音程(本郷亮)

1-1  理論は言葉

「理論」と上手につきあう
■ 今まで、「理論を学んでもギターは上達せんぞ、アホタレ」という御批判をたくさん頂いた。実は私も「そりゃそうだろう」と思っている(笑)。しかし基礎的な理論を知らなければ、実際、仲間との会話すら不便である。ひょっとすると、ピアニスト等との仕事の打ち合わせで相手に迷惑をかけるかもしれない。
 理論は法律ではない。音楽理論とか音楽法則とか呼ばれているものは、けっして「厳密な論理の体系」でなく、むしろ;
    会話のための語学、ヒントをくれるアイデアの源、バンド・マスターとしてバンドを率いるための素養
 といった実用知識群にすぎない。それはせいぜい、無難に演奏するための定番ルール(慣習)にすぎず、厳密なものでなく、本当に例外だらけである。意外といい加減なものなのである。
 よく「** の音は使っていいの」「** とリハモしていいの」等の質問が寄せられるが、例えば、アボイド・ノートのように「理論上は使えないはずの音が、実際に使ってみると心地よい」というのは日常茶飯事である。この場合、その音は使ってよいのだ。理論は法律ではないのだから。

経験を積まないと、実感として納得できないような理論もある。また、理論を学んだからといって、すぐに演奏に変化が現れたり、上達したりするわけでもない。理論と実戦とが結合するには、それなりに年季が要る。
 なお、世の中には「バップ」「モード」「リディアン・クロマティック・アプローチ」等々の様々な理論的党派があるけれども、役立ちそうなネタは、どれでも自由につまみ食いすればよかろう。党派心にとらわれる必要はないのだ。

 さて、音程(interval)は、音階論、和音論などのあらゆる分野の基礎だ。
 1オクターブは12の半音から成るが、基準音を設定し、そこからの距離に基づいて、音に名前(相対名称)を付けていくのが音程論である。
 音程は「度」と「響き」の2つを組合わせ表現する

度(degree)

 基準音が「ド」なら、「ド」は1度、「レ」は2度、「ミ」は3度...。8度(ド)で1オクターブである。「度」は数字で示す

響き

 「響き」には右表の5種類があり、組合わす「度」はそれぞれ例外なく定まっている。
    @ ゆえに「完全2度」とか「長5度」という表現は絶対にない
    A 「響き」は P, M, m, + ,- の5種
    B ここまで読んでわからなくても大丈夫、下の具体例でわかるよ!
響き略号 組合わす度
完全(perfect)音程 P1.4.5度のみ
長(major)音程
短(minor)音程
M
m
2.3.6.7度のみ
増(augment)音程
減(diminish)音程
aug, +
dim, -
どれでもOK

 

具体例

 「度」と「響き」を組合わせ、実際に使ってみよう。特に「異名同音程」は完全に理解されたい
 ここじゃ最低限の基礎しか扱っていないので、1ヶ所でもわからないならお先真っ暗だ。気合いを入れよ!

例1

    ドを基準とすれば、以下の音との音程は
    レbミbファソb ラbシbレbミb
    P1m2M2m3M3P4-5P5m6M6m7M7P8m9M9 m10

    ■ 記号の読み方は、 P1(完全1度)、m2(短2度)、-5(減5度)、M7(長7度)、等々。
    ■ ポイントは「 +, - 」の使い方。上図で言えば、「 + 」が付くと1つ右へ移動する。例えば +5 (増5度) は、「P5」から1つ上がればいいので、 m6 (短6度) と同じ音程である。
     このように同じ音程でも、表現方法は複数あるのだ(異名同音程)。。
    ■ 注意せよ! 1, 4, 5度には「P」の1種類しかないので、(例えば5度の場合なら) +, - が付けば「P5」を基準として1つ上げるか1つ下げるかすればよい。それゆえ、低い方から並べると「 -5, P5, +5 」となる。これは簡単だ。
     しかし、2, 3, 6, 7度には「m」と「M」との2種類がある。そして(例えば2度の場合なら) - がつくと「m2」からさらに1つ下がり、+ がつくと「M2」からさらに1つ上がる。それゆえ低い方から並べると「 -2, m2, M2, +2 」となる

     上図で言えば、「-2」とは「P1」のことであり、「+2」とは「m3」のことである。

例2  慣れよう!

     ギターでは、音程は上図(M9 以降は省略)のように指盤の位置関係で覚えねば、実戦上、全く役に立たない。

    ■ 上の指盤図から、ブルースやロックでよく使う「ペンタトニック・スケール」は、「P1, m3, P4, P5, m7, P8」と表現できる
    ■ 同様に、小学生でも知っているドレミ、すなわち「Cメージャ・スケール」は、
     P1 を「C」の音にして、「P1, M2, M3, P4, P5, M6, M7, P8」である
    ■ P1 を「A」の音にすれば、「Aマイナー・スケール」は、「P1, M2, m3, P4, P5, m6, m7, P8」である
    ■ 同じく P1 を「A」にとれば、「Aハーモニック・マイナー・スケール」は、「P1, M2, m3, P4, P5, m6, M7, P8」である。さっきの「Aマイナー・スケール」とは「7度の音」が異なるだけだね。
     音階をこのように音程で示せないと、各種スケールを学ぶ時につまずく
    ■ P1 を「C」にとれば、「CMaj7」のコードトーンである「ド・ミ・ソ・シ」は、「P1, M3, P5, M7」である。
     コードトーンをこのように音程で示せないと、和声論でつまずく

    どうかな、慣れたかな? 何とかして慣れてくれ〜〜!

 

例3  異名同音程 (重要!)

 異名同音程を挙げるので、1つ1つ、「EX1表」で確認せよ。完全に理解すべし

 [P1=-2], [m2=+1], [+2=m3], [-4=M3], [+3=P4], [+4=-5], [-6=P5], [+5=m6], [+6=m7], [-7=M6], [+7=P8] 等々

 右は Classic ギターの巨匠アンドレ・セゴビア (Andres Segovia 1893-1987) の名盤CD。1927-1939年の彼の全曲が収録されている。当時使われたのはガット (gut) 弦で、羊の腸から作られるため羊腸弦とも言う。クラシックギターをしばしば「ガットギター」と呼ぶのはその名残りだ。ガット弦は、高価な上に、温度や湿度に影響されやすく、それゆえピッチ(チューニング)が不安定なので、今ではナイロン弦が主流だが、バイオリン等では今でも密かに人気がある。ナイロン弦の普及は1950年代以降である。
 彼は20世紀のクラシックギターを代表する1人であり、スペイン王室から公爵の称号を授けられて貴族になったが、驚くなかれ、ギターは独学だ !! セゴビアが、あの「大聖堂」を作曲したパラグアイのギター奏者バリオス・マンゴレ (A.Barrios Mangore, 1885-1944) を「ミーハー野郎」だと嫌っていたのは有名な話
 

例4  5線譜で示すと...(これは知らなくてもいい)


コード名の罠

■ 「C7」というコードは、「C」コードに「m7」を加えろという意味。実はコード表記では「m7」の事を、単に「7」と書く慣習がある(慣習なので覚えるしかない)。だから、「Cm7」というコードは、「Cm」コードに「m7」を加えるのであって、「C」コードに「m7」を加えるのではない

■ ところがややこしいことに、6度では「6」とは「M6」の事なのだ! つまり C7 の「7」は m7 ですが、C6 の「6」は M6 なのだ!! 要するに、6度と7度では逆なのです。「なぜ」と尋ねられても困る。この慣習は世界共通なのでおとなしく覚えるしかない(涙)
 例えば、下は「C7」と「C6」のそれぞれのコード・フォーム。前者のフォームには「m7」が含まれ、後者には「M6」が含まれる

(3)   (3)


 
ローマ数字表記 (=コード進行の相対表現)

■ ジャズでよくやるコードのローマ数字表記は長音階の度数に基づく。例えば (キーが C で)「C - Dm - Em - F」なら「I - IIm - IIIm - IV」、また「C - Am - Dm - G7」なら「I - VIm - IIm - V7」という風に書く。蛇足ながら、アラビア数字の「1,2,3,4,5,6,7」は、ローマ数字では「I, II, III, IV, V, VI, VII」ですよ (常識)。下の「例5」に具体例をじっくり見て下さい

短調の曲をローマ数字表記するには注意が必要。短音階は、長音階の3度・6度・7度にそれぞれ「b」を付けないといけない。ゆえに (キーが Cm で)「Cm - Dm7-5 - Eb - Fm」なら、「Im - IIm7-5 - IIIb - IVm」となる。
 一般に転調時や短調曲ではローマ数字に「b」や「#」が付く。コード進行をローマ数字で把握すると、ルートの動きが指盤上の相対的位置関係で理解でき、便利である。ちなみにジャズ奏者は移調に備えて、コード進行をローマ数字で覚えていると言われるが、実際のところ、そんな頭のいいヤツはあまりいないので、安心して欲しい(笑)。ちなみに移調作業 (例えば『枯葉』を Gm調でなく Em調でするために、コード譜を書き直す作業) は「3分あれば1曲できる」という程度で十分
 

例5 コード進行の相対発想の利点

 新しい課題曲に挑戦するなら、コード進行をいったんローマ数字化してみるのは有益だろう。というのも、コード進行を相対的に見ると、「あっ、この曲のコード進行は、昔やったあの曲のコード進行と似てるじゃないか〜!」てな発見がよくあるからさ。後のページで詳述するように、ジャズのソロはコード進行と密接な関係がある。ローマ数字でコード進行が同じなら、同じフレーズが使える (むろんキーを考慮せねばならないが...)。つまり課題曲が与えられた時、コード進行をいったんローマ数字化して考える癖があれば、過去のストックを利用できるので課題曲を効率的に消化できるし、1つのフレーズを様々な曲に応用できる道も開く
 『How High the Moon』(Key in G)    -->  どんなキーにも対応できる「相対表記」では

|   G   |   "   | Gm |  C7 |    |   I     |   "    | Im |  IV7 |
|   F   |   "   | Fm | Bb7 |    |   VII    |   "    | VIIm | IIIb7 |
|   Eb  | Am7-5 D7 | Gm | C7 |    |   VIb    | IIm7-5 V7 | Im | IV7 |
|  Bm7-5 |   E7  | Am | D7 |    |  IIIm7-5  |  VI7   | IIm | V7  |

|   G   |   "   | Gm |  C7 |    |   I     |   "    | Im |  IV7 | 
|   F   |   "   | Fm | Bb7 |    |   VII    |   "    | VIIm | IIIb7 |
|   Eb  | Am7-5 D7 | G  | C  |    |   VIb   | IIm7-5 V7 | I  | IV  |
| Bm7-5 E7 | Am   D7 | G  | "  |    | IIIm7-5 VI7 | IIm   V7 | I  | "   |
    <初心者は読み飛ばすべし>  ただし上の作業を行うなら、右図 (=相対化された 5度円)を知っているべきだろう。「II - V- I」とくれば、誰だって俗に言う「ツー・ファイブ・ワン」だと気付くが、「IIIb - VIb - IIb」でもやはり「ツー・ファイブ・ワン」と気付かねば、コード進行をわざわざローマ化数字化する意味がない !! まあ、頭の体操と思って右図を眺めよ。覚えても即戦力にはならぬので、急いで覚える必要はないが、長期的には (笑) 有益だ
前半の演奏例
  4つ刻みのバッキングでは、コードを全部鳴らすとうるさすぎるので、(i) 低音弦を使わないようにしたり、(ii) 音を省略するなどしてサウンドを淡泊にせよ。ピアノやベースがいる場合、こうした配慮は不可欠
     (5)"(5) (6) (5) (2)
    (3)(3) (3) (3)(6) (6)
    (8)(7) (10)(10)(8) (8)
    (7) (6) (6)(7) (6)(5)

    -----------7------10-6----------5------8-4--------------5---5-6--5---5-6---1弦
    ---8-10-10------8---------6-8-8------6----------6-8~~~~----8--------8-
    -7------------7---------5----------5--------7-8------------------------3弦

    -5-7-8-10~~~---10-8-7-----------------14-10----10------------1弦
    ---------------------10-8------------------12----12----12-
    -2-4-5-7~~~~---------------8-7-----------------------11-
    -------------------------------10-9----------------------6弦


 
  参考データー: 「21世紀に残したいJazzギター名盤」(Swing Journal誌, May 2000, アンケート結果より)
    アーチスト名をクリックすると、Amazon.co.jp の商品紹介ページにてさらに詳しい情報・評価を知ることができます。
    1位: ウエス・モンゴメリ 『フルハウス』(左写真)
    2位: チャーリー・クリスチャン 『ミントンハウス』
    3位: ウエス・モンゴメリ『インクレディブル・ジャズギター』
    4位: ジョー・パス 『ヴァーチュオーゾ』(中写真)
    5位: ジム・ホール 『イン・ベルリン (It's nice to be with you)』
   いずれもジャズギターを知る上で是非聴いてほしい名盤ばかり。このほかに、ジム・ホールとビル・エバンス (p) のデュオ『アンダー・カレント』や、ジム・ホールとロン・カーター (b) のデュオ『アローン・ツゥギャザー』、ジム・ホールとポール・デスモンド (as) の『ボッサ・アンティグア』、またジョー・パスの『フォー・ジャンゴ』(右写真) なども是非勧めたい
     近年では、一昔前にはなかったような便利なジャズギター教則本(CD付きタブ譜本も含む)もある。それらを利用すれば効率的に上達するであろう。ただし、当たり前のことだが、良い本を選ぶこと。
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