アルバムジャケット、インナーとも表記無し。
今回紹介するアルバムは、60年代の個性的なビートシーンの中でもひときわ個性を放っていて、現在でもそのカルト的な人気は衰えを見せないゾンビーズの1stアルバムです。
このアルバムは、イギリスではデビュー曲である「シーズ・ノット・ゼア」のスマッシュヒットで終わってしまったゾンビーズがまだ勢いがあった頃に作られたアルバムで、このバンドの魅力が十分に詰まった内容になっています。ビートルズと、モータウンとジャズをこよなく愛した彼等のその愛が伝わるアルバムなのです。
具体的に書くと、ビートルズのビート感にモータウンのコーラス、ジャズのスリル、これらが渾然一体となったサウンドなんです。そこが面白い。ロックが好きな人間でも、ソウルが好きな人間でも、ジャズが好きな人間でもみんなどこかしら注目する要素がある。そんなアルバムなのです。ロッド・アージェントのジャズとクラッシックに裏打ちされた感情表現豊かなキーボードワーク、コリン・ブランストーンのソウルフルな歌いっ振り、クリス・ホワイトのポップセンス、ヒュー・グランディの正確無比なドラミング、ポール・アトキンスの非常にビートニクで軽快なギターワーク、それら全てが有機的に働いているというのが伝わってきます。そこがこのバンドの、このアルバムの聴き所なのです。
それで、このアルバムをジャズロックという色眼鏡で見ていくと、やはり注目は「シーズ・ノット・ゼア」です。この曲は彼等のデビュー曲であり、最高傑作。アメリカではナンバー1ヒットになった曲でもあります。そして、ジャズロックの名曲中の名曲で、この曲をジャズロックと呼ばずしてどんな曲をジャズロックと呼ぶのか?と個人的には思っている曲です。しかし、この曲一筋縄ではいかなく、単純にジャズっぽいロックというだけではありません。全体的な流れはモータウンソウルの流れなのです。つまり、このことからもアメリカではヒットするべくしてヒットしたのですが、ジャズの持つスリルとモータウンソウルの持つ洗練さと、ブリティッシュビートの持つ疾走感の良い所取り曲なのです。
という事で、大半が、ソウル寄りのビートナンバーで占められているためジャズロックの本来的な意味合いからはほど遠いアルバムなのですが、これもブリティッシュジャズロックの一つのカタチと取る事も出来ます。こういったアルバムを聴く事によって、自分のジャズロックを聴く耳を大きくする事が出来る、そんな事に役立つアルバムではないでしょうか。
Created: 2002/08/20
Last update: 2003/12/02
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