日本の一人勝ち、しかし(2)
            河井洋
 2009年12月20日作成。
 他人の職業をくさすつもりもないのですが、株屋の新聞にごまかされてはいけません。日本だけが景気が悪いのではなく、良く見える外国の現象は全てバブルなんです。
 中国の土地バブルは早晩はじけるでしょう。上海万博まで持てばよい方でしょう。なにしろ中国は情報が恣意的で、殆どブラックボックスですから、たしかなことは何一つわからないのです。
 年間粗鋼生産量が五億トンと言われているのですが、何処で消費されているのか、さっぱりわかりません。国民総所得だか総消費だか知りませんが、日本とチョボチョボの国です。日本の倍鉄鋼を使っているとしても、中国国内消費量は一億八千万トン、輸出二千万トン、合わせて二億トン、後はどこに消えてしまっているのでしょうか。まさか在庫の山を作っているのではないでしょう。
 ようは、経済指標の数字がつじつまが合わないのです。電気の消費量の発表が消えてしまったと伝えられています。
 アメリカの住宅ローンの返済不能状態は、中流から、百万ドル単位のローンの富裕層に及びつつあるそうです。とにかく仕事を創るためにジャブジャブに資金を供給して、緊急には必要ない住宅を作りまくっていると言うのです。
 一方で、ローンが返済できないで、取上げられてしまった夥しい空家、しいてはゴーストタウンを創っているのだそうです。
 不況は、株とかなんとか好況にみえたとしても、実質失業率の高さではかるべきでしょう。
 イギリスはもう死んでいます。金融だけで飯を食べるなんて、人口五百万人の都市国家のやることです。
 北欧諸国がしっかりしていますが、その五百万国家です。日本の参考にはなりません。小さいものをそのまま拡大してもどうにもならないのです。
 日本の経験も巨大な中国に適用することは無理でしょう。

 私はかように考えます。(少しも誇張はありません。)
 主要にして絶対の原因は、中国に代表される巨大人口国家が世界の自由経済市場に新規参入し、先進国家の工場労働者の職をかなりの程度うばってしまったことにあります。その結果、先進各国の失業者が増え、購買力が乏しくなったのです。 デフレの主因はまさにそこにあるのです。即ち労働者の所得のかなりの部分が先進諸国から、中国などに移転してしまったのです。
 英米が国の存立基盤を金融にシフトしたのは、そうするしかなかったともいえましょう。しかしながら、そうすることによって、よけい没落を早めたのです。
 アメリカが強いと言われる航空機にしても、その部品の三分の一は日本によります。コンピュータの場合、中央演算装置を除けば殆どの部品は韓国、日本、台湾、中国などです。
 薬品においては研究開発を除けば、装置です。普通の労働者の雇用など微々たるものです。そうそう兵器と農業がありました。
 自動車は、アメリカの恐喝によって、日欧のメーカーがアメリカに進出し、現地で製造していますが、ようは、普通の能力の労働者で勤まる仕事が、日本や中国にかなりとられてしまったのです。それに加え、コンピュータのプログラムを作るような仕事に至っても、インドに移行してしまったのです。
 なんでしたっけ、アメリカのシリコンバレーとか言う企業群の街も閑古鳥が鳴いているそうです。もっとも、太陽光発電とか電気自動車とか始めているそうですが。
 第一、シリコンバレーの住人はごく普通の労働者ではありません。少数の高学歴、頭脳も飛びぬけて優秀な人たちです。
 つまり、先進国の失業者は増えつづけ、経済は、おしなべてこれからずっと、デフレ基調だと言うことなのです。従来の生活水準を維持することはできないのです。

 勿論、日本や中国やインドが悪いわけではありません。
なにか処方箋があるのかと考えました。

 アメリカの場合は簡単です。
 まず、戦争をやめて海外基地など廃止することです。
 日本と中国、イランとサウジが戦争をしたって、アメリカは、ほんとうはちっとも困らないはずです。
 ましてや、アフガンでテロリストが製造されているとしても、アラブ系の新規移民を廃止すればかなり防止できるでしょう。
 面子はまる潰れですが、自由市場主義を一部制限することです。
 俺の国は、輸入制限をするが、お前の国がそれをやったら、倍返しをするぞと脅すことです。

 日本の場合は他国に対しそんな手は使えません。
 私が考える手は、つぎのようなものです。
(1)公務員、正規労働者、高額年金者の賃金・年金を欧米の労働者、年金より三割引き程度とする。
(2)その一部を割いて正規雇用者の割合を増やす原資とする。
(3)その一部を研究開発人件費に上乗せする原資とする。
(4)その一部を、3K労働者の賃金をホワイトカラーよりも高くする原資とする。
 以上をもって、トータルの労働分配率を変化させないのです。
 むろん、減らされた人はつらいけれど、国民全体からみれば一緒ですし、消費も確実にふえます。なにより、生活保護を需給する人が多少は減るでしょう。

(5)いわゆるひきこもりを強制的矯正労働につける。
(6)女性、大学卒業者の積極的現業配置。
(7)株の配当の法的制限、投機の法的制限。
(8)銀行と証券等の分離。
(9)たかが月給取りのローン決済縮小。百万円以下の物品のローン禁止。
(10)日本国債の海外売却禁止。
(11)タクシー、クリーニング、理髪、美容等の公定料金制。
(12)なんでも自由競争の原則の見直し。
(13)みせしめに竹中平蔵の国外追放。銭儲け至上主義者の社会的追放。スポーツ選手、芸能人の所得などの報道を禁止する。
(14)社会保険のすべてを所得税に合算して税務署が取り立てる。
(15)総合課税の全面実施。分離課税の全面廃止。
個人番号による所得、税金、年金、保険などの一元管理。
(16)配偶者控除の廃止と引き換えに、託児所,託老所の充実。
(17)身体肥満税の創設。
(18)煙草、酒類、賭博的遊戯の懲罰的課税。
(19)累進課税の強化をしないかわりに相続税の強化。
その一部を原資とした、奨学金制度の充実。大学の研究基金整備。 ただし、独身者税、子なし税を創設する。
(20)中国のマーケットにあまり頼らない経済体制の確立。
(21)義務教育の充実と合理化。
  授業をまともに受けられる子供だけの50人学級
  そうでない子供の徹底的少人数学級の創設。
(22)農業については、どうしてよいかわからない。国土保全の問題もあるし・・・・・。

 以上、対外競争力を最低限確保しつつ、ワークシェアリングで細々と食いつなぐのです。そして何十年かたてば、よいこともきっとあるとおもうことです。

 こんな政策なら、別に富裕層にだってそう抵抗はないのではないか。以上。

日本のひとりがち、但し・・・
                   河井 洋
 T、不安の正体
芥川ではないが、今、日本人の中核的な層のかなりの方が、漠然たる不安をいだいているのではないか。だれもが、その理由は、解っているのだが、口にすることができないでいるだけであろう。
 その口にできないわけは多々あるがその一つは、「はしたない」と言うことであり、又、否定し難い問題に遭遇した時の、一般的日本人の心の持ちようでもあるのだろう。

 それは、日本と言うより、先進諸国共通の問題として極めて現実的な問題である。
 現実的に今日本国内に生じている困った現象を列記する。
1. 若年層を中心とした、正規被雇用率の減少。
2. 年金の成熟化と、年金支持層の減少。
3. 少子化、高齢化、人口減少。
4. 身近な地域にしのび寄る犯罪。
5. 失業の拡大。
6. 収入の減少。
上記にともなって、無責任にマスコミが撒き散らす破滅的未来も又列記してみよう。
1. 年金崩壊
2. 健康保険など医療制度の崩壊
3. 働き口の海外流失

 すべからく、これから先、生活レベルがさがるのではないかと言う心配である。これは漠然たる不安なんかでなく、より明確な不安なのである。
 しかしながら、これに対して、いままで、政権与党は「そんなことはない!」と敢然否定することなく、先行き破綻することばかりを、官僚や財界の情報としてタレ流してきたのである。
    前述したように、それに輪をかけて、マスコミとか、保険とか証券会社は不安をあおってきたのである。退職後1億円必要だなんて証券会社のあおりコマーシャルがテレビで流れていたこともあった。このことは、ゼツタイに忘れてやらないのである。
 しかしながら、私は、そう悲観したものでもないとも思っているし、ある程度は甘受すべきかとも思っている。

U、不安の正体の底流
 その第一は、冷戦体制崩壊後、新規に自由市場経済社会に参入した巨大人口国家、中国の存在である。今日はそれに付け加えて、インドの存在もある。もっとも、後者はまだ日本人にとって、恐怖の対象とまではなっていない。
 はしたなくも、恐怖と言う言葉を使ったが、中国の存在は、まさしく恐怖である。かつて、毛沢東は、原爆くらい、国民がズボン一着我慢すれば開発できると言いきったが、まさしく、13億人とはそういう数なのである。
 中国の2008年の一人あたりの名目国民所得は、日本の丁度10分の1と言われており、国民総所得は日本と同程度であるといわれている。
    しかし、実質は、つまり、物資の絶対消費量からみれば、中国は日本の3倍くらいになっているのである。すでに、粗鋼生産量は日本の年1.3億トンに対して3億トンから4億トンと言われており、二酸化炭素の発生量は、とうとうアメリカを上回ったと推定されている。
 この、産業化に成功しつつある国の、巨大な人口圧力の前に日本人は怯えているのである。地球と言う星で、中国が取分を増やせば、いやでも、先進国と呼ばれた国々の民の取り分はへるのである。
 つまり、これから先、日本の経済規模が世界に占める割合は、他の先進国と同じように確実にダウンするのである。先般危機をもたらした金融などは、英米の悪あがきにすぎず、英米景気の回復などが、もしあったとしてもそれはまた、なにかのバブルであり、マヤカシでしかないのである。英米は、過去、その実際の力以上の消費の原資を鉄火場でかせいできたにすぎない。ダボス会議などが示す、世界の金融センター順位など、最適鉄火場順位にすぎない。
 アメリカは、大統領がオバマになって、環境産業が巨大化するから、実物経済が復興するって、それは嘘である。1サイズ小さい自動車にのりかえ、借金でものを買う習慣を少しへらすだけで、巨大化する環境ビジネスに、十分対抗できる量の二酸化炭素削減はできるのである。それをことさら巨大環境ビジネスで置き換えようとするところに、このアメリカ型文明のいびつさが露呈している。
我々は、中国の成長を、よろこんでうけいれなければならない。たとえ、それが、我々の取り分の減少であったとしても、である。それが道義というものである。  我々日本人は、西欧の真似をして、植民地再分配戦争に参加したと言う苦い歴史を持つ。もうそういう時代ではないのである。

 V、日本の近未来は
 我々日本人は、そっせんして、取り分が減ることに甘んじた生活スタイルを確立しなければならない。このことを根底におかないで、物質的繁栄を追い求めれば、外部から、そねみ、妬みを買い、それこそ、アメリカ9.16のごとき、テロの洗礼を受けるであろう。つまり、憲法9条の理想は打ち砕かれるのである。
 だけど、なんら心配はいらないと私は思うのである。いぜんとして、日本人は勉強好き、仕事好きである。小泉・竹中路線に一時踏み迷ったが、軌道は修正された。
 幸いなことに、日本のバクチ化傾向はまだ後戻りがきく範囲であったという感覚を私は持っている。なぜなら、私自身が、かような状態に至っていないからである。
 私がそうなら、柳の下の泥鰌ではないが、私同様、私以上に確実をモットーとした人もそれこそウンカのごとくいようと言うものである。
 それでなければ、漢検のごときものが、犯罪を喚起するほど繁盛するはずがないのである。まして、テレビを席捲している、一見ムダな知識を集めたクイズ番組などをみていると、わが民族はゼニ万能でないとおもいしらされるのである。 政治の役目は、取り分がへっていく傾向をゆるやかにすることである。すなわち、失われた10年などとバカにされた緩やかな金融再建策は、無能の結果といわれているが、本当は、評価されてしかるべき政策だったのである。
 なにも、中国に引きずられて、日本人全体の暮らし向きの絶対水準が7割も落ち込むと言うのではない、向こう20年かけて3割程度さがるということを覚悟すればよいだけである。 ただ、全体の話だから、下のほうでは3割減ったら死ぬしかないと言うことでもある。これだって、政治の役割そのものである「所得の再配分」をすれば済む話である。そういう政策をとってくれる政党をえらべばよいだけの話である。なにも不安なことはないのである。
 年金だってそうだ、厚生年金とか共済の受給者から、海外旅行にいく費用を取上げるだけで済む話である。第一、年金生活者である私が、自費出版で本が出せるなど、どう考えてもおかしいのである。
 そんな金で不足分を賄えるはずがないって!そのとおりである。課金の方式を明確な税金方式にして、理由なく納付しなかった企業や個人を刑罰に処すればよいだけである。それでも納付できない層だけ免除すればよいのである

 W、竹中・小泉路線の誤り
 やはり、工場に「派遣」などと言う就労形態を認めたことにあろう。これは財界はもとより、労働界も同様にその責を負うべきである。
 総労働コストを下げようとするなら、正社員の取り分を全体として下げればよかったのである。それくらいのダウンに耐えられない賃金水準ではなかったはずである。
 むろん、株の配当はもっとへらすべきであった。配当を高くしないと、外資の乗っ取りにあうとさかんに言われた。株主資本主義だとかなんとかである。
 こんなことは、法律一本つくれば済むのである。外資がはいりにくいようにすればよいのである。なにも、英米から投資してもらう必要などこれっぽっちもないのである。日本には、資金が潤沢にあるのである。
 そもそも、英米が主張する金融システムは、融資を受ける側も便利ではあるが、金融業がもうけやすいようにと言うシステムである。
 ただ言っておけば、日本の内資は、あつものに懲りた、「臆病な資本」で、バクチ化経済の原資には成りにくいと言う、性質を持つ。もっとも、一つ状態が5年も続くと。ムズムズと虫が疼くのかもしれない。世界同時不況とは、なんのことはない、日本を除くほとんど全ての国がバブルに踊った結果であり、破裂してよかったのである。
 日本の資本が、しんぼうたまらず、打って出る矢先に破裂してくれてよかったのである。もっとも、野村とか、東京三菱とかなんとか、巨大な損失をくらったようである。
 日本の資本って、国内でちびりちびり小口沢山集めて稼いで、外国への一口二口の投資で、その何倍もの損失をだしてばかりいるように思う。特に金融とか証券の世界がひどいようである。
 いったいなんで、こんなバカばかりしているのであろうか。
 ようは、バクチに弱いのである。
 英米ばかりがモデルではなかろうと思う。大陸ヨーロッパ流と言う、日本と英米の中間くらいの感覚もあるやと聞く。
     X、日本の一人がち
 少しは遠慮して、中国など、遅れてやってきた諸国民の取り分に回せと言うのが私の考えである。それでも、日本には一日の長があり、彼我の差はなかなか解消しない。
 それは、日本人が、心底、勉強好きであり、仕事好きであり、強盗をはたらいても借金を返すような律儀な性格だからである。
 また日本人は恥を知っているが、見栄っ張りでは決してない。それが証拠に、「軽自動車」なるものがバッコしている。実際、4リットルの黒塗り「おベンツ様」に乗っている輩は、どこかおかしな職業の御方に限られている。素人さんがそんな車で掛取りに行ったら、「よろしゅうおますな、なんとかかんとか」言って、来月にしてくださいといわれるのがオチである。
 かように、車えらび一つにしても、社会が若い人をしつけてくれる。「変った、おかしくなった」と言っても、社会の教示力はまだまだ残っているのである。
 かような社会は強いのである。おとなりの国のように、自分の大きさを常に他人にみせつけておかなくても、だれもバカにしたり、のけものにしたりしない社会なのである。だから、無理をしないで暮せるのである。
 かような社会はおのずと省エネ社会である。燃費-リットル21キロの軽自動車社会と、5.5キロの大型車社会なら、なにもかもが4倍も違うのである。
 つまり見えっ張りでない分、日本社会は、ねばり強いのである。又、所得格差を小さくすれば、その分、国民総所得がもっと小さくなってもやっていけるはずである。
 中国などに譲った分だけ相対的総枠が小さくなっても、所得再配分をすれば、一人一人は、ちっとこまらないはずである。
 そんなことをすれば、富裕層は外国へ逃げてしまうと、竹中大先生はノタマウが、結構じゃござんせんか。
 ついでに先祖代々の墓石も背中に括りつけて、先生が高僧になって、全部ひきつれて「ふだらく渡海」でもしていただきましょう。おお、先生は和歌山県の生まれ!はまり役! こともあろうか、この竹中先生は昨今、派遣会社の顧問かなんかもやっておられるようす。どう考えても、この人は、ごく普通の日本人の感性はもっていないようである。なにか機会があったら、鼻パッチンくらいしてやりたいと思うのである。
もとい、
と言うわけで、日本が、みじめったらしい国に戻ることはないから、そう心配することはないのである。
 第一、一党独裁国家で高度資本主義社会の運営が巧くいくはずがなく、科学が発達することもありえない。又、公的健康保険制度一つつくれず、一人の成功者を生み出すために万人があえぐナントカドリームの国が、その体制でいつまでも栄えるともおもえない。又、宗教が政治の上に君臨している国や、カーストが支配している国にも未来があるようにも思えない。また、ことあるごとに踊りまくる民もいつ仕事をするのかと思ってしまう。
 又、巧くいかないのは、全てとなりの国との過去史のせいと言っている国の未来もあやしいものである。

   しかしながら、現代世界は、ありがたいことに、そのありえないような国でも、なんとかなっていっていくのである。その分、日本国の経済は窮屈になっていく。これはしかたのないことなのである。
 しかしながら、日本は、上に挙げた「うまくいかない条件」の全てを完全にもっていない国の数少ない一国なのである。
 日本人は、真正直にやっていけばよいだけである。何一つ、この社会の持つ本質を変える必要はない。ただ磨くだけである。
    そうすれば、お天道様はついてまわるであろうし、多分200%の確率で、過分な報酬も頂戴できるであろう。つまり未来は日本のひとりがちなのである。ただ、そう思ったとたん、その慢心が、お天道様の機嫌を害するやもしれぬのである。 慢心は敵である。日本は他国と横並びで十分である。

                             2009/10/10