jack bruce with john mclaughlin jon hiseman dick hecstall-smith
things we like

曲目

  1. over the cliff
  2. statues
  3. sam enchanted dick(medley: sam's sack rill's thrills)
  4. born to be blue
  5. hckhh blues
  6. ballad for arthur
  7. things we like

演奏者

アルバムジャケット、インナーとも表記無し。

寸評

今回紹介するアルバムは、ジャック・ブルースのソロアルバムです。ジャック・ブルースといえば、今やエリック・クラプトンのおかげで伝説のバンドなどという戴けない冠をかぶせられてしまったクリーム(注)の元ベーシストとして有名です。その彼が半分ジャズ半分ロックというミュージシャンだということも有名ですが、その彼が若き日にやはり彼と同じく新進気鋭だったジョン・マクラフリンであるとか、ジョン・ハイズマンであるとか、ディック・ヘクトール=スミスであるとかと一緒に行ったセッションをアルバムとして発表したモノがこの「シングズ・ウィー・ライク」です。

録音は1968年の夏でクリーム解散間際ですが、このアルバムは1970年になってから発表されています。直後に録音した彼の1stソロアルバム「ソング・フォー・ア・テイラー」のリリースが先になったため遅れたのだと思います。

さて情報はこれくらいにして実際の内容ですが、全編アコースティックサウンド(ギターはエレクトリックギター)で、純ジャズに聞こえますが、メンバーの全てがブリティッシュジャズロックシーンを作り上げていった猛者達、その構築期の真っ直中に録音されただけあって一筋縄ではいきません。当時流行のフリージャズ的な流れの中に、ディック・ヘクトール=スミスの明るめのサックスが入ってきたりギターがリリカルだったりするモノだから、繊細でなおかつ聴きやすいというところが分かり易さとなっているのです。多分、この分かり易さはこのセッション参加者達のバックグランドの豊かさを表してるのだと思います。

このアルバムのハイライトはブルージーさが魅力のジャック・ブルースのオリジナル曲「HCKHHブルース」です。その他はジョン・マクラフリンのリリカルなギターワークが耳に心地よい「サム・エンチャンテッド・ディグ(メドレー) (a)サムズ・サック (b)リルズ・スリルズ」です。そして、ディック・ヘクトール=スミスの複数管同時吹きが堪能できる、ちょっとアメリカンジャズ的な色の濃い「オーヴァー・ザ・クリフ」です(オープニングの曲にふさわしい清々しい曲です)。これらの曲は全ての面において、このアルバムのセッションが良い意味でリラックスして行われたことを示しています。しかし、このアルバムの題名を訳すと「私たちの好きなモノ」という意味ですから、それだけでこの中身が充実かつリラックスしたモノだということが伺えます。

そんなアルバムですから、前後のクリームやジャック・ブルースのソロにあるようなスリリングなサウンドは望めませんが、ジャック・ブルースのそれ以外の面を聴きたい人、スリリングでないジャズロック(実は聴き方によっては結構スリリングではあるのだけど・・・・・・)とはどんなモノか知りたい人、フリージャズ的な演奏のジョン・マクラフリンが聴きたい人などそういった欲求を持っている人達にはお誂え向きです。このアルバムは、最初書いたように表面的にはフリージャズ作品ですから明快なポップというわけにはいきません。全員がロック系のミュージシャンとはいえやはりジャズのセッション作品なので、最低限そういうことは頭の隅に入れておいて聴いた方がよいでしょう。とにかくフリージャズにしてはとても聴きやすいアルバムなので、「フリージャズは難しくて苦手」という人も試し聴きの価値はあります。それくらいのアルバムということです。

(注)クリームは、ジャック・ブルース、ジンジャー・ベイカー、エリック・クラプトンの3人からなるロックバンドで、アルバムでは目指せビートルズといわんばかりに3分間のロックンロール作りに情熱を注ぎ、ライブではブルースロックをジャズの即興の組み立て方を応用して大胆にインプロヴァイズして長尺の曲にしたりして非常にスリリングな演奏を繰り広げていました。そしてそれらは後のロックに多大な影響を残しました。そんなバンドです。


Created: 2002/08/23
Last update: 2003/12/02

e-mail:hryo@orange.ocn.ne.jp

Valid XHTML 1.1! Valid CSS!