正論じゃろん?(C) 32
平等とは 日本国憲法第14条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、  経済的又は社会的関係において、差別されない。 (2)華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 (3)栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有    し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
◆絶対的平等 各人の相違を無視して、人々を常に同一扱いしなければならないとする平等観 ◆相対的平等 各人の相違を無視することではなく、等しいものは等しく、異なるものは異なる程度に応じて取り 扱うとする平等観 ◆機会平等 各人の相違(競争の出発点)の違いを無視して、機会さえ平等であれば(競争ができれば)、結果 的に不平等が生じても仕方がないとする形式的平等観 ◆条件平等 全員が同じ(競争の)出発点につけるように条件が整えられるべきであるとする平等観 ◆結果平等 条件を整えるだけでは不十分であり、結果(競争の出口)が平等であるべきだとする平等観 ◆男女平等  歴史的に女性は差別をされてきたが、女性は妊娠するため一般的に職業に制約がある、行動の自 由が限られる(性犯罪被害等)、等の現実は直視すべきであろう。また、男女の本質的差異(肉体 的、生理的、精神的差異)は無視すべきではないが、意識を改革し(妻・母としての女性の役割を 男女共に再認識(正当評価)すべきであろう)、男性は女性に対する差別意識を捨てて敬意と愛情 を持ち、女性は被害者意識と無責任(女性だから、という言訳)を、より強い自負心と責任感に変 えていくべきであろう。  ただ、今日では、社会の各分野への女性の進出が著しくなっており、男女を肉体的差異から単純 に区別することは難しくなってきている。男女平等の問題は、性別に加え、個々人の能力・資質に よる区別の観点からも論じられるべきである。人間がそれぞれ異なる状況にあることを認め、等し いものは等しく、異なるものは異なる程度に応じて異なる取扱いをすることは否定されないとする 相対的平等説(通説)においても、性別が合理的区別となるのか否か、個別具体的に論じられるべ きである。
区別 違いによって分けること。 ⇒ 当たり前、許される 差別 正当な理由が無いのに、劣ったものとして不当に扱うこと。 ⇒ 絶対に禁止 男と女は、肉体的、生理的に違う。これは事実であり、分けて当然である。男は賢いが、女は賢く ない。これは根本的に間違っており、絶対に許されない。左記は一例であるが、世の中では、区別 と差別とを混同してしまっている場面が時々見受けられる。 ジェンダー・フリー 「社会的文化的につくられた性差から解放されること。例えば、学校の出席簿で男子が先になって いるのをやめ、男女混合名簿にするなど。」
 最近は、上記の各種平等の概念、区別と差別との違いを「ごちゃ混ぜ」にして論じ、混乱してい る案件が多数ある。ジェンダー・フリーなる、訳のわからないカタカナ語を氾濫させている集団も ある。何でも「平等、平等」と唱える団体・個人も存在する。  例えば小学校の運動会で、100m走の前に予め(男子・女子)個々人のタイムを測定しておき、 同じようなタイムの子供達を男女混合で走らせ、ゴールをほぼ同じにする。これが平等と言えるで あろうか。皆で仲良く手を繋いでゴールに着くことがいいことなのであろうか。競争をすることが 悪いのであろうか。走るのが速い・遅いは、一つの側面(個性)にすぎない。足が早くても、他の 面が全て優れているとは限らない。足が遅いからといって、他の能力も全て劣っているとは全く言 えない。個々人の多様な個性を伸ばすことは考えないのか。全く働かなくても、最後には国や地方 公共団体が生活の面倒をみてくれるのなら、苦労して働いている人達はどのように感じるであろう。  思春期の子供達が通う学校で、着替え室が無くて、同じ教室で着替えをしている学校がある。出 席簿で男子が先なのはけしからん、と言って女子を先にする学校もあると聞く。が、これは女尊男 卑になるから男女混合名簿にせよ、と言う意見も出て来る。  人は人として、尊重されなければならないのは当然である。男女は生物学的に異なる(区別)。 社会的・文化的に形成される(された)性別(ジェンダー)を無くする(フリー)ことは、正しい 面もあろう。しかし、ジェンダー・フリーを推進する団体の真の狙いは何なのか。誰か、あるいは どこかの国に操作されているのではないか、と懸念するのは私だけであろうか。男「らしさ」、女 「らしさ」という表現は死語になるのであろうか。無能な男性と、有能な女性とは比較するまでも ないが、ジェンダー・フリーの行き着く先はどうなるのか。各種平等概念・区別・差別をごちゃ混 ぜにした社会の行き着く先は? 問題を提起したまま、ここから先は読者の想像に委ねる。 参考文献 芦部信喜『憲法 新版補訂版』(岩波書店、2000年) 小林節『増訂版 憲法』(南窓社、1995年) 渋谷秀樹・赤坂正浩『憲法1 人権』(有斐閣、2000年) 『第3版 3行でわかる… 現代新語情報辞典』(学習研究社、1997年) 井上博道「基本的人権」(非売、2002年)                                         以上