドのワイルドフラワーズを母体にしたソフトマシーンとキャラヴァンという二つのバンドを軸に、その関係者及び影響の届く範囲までも巻き込んだイギリスの一つの音楽シーンです。特徴としては、ジャズ、ロック、フォーク、サイケ、スリル、ポップ、それらの美味しい所取りのサウンドですが、ソフト・マシーンに代表されるジャズ味を追求したサウンドと、キャラヴァンに代表される基本はポップだけど目的のためには手段を選ばないサウンドと、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースに代表されるその両者の美味しい所を取った牧歌的なカンタベリー流フュージョンといえるサウンド、に大別されます。


Created: 2002/06/22
Last update: 2003/12/02

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