テニス肘

ー Tennis Elbow ー


はじめに

毎日のようにテニスをされている方は、一度は経験されたことがあるでしょう”肘の痛み(テニス肘)”について述べましょう。
100年以上前から現代に至るまで、ラケット等の改良にもかかわらず、テニスプレーヤーを悩まし続けています。
筋力の低下、筋・腱の柔軟性のなくなった中高年のプレーヤーが利き腕を使い過ぎて起こるもので、とくに初心者はラケットの中心でポールをとらえないので衝撃が強く、テニス肘を発生し易いものです。

テニス肘には、フォアハンドテニス肘と呼ばれる上腕骨内上顆炎(内側型)とパックハンドテニス肘と呼ばれる上腕骨外上顆炎(外側型)の2つがあります。
多いのは、外側型で、初めはパックハンドでポールを打つと、肘の外側に痛みを生じます。しかし次第にフォアハンドのストロークでも痛むようになり、症状が進むとラケットを持つだけで痛んだりタオルをしぼるとか、物を持つことが苦痛となり、日常生活にも支障をきたします。この時点で、診察に来られるケースが多いようです。ほとんどは外側型です。上級者は内側型が多いようです。


テニス肘の原因と病態

テニス肘が内側よりも外側に多い原因の一つとして,前腕伸筋群と屈筋群の筋力の差があります。伸筋群の筋力が屈筋群の筋力よりも弱いため、バックハンドストロークならば伸筋群に負荷がかかり、インパクト時の衝撃が繰り返されることが発生原因と考えられています。
テニス肘は使いすぎに一因がありますが、これのみで発生するものではく、年齢の要因が強く、加齢に伴う退行変性が起こってくる40歳代が好発年齢です。スポーツをしていない、日常の家事の仕事をしている主婦にも多くみられます。
上腕骨の下端で、肘関節面近くの骨が隆起している部分に前腕筋肉群の腱・靱帯が付着します。内側と外側があり、この部分を上腕骨内上顆及び外上顆といいます。従って、この部分の炎症をそれぞれ上腕骨内上顆炎、上腕骨外上顆炎といいます。これが一般的な診断名となります。この付着部骨膜や筋腱に顕微鏡的な微小断裂が起こり、その結果変性を伴う炎症を来すわけです。

練習量が多ければ、当然発生頻度が高くなり、毎日プレーする人の約半数近くは肘痛が発生しています。1日2時間以上のプレーはそれ以下の練習量に比べ,テニス肘の危険率は3.5倍との報告もあります。
初心者ではバックハンドストロークで、手首を使う、身体の移動が不十分である、インパクトの瞬間の筋力の収縮がわるく、筋肉に負荷が多くかかるような打ち方をしている、その他ラケットが重すぎる、グリップが太すぎる,ガットの張力が強すぎるなども発生要因となります。

テニス肘は、骨折や捻挫と異なって、その発症は必ずしも急性ではなく、気が付いたらかなりの疼痛が感じられものが多く、バックハンドストロークをはじめ、サービス、スマッシュ等で疼痛が強く感じられます。日常生活でも、前腕を回内し、力を入れる動作(お茶をつぐ、タオルをしぼる、アイロンをかける、肘関節伸展位で手掌で椅子の背を持ち上げる等々)で痛みを感じます。


予防と対策(治療)

  予防は、ウォームアップとクールダウンを十分におこなう、使い過ぎに注意する、自分に合ったラケットを使う、正しい指導を受け、正しいフォームを身につける、ラケットの中心でポールをとらえる、そのためにはポールについていくフットワークの訓練を行う、などです。

用具の選択も重要で、グリップの太さは、握った状態で、指先と母指球のあいだに1本の指がはいるくらいが適当のようです。また、ガットの張力、ラケットの重さなど,自分に合った用具を使用することです。
フォームも重要です。正しいフォームに出来るだけ近づけましょう。

急性期の疼痛の強い時期は、局所を安静にし、肘関節,手関節の屈伸を最小限に抑えます。しかし、長期間の安静や固定は逆効果で、過度な固定(ギプス等)は好ましくなく、筋萎縮をきたし、回復を遅らせる可能性が大です。また、冷却法がよく、氷によるアイスマッサージは、肘使用後の疼痛緩和には有効です。
その程度に応じて、バックハンド(またはフォアハンド)みを禁止する程度から、テニスそのものを禁止する場合もあります。

たとえ初期でも、可能な限り、運動療法を早期から開始することが基本です(あまり痛くない程度に、動かしながら治す)。
慢性期には損傷の修復、筋力の回復、節萎縮の防止のため、積極的な温熱療法(ホットパック、超音波、極超短波など)が適応となり、痛みがとれてさたら、運動療法を開始します。マッサージも有効です。

運動療法は、筋肉や腱を十分に伸ばすようにするストレッチと、筋力の回復・強化を目指す筋力トレーニングの2種類が行われます。

伸筋のストレッチ及び筋力強化運動屈筋のストレッチ及び筋力強化運動
肘を伸ばし十分ストレッチ

肘を曲げた状態で同様にストレッチ
2Kg前後の鉄アレイ
ゆっくり持ち上げる

20回を1セット
1日3セット

ストレッチは毎日行うように心がけましょう。転倒等に際しての骨折や捻挫の予防にもなります。
発症後1週間前後で、手首を反らしたり曲げた状態で、手を強く握る運動(前腕の筋肉の強化)を開始(最初は最大筋力の1/3位から)、その後徐々に運動負荷をかけていく。

アニメは鉄アレイを使った筋肉強化運動の一例です。
前腕以外にも、ダンベルを用いる肩・肘・手関節の柔軟運動、例えば上肢の振子運動等を行う。

テニス肘用バンドは有効で、筋肉の起始部(顆部)よりやや遠位側を押えて,筋の収縮時の負荷がかからないようにしたものです。伸縮性のない布製のもので,暗3−4cmのものがよいとされています。あまり深く締めすぎないように、正しい位置に注意します。圧痛点を押えるのではなく,その遠位の筋腹を押えるようにします。


追記

  テニスによる肘の障害の中には、テニス肘以外に、後方の肘頭,上腕三頭節付着部に痛みのあるものもあります。いずれにしても、テニスのしすぎ、すなわち、使いすぎによるものです。

また、変形性関節症、離断性骨軟骨炎、遊離体形成(”ねずみ”)、石灰沈着性腱炎などの鑑別が必要です。頚椎症による上肢の症状もありますので、一度は診察を受けるようにしましょう。


このページOpen:1997/05/17
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