MILSE DAVIS
THE COMPLETE BITCHES BREW SESSIONS

曲目

演奏者

寸評

今回は「番外編」ということで、アメリカ人ジャズトランペッターであるマイルス・デイビスのCDのボックスセットを紹介します。これは、ある時期のマイルス・デイビスに焦点を当てその時期のセッションで演奏された曲をもれなく収録するというまさに「コンプリート」なボックスセットです(注1)。さて、今回紹介するボックスセットはマイルス・デイビスが1970年の初頭に発売した「ビッチェズ・ブリュー」というアルバムを中心としたセッションのボックスセットです。今回は「MILSE DAVIS / THE COMPLETE IN A SILENT WAY SESSIONS」に引き続きジョン・マクラフリンやデイヴ・ホランドの活躍するセッションということでの紹介です。

このボックスセットはマイルス・デイビスが「イン・ア・サイレント・ウェイ」でのセッションの成果を受けてその発展系を目指した内容になっています。1969年の夏から1970年の初頭にかけての録音で、マイルスサウンドに更に磨きをかける作業の記録になっています。

また、ブリティッシュジャズロックの色眼鏡で見ると、特に、ジョン・マクラフリンのセッションにおける役割の増大が記録されています。かなり複雑な曲が多いので、ジョンの活躍だけを追っていくのは辛いですが、確実に彼の重要性が増していることは聴き取れます。それは、彼自身の名前がタイトルになった曲が演奏されていることからも伺えます。

このボックスセット収録曲の凄いところは、どの曲もリズムパートを担う楽器の演奏者が複数配置され複雑なリズムがから見合う内容になっていということです。それで、月並みですが、新しいまさにマイルスサウンドとしかいいようのない音を作っています。専門的に各収録曲を分析していけば、「〜的」という呼び方も出来るでしょうが、ここは紹介がメインということであえてそれはしません。ただ、かなり混沌とした印象を受ける人もいるかもしれませんので、シンプルなサウンドが好みの人は第一印象は良くないかもしれません。しかし、感覚的な物言いで申し訳ないのですが、音が一つの固まりになって押し寄せてくる感覚がありますので、聴き手を圧倒する力はあります。そして、特に注目の「ジョン・マクラフリン」ですが、これは、タイトルが示すとおり、ジョン・マクラフリンのギターが主役の曲です。「スパニッシュ・キー」の一部から派生した曲だそうで、マイルス・デイビスは参加していない曲です。作曲者の名義はマイルス・デイビスになっていますが、実質は彼の曲でもあります。

とにかく、このボックスセットは聴く者の見識を広くし、「世の中こんな音楽もあったんだ」とか「こんな手もあったんだ」とか思えることでしょう。

注1:本当に「コンプリート」かどうかは、マイルスデイビスの研究をしている訳でもないので分かりません。


Created: 2002/10/27
Last update: 2003/12/02

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