MILSE DAVIS
THE COMPLETE IN A SILENT WAY SESSIONS

曲目

演奏者

寸評

今回は「番外編」ということで、アメリカ人ジャズトランペッターであるマイルス・デイビスのCDのボックスセットを紹介します。これは、ある時期のマイルス・デイビスに焦点を当てその時期のセッションで演奏された曲をもれなく収録するというまさに「コンプリート」なボックスセットです(注1)。さて、今回紹介するボックスセットはマイルス・デイビスが1969年の夏に発売した「イン・ア・サイレント・ウェイ」というアルバムを中心としたセッションのボックスセットです。このセッションの重要人物としてジョン・マクラフリンであるとか、デイヴ・ホランドといったブリティッシュジャズロックの重要人物が名を連ねている為の紹介です。

このボックスセットはマイルス・デイビスが徐々に電化(注2)していく過程の記録ともいえる内容になっています。1968年の夏から1969年の春にかけての録音で、新しいマイルスサウンドの構築の記録ともなっています。

また、ブリティッシュジャズロックの色眼鏡で見ると、デイヴ・ホランドやジョン・マクラフリンのアメリカ進出への足掛かりの記録ともいえます。その後アメリカを中心に活躍する二人の歴史的な記録でもあります。

さて、このボックスセットの注目はなんと言ってもDISC TWOの後半からの「イン・ア・サイレント・ウェイ」のアルバムに収録された曲のセッションでしょう。ジョン・マクラフリンにとってはここがマイルス・デイビスのセッション初参加ということになります。単純だけど大迫力のベースとシンバル、ブルージーなエレクトリックギターのアルペジオ、これらにまとわりつく3台のエレクトリックピアノの絡みといった単純な要素と複雑な要素の絡み合ったベースサウンドにバラードを奏でるトランペットとサックス。こんな印象の「シュー〜ピースフル」と、ブルースフォーク風のエレクトリックギターをメインにそれに他の楽器がまとわりつく感のある牧歌的な「イン・ア・サイレント・ウェイ」。一転、非常に単純なリフの上で各楽器が即興のソロを取る「イッツ・アバウト・ザット・タイム」。これらの曲におけるキーパーソンはジョン・マクラフリンです。彼を中心に据えて聴いてみても楽しめる内容のボックスセットとなっています。

ある意味、イギリスの音楽家がアメリカの音楽の中でどのように機能するかということが興味をそそる内容となっています。しかし、なんと言っても、ジョー・ザビヌルの作る曲の良さが光るボックスセットなっています。「ディレクションズ」のハードロック的な格好良いリフ、「イン・ア・サイレント・ウェイ」の美しい旋律のギターリフ。どれを取っても、彼のメロディーメーカーとしてのセンスの良さを感じます。この辺を楽しむのもまた良しでしょう。

注1:本当に「コンプリート」かどうかは、マイルスデイビスの研究をしている訳でもないので分かりません。

注2:エレクトリックギターや、エレクトリックベース、エレクトリックピアノ、エレクトリックオルガンなどの電気(及び電子)楽器を導入することを指すジャズ用語です。


Created: 2002/10/26
Last update: 2003/12/02

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