正論じゃろん?(C) 34
基本的人権(憲法の第三者効力を中心として) 【無効力(不適用)説】 憲法は国家権力を規律するものであるから、私的自治が律する私人間における人権問題は、直接・ 間接に民事法と刑事法によって保障されるべきであるとする説。しかし、憲法の人権規定は全実定 法秩序の基本規範であり、私人間適用の否定は妥当ではなく、現実(必要)を無視していると言え る。無効力(不適用)説は現在、殆ど支持されていない。 【直接効力(直接適用)説】 憲法は、国家生活全体の基本法(全法秩序の基本法:自然権は、本来、対世的なもの)であるから、 私人関係にも当然に適用されるとする説。直接効力(直接適用)説だと、憲法が活かされて理想的 な日常生活が実現するように思えるが、私的自治侵害、国家権力による私人活動への介入の可能性、 等の問題が生じる。憲法の人権保障規定が一般的に直接適用されるとする直接効力(直接適用)説 には批判がある。 【間接効力(間接適用)説】 私法の一般条項の解釈を通して、憲法(立法の指針、解釈の指針)が私人間にも及び、社会的弱者 が救済されるとする説。第三者効力が予定された条文の直接適用は認めるが、それ以外に人権保障 を私人間関係に適用するには実定法(民事法、刑事法)の規定を介してである、とする間接効力 (間接適用)説は我が国の通説・判例となっている。 【国家行為理論】 私人(私的団体)の権力・機能が、国家の権力・機能と類似する場合、その行為を国家行為とみな し、憲法の人権保障規定の私人間への直接効力を認める理論。国家行為理論は、人権保障を図る方 法として有効である。  憲法の第三者効力とか、私人間(しじんかん)効力という言葉は、普通の人は殆ど聞かないであ ろう。憲法が、私人間の問題にどのような効力を持つかという問題に対して、上記の諸学説が存在 するのである。  憲法の第三者効力でいう「第三者」とは、憲法が規律する本来の関係(統治権力関係)の「当事 者ではない立場の者」という意味である。  現代社会においては、強大な社会的権力を有する強者による、弱者の基本的人権の侵害が増加し ている。両者は、支配・服従関係、権力関係にある。強者と弱者の利害を調整すべき法律(例:商 法)も、時の政治の多数決で決められる(改悪)ため、弱者を保護するのに十分とはいえない場合 がある。憲法の第三者効力の問題は、多くの人が直面している問題であり、憲法学の古くて新しい 難問と言われている。  人権とは、人間が生まれながらにして持つ、人間らしく(自由で豊かで平和に)生きる権利であ る。基本的人権尊重の精神を守り、市民生活における基本的人権をあまねく保障するためには、憲 法の人権規定は直接的であれ間接的であれ、第三者効力(私人間効力)を有していなければならな いのは当然である。国家類似の大団体には、憲法の第三者効力が及ぶのである。社会的権力がやり 過ぎの時は、憲法の出番である。  憲法よ、惰眠をむさぼっている場合ではない。司法は、今こそ積極的で健全な判断を下す時であ る。弱者をいじめて、栄えた国・団体は無い。密告・監視・デマ・暴力は、共産独裁主義と同じで ある。中高年をいじめるのは、即刻、止めねばならない。物理的な年齢が若くても、精神が朽ちて いては何にもならない。気をつけないと、若者までやる気を無くして(将来を悲観して)、組織は 崩壊するのである。大事なことは、モラール(士気)とモラル(倫理)の向上である。社会的・経 済的弱者に対する理不尽な扱いも、許されるものではない。  憲法の第三者効力(私人間効力)の問題は、私の拙いホームページの片端に納まる問題ではない ので、これ以上、筆を進めるつもりはない。これは、私のライフワークとなるものである。いつの 日か、書籍の形で、私の考えを世に問うつもりである。                                         以上 参考文献 小林節『増訂版 憲法』(南窓社、1995年) 小林節『憲法守って国滅ぶ』(KKベストセラーズ、1992年) 芦部信喜『憲法 新版補訂版』(岩波書店、2000年) 米沢広一・他『現代立憲主義と司法権』佐藤還暦、(清林書院、1998年) 井上博道「基本的人権」(非売、2002年)                                         以上