正論じゃろん?(C) 15
当番弁護士制度 わが大分の偉人、福澤諭吉の近代日本国家建設への貢献はあまりにも大きい。そして現代、大分 が誇るべきものがもう一つある。それは、大分から日本の民主主義が始まったともいえる特筆すべ き、「当番弁護士制度」である。 当番弁護士制度とは、身柄を拘束されている被疑者や、その家族等から、弁護士会に出動要請 (接見依頼)があれば、弁護士会に登録している当番弁護士が初回に限って無料で被疑者に接見し、 被疑者の相談に応じる制度である。これは、弁護士制度の中でも最高といえるものであり、身柄を 拘束されている被疑者に対する法的弁護権が不十分であるために考案された制度である。日本で最 初に本制度を実施したのが大分である。 私は、生の法律学習の一環として、裁判ウォッチングの会に入会している。裁判(刑事・民事) を時々傍聴し、弁護士等の講演会にも極力参加するように努めている。 普通の生活をしていれば、一般の人が刑事事件に関わることは無い。しかし、冤罪事件に象徴さ れるように、無実の人が何十年間も苦しめられることが現実にある。警察の取り調べにおいても、 暴力は無いらしい(?)が、自白の強要(早く出してやるから話せ。Aは話したぞ、お前も白状し たらどうだ……、等々)はよくあるらしい。身に覚えが無いのに、ある日突然に警察に連行され、 代用監獄で心身共に厳しい取り調べを受ければ、してもいないことを、やったと言わざるをえない 状況に追い込まれることが、残念ながらある。 当番弁護士制度は、大分のM荘事件がきっかけである。13年ぶりに完全無罪を勝ち取ったKさ んと、弁護士の話を以前聞いた。「市民が裁判を傍聴してくれたことが無罪につながった(裁判官 の態度が変化)。世間が忘れても、多くの(無実の)人が孤独に戦っている。世論の監視が、正し い判決に結びつく。」Kさんの話のごく一部である。警察に協力したら、O新聞が重要参考人とし て報道したそうである。マスコミの報道のあり方にも問題がある場合が多い。 大分市内のM郵便局長強盗殺人事件は、有力な手がかりが無く、長期化の様相を呈している。青 少年の犯罪も多発、狂暴化、低年齢化している。痴漢等の破廉恥な犯罪も多くなっている。身近な 所でも、実に様々な憂慮すべき問題がある。 一人の人間にできることには限りがある。しかし、何事にも無関心にならず、皆が社会全体を注 意深く観察し、既存の社会システムを十分に監視することは重要である。刑事事件のように、生命 刑、自由刑を伴う場合はなおさらである。 参議院議員選挙の投票日が近付いている。政治(行政)に限らず、司法、立法、その他のあらゆ ることに、我々はもう少し関心を払うべきである。恐るべきは無知、無関心である。民主主義国家 では、我々国民が主役であることを深く自覚すべきである。 以上