別誌かもめ通信 2000年11月号
遺 言
  
「遺言」という言葉は、非日常的な言葉であり、日常生活では、どちらかというと話題にすることが憚れる言葉であります。
しかし、核家族化の中で、各人がそれなりの権利意識を持ち、生活している現在「遺言をしておけばよかったのに」という話をよく耳にします。

なぜ遺言なのか
1.遺言する目的の第一は、相続時の遺産相続争いを回避するという点にあります。

どんなに仲のよい兄弟であってもその時点での状況、あるいは「本人以外の人々」からのアドバイス、もしかしたら要請により、権利などを主張し、遺産相続争いになる可能性はあるといえましょう。
遺言があれば、法律的には、まずは遺言により遺産分割がされることになります。また、心情的にも、遺族にとって、遺言による遺産の相続ということであれば、納得し易いのではないでしょうか?
2.遺言する目的の第二は、遺言によって遺族の生活の基盤を支えることにあります。遺言をしておかないと、以下のようなリスクは増大します。

@ 配偶者の住む場所がなくなるかもしれません。
A 配偶者の生活資金が不足するかもしれません。
B 障害者、未成年者等生活力のない者の安定した生活が脅かされるかもしれません。
C 事業承継予定者が事業を承継できないかもしれません。その結果、事業承継予定者の生活の糧がなくなるかもしれません。

3.遺言により、法律で定める相続人以外の方に遺産を遺すことができます。
つまり相続人以外で世話になった方に財産を分けることができるということです。

例えば、親より先に子が亡くなり、その子のお嫁さんが引き続き家に残り、義父、義母の老後の世話を一生懸命していたとします。(また、孫はいないものとする。)
義父、義母が亡くなった場合、お世話をしていたお嫁さんに、義父・義母が所有する家等を渡したいところですが、義父・義母が遺言(あるいは養子縁組)をしていなければ義父・義母に他に子がいれば、相続権はその子にありますので、そのお嫁さんは家を出て行かなくてはならないかもしれません。だから遺言をしておきましょうということです。

どんな形式の遺言がいいのか
 遺言にはいくつかの形式がありますが、次の形式の遺言が一般的です。

公正証書遺言
 遺言書は公証人により作成され、最もトラブルが少ない遺言とされています。

自筆証書遺言
 作成は公正証書遺言と比較し、容易であり、費用もほとんどかかりませんが、「形式的に不備があり、無効になる可能性がある。」「相続時には家庭裁判所で検認を受けなければならない。」「信憑性を争う可能性がある。」等のデメリットがあります。せっかく遺言を作成し、生前の意思が実現したとしても、遺言の信憑性を問われたら、後味が悪いのではないでしょうか?

その他秘密証書遺言などがあります。

 遺言といえば、いままで「お金持ち」というイメージが連想されました。また確かにそれ自体は日常的なものではないでしょう。しかし、これからは残された者たちの日常を守るという意味からも、一般的なものになっていくことでしょう。

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