THE ZOMBIES
ODESSEY AND ORACLE

前回に引き続きゾンビーズです。今回紹介するアルバムは、1968年にリリースされたゾンビーズの2ndアルバムです。このアルバムの数奇な運命は別項（私のもう一つのサイトの「オデッセイ・アンド・オラクル」のレビュー）で書いていますので、それに興味のある方は参照して下さい。ここではあくまでもこのアルバムの魅力（特にジャズロック的魅力）について書いていきたいと思います。

このアルバムはゾンビーズが実質的に解散した後の発売されたのですが、解散前の不安定な状態で録音されたとは思えないほどのクォリティです。このアルバムの制作をリードしていたロッド・アージェントとクリス・ホワイトの、作り上げたいという意志がクォリティを維持させたのでしょう。そしてそういうところは聴いていてもヒシヒシと伝わってきます。

抽象的な話は以上で切り上げて具体的な話に移ります。このアルバムは実は凄くバラエティに富んでいるアルバムで、ストレートなジャズロックアルバムではありません。制作されたのが1967年という事も合ってか、ビーチ・ボーイズの「ペット・サウンズ」（注1）や、ビートルズの「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」（注2）といったアルバムの影響下にあり、表面的には時代を反映したサウンドのなっているのですが、そこは超個性集団のゾンビーズ、じっくり聴き込むとそれだけではないことが分かってきます。「ビギン・ヒア」以上に様々な要素の音楽が渾然一体となっていて、「ビギン・ヒア」では1曲1曲が違う表情になっていたのが、この「オデッセイ・アンド・オラクル」では1曲の中に色々な要素が内包されています。つまりフュージョンサウンドになっているのです。だから、聴くたびに新しい発見のあるアルバムなのです。

その中でも比較的ジャズロックが出ているのが「ふたりのシーズン」です。この曲はアメリカでナンバー1ヒットとなったゾンビーズ最後のヒット曲で、「シーズ・ノット・ゼア」と共にゾンビーズの代表曲でもあります。またこの曲もジャズロックの名曲中の名曲です。しかし、このバンドはジャズっぽい曲ばかりがヒットしたようです。このあたりにリーダーであるロッド・アージェントの嗜好が見えて面白いと思います。しかし、これはマニアな聴き方なので、さっさと内容の紹介に移ります。この曲の内容ははっきり言うと難しい曲です。しかし全体を貫くポップな感覚と、非常に分かりやすいサビが魅力です。そして感想のロッドのジャジーなオルガンのソロがこの曲の真骨頂です。この曲はキーボードを抜くとただの奇妙なリズムを持ったポップな曲で、そこにキーボードが加わる事によって途端にスリリングなジャズロックになるようです。

他にも、このアルバムの随所にジャズを感じさせる部分があり、やはりこのアルバムもジャズは大きなキーワードの一つなのです。こうやって聴いていく事によって本来もっと大きい、ジャズロックだけで括る事の出来ない大きなアルバムなのですが、実は聴き手の自由に聴けるアルバムであるという事なのです。つまり、ロッド・アージェントのキーボードワークにジャズの薫りを楽しむのもまた格別という事です。

（注1）ビーチ・ボーイズはアメリカを代表するロックバンド。そのビーチボーイズが1966年に発表したアルバムが「ペット・サウンズ」。一応、ビーチ・ボーイズの最高傑作と言うことになっているのですが、メンバーの一人が独断で作り上げたアルバムであるため他のメンバーの存在が希薄で、最高傑作でないという人もいます。

（注2）ビートルズは、イギリスを代表するロックバンド。そのビートルズが1967年に発表したのが「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」。一応、ビートルズの最高傑作ということで、このアルバムの影響は計り知れないようです。