正論じゃろん?(C) 23
憲法整合性(憲法第九条と第九八条) 沖縄の米軍基地問題、自衛隊海外派遣問題等、国際社会の複雑化に伴って、日本は正念場に立た されている。わが国は、平和憲法を持っている。以下、六法全書を開く時間が無い人の為に、あえ て、日本国憲法、日米安保条約、自衛隊法をそのまま引用しながら、標題に関する私見を述べる。 まず、あらためて、憲法第九条を確認する。憲法第九条第一項「日本国民は、正義と秩序を基調 とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際 紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」第二項「前項の目的を達するため、陸海 空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」 内閣法制局が、一九五二年一一月二五日にまとめた、「戦力」に関する統一見解の内の数例を挙 げると、「戦力とは、近代戦争に役立つ程度の装備、編成を具えるものをいう。」「その他の戦力 とは、本来は戦争目的を有せずとも実質的にこれに役立ち得る実力を備えたものをいう。」「戦力 とは、人的、物的に組織された総合力である。」 自衛隊の合憲性については、判例も分かれており、重要な問題に関しては「統治行為論」によっ て司法判断が為されていない。私は、前記の内閣法制局の「戦力」に関する見解、現在の自衛隊の 人的物的組織力から判断し、自衛隊は「戦力」に該当すると考える。憲法第九条の観点からは、自 衛隊は違憲の疑いが濃厚であると考える。 憲法第九八条第二項「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守する ことを必要とする。」 また、日米安保条約第三条は「締約国は、個別的に及び相互に協力して、……、武力攻撃に抵抗 するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」第五条「各 締約国は、……、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動すること を宣言する。」第六条「日本国の安全に寄与し、……、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海 軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と規定している。 自衛隊法第七六条第一項は「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、……、自衛隊の全 部又は一部の出動を命ずることができる。」第八七条「自衛隊は、その任務の遂行に必要な武器を 保有することができる。」第八八条第一項「……自衛隊は、わが国を防衛するため、必要な武力を 行使することができる。」と規定している。 憲法第九八条第二項の観点からは、日米安保条約、自衛隊法は必ずしも違憲とは言えないと考え る。日米安保条約、自衛隊法に関しては、憲法第九条と第九八条第二項との間に整合性が乏しいよ うに思う。安保、自衛隊問題等を論じる時、憲法第九条ばかりが表に出て、憲法第九八条第二項が 関連づけて考察される事が少ないように感じる。学説においても、条約優位説と憲法優位説に分か れているようであるが、この点についても議論を深める事が重要である。日米安保条約は、あくま でも日本国とアメリカ合衆国との間だけの条約であり、日本の近隣諸国等との間に敵対関係を作ら ないとは断言できないのである。 沖縄、本土基地の現状を見ると、日米安保条約はアメリカ合衆国からの押しつけの感を抱く人が いるかもしれない。憲法第一三条で尊重を必要とすると規定された、「自由及び幸福追求に対する 権利」を始めとする日本国民の権利が、アメリカ合衆国の利益の犠牲にされる可能性も否定できな い。しかし、アメリカ(駐留米軍)に日本が守られていることも、事実である。 現実の国際社会においては、平和憲法を掲げるだけでは、日本の平和は保てない。日本の平和、 繁栄等の裏にどのような努力があるのか、どのようにして日本の平和が維持されているのか等、よ く考える必要がある。国際社会の一員として、相応の責務を果たすことも重要である。平和的な貢 献も、当然、選択肢のひとつである。 以前、某国のミサイルは、我が国の領空を侵犯して太平洋に落下した。他人ごとでは決してない。 もし、大分の別府湾に他国のミサイルが落下したら、平和ボケしている大勢の人(大分ん人んこと だけじゃないっち)も仰天するであろう。アジア某国のミサイルは、東京、ワシントン等を標的に している可能性がある。 日本国憲法の整合性、国際社会の一員としての責任(恩返し)、真の驚異国、等々について、タ ブー視することなく、国民全体で真剣な議論をする必要がある。憲法に関して言えば、法文が何ら 変わっていないのに、十分な議論や司法審査が無いままに、政治絡みで解釈が勝手に変えられて運 用される(解釈改憲)可能性がある。憲法は、主権者である国民のための道具である。不具合があ れば、改良すればよい。一部の好戦者、独裁者等を除き、どこの国の誰も、好んで戦争をする人は いないであろう。しかし、我が国が戦争・紛争を放棄しても、向こうから押し寄せてくる可能性が 絶対に無いとは言えない。 「備えあれば患えなし」 参考文献 別冊法学セミナー 基本法コンメンタール『憲法』 以上