くまちゃん　タイで生まれる　の巻

１９９５年４月１０日、僕はタイの「ぬいぐるみ工場」で誕生したのだ。毛色は「茶」。ちょっと濃いめ。
体型はスーパーモデルなみ　と言いたいところだけど、ほんとは２頭身かな。
兄弟はたくさんいるんだ。五つ子ちゃんなんて目じゃないくらい。
多すぎて誰が誰かよくわかんないや。

工場の外の空気をいっぱい吸って、一息つこうかななんて思ってたら、
ビニールの袋に入れられちゃって、窒息しそうになっちゃった。密閉されなかっただけマシだったよ。
それからみんなと一緒に段ボール箱に詰め込まれて暗いところに押し込められた。

よくわからないんだけど、トラックに乗ってどこかに連れて行かれてくみたい。
ガタガタ揺られて、どこ行くんだろう。もしや、怪しいところに売り飛ばされるんじゃ。
なんかイヤな予感がしてきた。
工場長に行き先くらい聞いとくんだったよ。

どれくらい揺られたんだろうか。なんかしょっぱい匂いがしてきたぞ。
もしかして海？このまんま流されちゃうのかな？それとも市場で売られちゃうのかな？
ま・まさか？僕はくまだぞ。魚のエサなんて、いっくらちっちゃいからってそんなの御免だよ。
サメが来た。あっ、やめてくれ、僕を食べないでくれぇ。

ガタンガタンガタン

ゆ～らゆら　ゆ～らゆら

なんか今までのガタガタと違って、今度はユラユラ揺れてるみたい。ちょっと酔っちゃいそう。
でも助かったみたいだぞ。サメはいないし。どうやら船にのっけられたみたいだ。

どこまで行くんだろう。やっぱり売り飛ばされるのかな。
どこかの港に船がつくまでに船長さんに行き先を聞いてみよう。

って言ってもなぁ、段ボール箱の中だしなぁ。やっぱり聞けないや。
しょうがない、矢でも鉄砲でも持ってきやがれってんだ。
え～い、やけくそだ、こうなったら寝ちゃおぅっと。

Zuu Zuu Zuu。

なんか、がさごそとまわりがうるさいな。ちょっと眩しいしな。
船から出たのかな。どうもそうみたい。船酔いもおさまったみたいだし。

さてと、ここからどこへ行くんだろう。もうなるようにしかなんないしな。
げっ、またトラック？ガタガタ揺れるのやだな。早くどっかに落ち着いてよ。

揺れがおさまった。これで長旅も終わりかな。
どこだろう、生まれてから何日たったかわかんないけど、まだ段ボール箱のなかなんだよな。
早く外に出たいよぉ。早くぅ。