文章作成の基礎
各項目へジャンプします。 1.まずは、これから 2.文法 3.文章表現、構成 4.典型的な法律論文のアウトライン
まずは、これから 著名人の言葉 大倉徹也(放送作家) 「文章というのは『読んでいただく』ものなのである。そして、書きたかったことを『わかってい  ただく』ものなのである。このことが十分にわかったら、それだけで文章の書き方というのはわ  かってくるのではないか、と思えるくらいだ。」 千葉亀雄(文芸評論家) 「はっきり書け。すれば人は理解する。短く書け。すれば人は読んでくれる。」 永井龍男(作家) 「うまい文章を書こうと努力するのは、まちがっている。正確な文章を書こうとすることこそ、根  本だ。」 大宅壮一(評論家) 「だいたい、頭の悪い者ほど難しい文章を書くものだ。逆に、頭の良い人はわかりやすい文章を書  く場合が多い。自分の頭の中にある濾過器を通して書くからだ。二度も三度も読み返さなければ  いけないような文章は、悪文の見本みたいなものだ。」
良い文章の四原則 一、正確:読み手(相手)に情報・意見を正確に伝える。事実と意見を分け、読み手の誤解を生じ      させない。ミスをしない。文法に注意する。 二、明瞭:何が言いたいのか、はっきりさせる。論理をきちんとする。大事なことを先に書く。読      み手(の関心・レベル)を意識する。例を用いて、読み手の理解を助ける。 三、簡潔:簡潔に、短く書く。回りくどい表現・修飾語の乱用を避ける。主題に真っ直ぐに迫る。 四、品位:内容・表現に節度ある態度を守る。著作権・差別表現等に気を付け、社会ルールを守る。
推敲・校正 最終的な文章にする前に、推敲・校正をしましょう。誤字(誤変換)、脱字等の無いよう、文章作 成後は見直しをしましょう。何回も見直しをしていると、神経衰弱になるかもわかりませんし、見 直す時間が無いという人もいるでしょう。しかし、「一つの誤字は万死に値する」くらいの覚悟で 文章を作成したいものです。人間ですから、たまには間違うこともありますが……。 文章の完成後、(声に出して)読み返してみましょう。自然な日本語になっているかどうかが、少 しはわかります。 本HPの間違い発見通知、大感謝  校正
基本的なルール 日本語(口語)は、主語をよく省略しますので、文章の意味が曖昧になりがちです。主語・動詞・ 目的語、等の関係5W1HWhat, When, Where, Who, Why, How)を常に意識して、文章を 作成しましょう。助詞「」等の使い方にも、十分気を付けましょう。助詞の省略は いけません。 段落が複数になる場合、書き始めは一字分、下げましょう。行頭に句読点が来ないよう、気を付け ましょう。省略を表す「……」は二マス分です。引用符は「”」ではなくて「 ”」です。 読点(、)の打ち方は難しいですが、基本的に読者を意識した、読みやすい打ち方が良いと思いま す。あまり多すぎると、読んでいて疲れます。反対に、少なすぎると、これまた疲れます。しかも、 文のつながり等がわからなくなることがあります。意味を正確に伝えたり、読みやすく強調する場 合は、読点を多用することがあります。また反対に、一気に読ませたい場合は、読点をわざと少な する場合もあります。個人的なセンスの問題もありますので、程々に使用しましょう。あくまで も、あなたの文章の向こう側には、「読み手」がいることを忘れないようにしましょう。 読点は文章の命です。 文献を利用する場合、引用文は「 」記号を用いる等、自分の文章と区別できるよう、工夫しまし ょう。研究領域によって習慣が異なりますので、当該領域の方法に従うのがよいと思いますが、基 本的には、下記項目を明記しましょう。出典や引用箇所には、番号(1)を付けましょう。  (1)   著者名 「論文名」 『雑誌または書名』 (出版社、刊行年) 引用頁
文法 (中学の教科書等を参照) 主なもののみ ■文 句点(。)による切れ目毎の一続きの言葉 ■文節 文を、意味・発音上から、自然さを失わずにできるだけ短く区切った一区切り  例:文  「井上は人間だ」。    文節 「井上は」「人間だ」。    単語 「井上」「は」「人間」「だ」。 ■主語+述語 「何が」+「どうする」「どんなだ」「なんだ」  例:「犬」が「走る」。 「猫」が「多い」。 「猿」は「動物だ」。 ■修飾語 「どこに・どんなに・いつ」等  例:桜が「公園に」咲く。 梅が「きれいに」咲く。 山茶花が「早く」咲く。 ■体言(たいげん):名詞:普通名詞・固有名詞・数詞・代名詞 ■用言(ようげん):動詞・形容詞・形容動詞  例:動詞(「う」音で終止 「行く」「尽くす」)  形容詞(「い」で終止 「美しい」)    形容動詞(「だ」で終止 「静かだ」「素直だ」) ■単文 主語+述語が1組だけ  例:井上が怒る。 ■重文 主語+述語が2組以上で、対等の関係  例:井上は酒を飲み、友は肴を食べる。 ■平叙文 文末の多くが終止形  例:立派な人になる(断定) なるらしい(推定) なりたい(希望・願望) なろう(意思) ■副詞 状態の副詞(物事の様子を明らかにする)  例:上司に「また」怒られた。 カラスが「しきりに」鳴く。  副詞 程度の副詞(物事の性質・状態等の程度を示す)  例:彼は「ずいぶん」辛抱したね。 井上は「かなり」短気だ。 ■接続詞 文節・文を接続する単語  順接(だから、ゆえに、すると、) 逆接(ところが、しかし、)  並列(そして、および、また、)  選択(それとも、または、) 説明(つまり、ただし、) ■助動詞 せる させる れる られる  例:文章を書か「せる」 子供を来「させる」 先生に注意さ「れる」 罰せ「られる」 ■助詞 体言・用言等の語に付いて、色々な関係を示したり、意味を添える単語  「が」 が付いた文節は主語  例:法律「が」得意だ。 我慢するの「が」良い。  「の」  〃  連体修飾語  例:枯葉「の」季節。 私だけ「の」もの。  「や」  〃    並立語  例:刑法「や」民法を習う。  「を」  〃  連用修飾語      方向    動作・作用の方向を示す  例:後ろ「を」見る。      対象    動作・作用の対象・目的を示す  例:酒「を」飲む。      起点    動作・作用の起点を示す  例:会社「を」出る。      場所・時間 経過場所・時間を示す   例:家の前「を」通る。一日「を」過ごす。  「に」 場所    動作・作用の場所を示す  例:新橋「に」集合する。      目的    動作の目的を示す     例:受験「に」行く。      時間    動作・作用の時間を示す  例:午後七時「に」行く。      帰着点   動作の帰着点を示す    例:慶應大学「に」着く。      状態    動作・作用の状態を示す  例:ケーキを半分「に」分ける。      対象    動作・作用の対象を示す  例:彼「に」一任しよう。      結果    動作・作用の結果を示す  例:全てが無「に」なる。      比較基準  比較基準になるものを示す 例:親「に」似て、子供も勉強家だ。      添加    付加える意味を示す    例:鬼「に」金棒。  「へ」 帰着点   動作の帰着点を示す    例:ようやく故郷「へ」着いた。      方向    動作の方向を示す     例:渋谷「へ」出かける。  「と」 対象    動作・作用の相手     例:仲間「と」議論をする。      共同    動作・作用を共にする   例:同僚「と」研究をする。  「から」起点    動作・作用の起点を示す  例:明日「から」やる。  「より」比較基準  比較基準を示す      例:兄「より」凄い。  「で」 手段・材料 (〜によって)      例:新しいの「で」作ろう。      場所    動作・作用の場所を示す  例:図書館「で」勉強する。      原因・理由 動作・作用の原因・理由  例:台風「で」川が氾濫する。      時限    時間・期間を限る     例:明日の17時「で」締め切る。  その他  「〜『ば』、〜」 「〜『と』、〜」 「〜『し』、〜」 「〜『が』、〜」 「〜『て』、〜」  「〜『でも』〜」 「〜『しか』〜」 「〜『など』〜」 「〜『まで』〜」 「〜『ほど』〜」
文章表現、構成 伝わりやすい文章表現 一、文は短く、簡潔に   一文は50字以内に。 一文に一事項。 主語と述語は近づける。 二、語順・読点に注意、読みやすく   修飾語の配置順に注意。 読点は適切に。 複数の解釈ができる文章は書かない。 三、無駄を省き、リズムよく   不要な接続詞は省く。 文末の無駄「のである」等を取る。 同語句の繰返しは避ける。 四、易しい表現で、柔らかく   易しい表現を使う。 用語は統一する。 専門用語(テクニカル・ターム)は解説する。 五、伝えたいことを簡潔に   概要をつける。 まず、結論を簡潔に。 六、情報を整理して、理解しやすく   一つの段落に一つの話題。 箇条書きを活用する。 七、具体的に、正確に伝える   具体的に書く。 「〜的」「〜性」は明確に表現する。  八、事実と意見は分けて、明快に   事実と意見は書き分ける。 「思われる」等を取り、言い切る。 能動態で書く。
文章の構成法 一、前書き → 本論 → 結論 二、前書き → 結論 → 本論 三、前書き → 本論 → 展開 → 結論
文章作成の進め方 一、方針決定   主題、目的、読み手等を明確にして、文章の方針を決める。 二、項目の洗い出し   伝えたい内容に関係する項目を洗い出し、箇条書きにする。 三、文章構成の決定   洗い出した項目を分類し、順序付け・階層化をして、アウトラインを作成する。必要に応じて、   目次も作成する。 四、原稿書き   アウトラインの各項目について、段落を設定しながら原稿を書く。文章表現、用字・用語の使   い方に注意する。 五、編集   様式(フォーマット)を決める。図表・イラストを作成する。原稿・図表等を割り付ける。 六、推敲   読み直す。不明確・冗長な箇所を修正する。論理性・完全性等を吟味する。
典型的な法律論文のアウトライン T 問題提起   (問題の所在:何故この論点を検討する意義・必要があるのか。)  (この間に、身近な事例があれば挿入しましょう。) U 学会、判例における、当該論点に関する論点の現状   (争点、立場、論拠、論者、優劣) V 自説の展開   (理由と結論) W 今後の課題   (残された問題など) X 注記 Y 参考文献一覧                          以上 具体例 参考文献 『卒業論文の手引(新版)』(慶應義塾大学出版会)、他