ダイアトニックと5度円(本郷亮)

2-2  ギターを弾く前に手を洗おう

ダイアトニック・コード(スケール・トーン・コード)

■ あるスケールが与えられると、それに対応する基本的な7つのコード(これらをまとめてダイアトニック・コードという。以下 DC と略す)が存在する。例えば、もしスケールが「ドレミファソラシド」(ハ長調= C メジャー・スケール)だとすれば、そこに登場する音をそれぞれルートにして、3度積みすれば、下図のような「ドミソ」「レファラ」「ミソシ」....という7つのコードを抽出できるよね。このいわば「仲良し7人組」のコード群が、DC である。

■ スケールの音から導かれるので、DC はスケール・トーン・コードとも呼ばれる。この名前の方が判りやすいかもしれない。ちなみにビートルズの 名曲『Let It Be』(Key in C)では、C、G、Am、F などのコードが登場するが、これらはどれも DC だ(このように、DC を知っていると、曲のコードを耳で探すときに便利)。
 ちなみに、DC 以外のコードが使われない曲では、多くの場合、単一のスケールだけでソロができる。
■ DC とは、あくまで「スケールに対応したコード群」のことだから、スケールが変われば当然 DC も変わる。以下では、「メジャー・スケールの DC」と「マイナー・スケールの DC」の2つを紹介する。ただしマイナー・スケールには自然的・旋律的・和声的の3種類があるので、DC も3種類ある。


#1  メジャー・スケールの DC

■ 上図のように DC は、「I」から「VII」までのローマ数字番号で表現される。これはジャズの理論を学ぶ上で不可欠なので慣れて欲しい。例えば、『Let It Be』の「C, G, Am, F」というコード進行は、「I, V, VIm, IV」と表記される。
 なお、ジャズでは、上のようなトライアッド(3和音)ではなく、下のようなテトラッド(4和音)が普通である。コード記号に登場する「△」は「Maj」のことだよ

    要暗記
    IMaj7、IIm7、IIIm7、IVMaj7、V7、VIm7、VIIm7-5

Ex 2-2-1  覚えるための基礎練習

    |  CMaj7  |  FMaj7  |  Bm7-5  |   Em7  |
    |   Am7   |   Dm7   |    G7   |  CMaj7 | 
    (8)  (8)  (7)  (7)  (7)  (10)  (10)  (8)

     コード進行に注目。「C メジャー・キー」を維持しつつ、コード・ルートが5度進行(5度下向=4度上向)する。このように音階外の音を一切使わない5度進行は「調性内5度進行」という。上を何度も繰り返しつつ、コードの度数 (上の場合なら、1, 4, 7, 3, 6, 2, 5, 1) をつぶやいて欲しい。
     上を覚えたら、同じ事を、4度上げて「F メジャー・キー」でやる。すなわち;

    |  FMaj7  |  BbMaj7  |  Em7-5  |   Am7  |
    |   Dm7   |   Gm7   |    C7   |  FMaj7 | 
    (8)  (6)  (7)  (5)  (5)  (5)  (8)  (8)
 

コードの機能 (function)
 さて DC の各コードにはそれぞれ機能 があり、機能には「トニック (T)」「サブドミナント (SD)」「ドミナント (D)」がある
 例えば、「CMaj7」というコードが登場したとする。キーが「C メジャー」なら、このコードは「IMaj7」であるが、キーが「G メジャー」なら、このコードは「IVMaj7」である。すなわち、同じコードでも、それが何のキーで登場したかによって機能は異なるわけだ。
トニックサブドミナントドミナント
CMaj7、Em7、Am7、Dm7、FMaj7、G7、Bm7-5
IMaj7、IIIm7、VIm7、IIm7、IVMaj7、V7、VIIm7-5

 同じ機能のコード同士は互いに代理できる可能性が高い(曲をアレンジする際によく使う手法)。上表は、DC を機能別に分類したものです。暗記する必要はないが、覚えておくと便利。

対応スケールとアボイド・ノート

 DC の各コードに対応するスケール(教会旋法)とアボイド・ノ-ト(使わぬ方が無難な音)をまとめておく。これは、「ダイアトニック・コード」「教会旋法」「コードの機能」の3つを総合したような話なので、理論の要点整理となろう。
    DC (Key in C)対応スケールアボイド・ノート
     I (C) I (C) アイオニアン 4度のファ
     IIm (Dm) II (D) ドリアン 6度のシ
     IIIm (Em) III (E) フリジアン 2度のファ
     IV (F) IV (F) リディアン なし
     V7 (G7) V7 (G) ミクソリディアン 4度のド
     VIm (Am) VI (A) エオリアン 6度のファ
     VIIm7-5 (Bm7-5) VII (B) ロクリアン 2度のド
  アボイド・ノートを覚えるコツがある。すなわちコードの機能に着目する
 「I, IIIm, VIm」では「ファ
    つまりトニック(T) のアボイドは、常に I アイオニアンの4度音「ファ」
 「V7, VIIm7-5」では「
    つまりドミナント(D) のアボイドは、常に I アイオニアンの1度音「ド」。なぜならドミナントはその不安定感(安定的なトニックに向かう力をもつ)が持ち味なのに、その時に最も解決感の強い I アイオニアンの1度音「ド」が鳴ると不都合
 「IIm」は「」、「IV」はなし
    サブ・ドミナント(SD) は変則だ。IV リディアンにアボイドが無いのは有名だからまあ良いとして、II ドリアンのアボイドは I アイオニアンの7度音「シ」と暗記するしかない
 


Ex 2-2-2  必須

     「D メジャー・キー」の DC を分散和音(アルペジオ)で弾く。できればスイープ・ピッキングで。1弦はハンマリング&プリングでOK。これはハードロックでよくやる定番の基礎練習なのだが、ジャズではあまり速く弾く必要はない。むしろ「気持ち良さ」、つまり正確さリズム感を大切に。例えば、1つめなら 、2つめなら
     

    -----------2-5-2-----1弦
    ---------3-------3-
    -------2-----------2-
    -----4---------------4-
    ---5-------------------5-
    -5-----------------------5---6弦

    -----------3-7-3-
    ---------5-------5-
    -------4-----------4-
    -----5---------------5-
    ---7-------------------7-
    -7-----------------------7-

    -----------5-9-5-
    ---------7-------7-
    -------6-----------6-
    -----7---------------7-
    ---9-------------------9-
    -9-----------------------9-

    ------------7-10-7-
    ----------8--------8-
    --------7------------7-
    ------9----------------9-
    ---10--------------------10-
    -10------------------------10-

    以上がそれぞれ、D, Em, F#m, G のアルペジオ

    --------------9-12-9-
    -----------10--------10-
    ---------9--------------9-
    ------11------------------11-
    ---12-----------------------12-
    -12---------------------------12-

    ---------------10-14-10-
    ------------12----------12-
    ---------11----------------11-
    ------12---------------------12-
    ---14--------------------------14-
    -14------------------------------14-

    --------------12-15-12-
    -----------14----------14-
    ---------12---------------12-
    ------14--------------------14-
    ---16--------------------------16-
    -15-------------------------------15-

    以上が、A7, Bm, C#m7-5


#2  マイナースケールの DC

 短調(短音階)には自然的、和声的、旋律的の3種類があるので、DC もそれぞれ3種類ある。ただしこれら3つを丸暗記する必要はない。試しに弾いてみて、役立ちそうなら覚えて下さい。
    @  自然的短音階(A エオリアン)の構成音は「C メジャースケール」と同じなので、当然 DC も全く同じ !
    Am7、Bm7-5、CMaj7、Dm7、Em7、FMaj7、G7

    A  和声的(ハーモニック)短音階
    AmM7、Bm7-5、CM7+5、Dm7、E7、FMaj7、G#dim

    B  旋律的(メロディック)短音階
    AmM7、Bm7、CM7+5、D7、E7、F#m7-5、G#m7-5

 

Ex 2-2-3  メロディック・マイナーからのコード・フォーム導出

 教会旋法からは、3度積みによって DC を導出したり、あるいは4度積みによって「4度推積版 DC」を導出したりできる(これらを便宜的に「教会旋法から導かれるコード群」と呼ぼう)。これと全く同じ発想・同じ方法で、メロディック・マイナー・スケールからも様々なコード群を導出できよう。教会旋法から導かれるコードはいずれも、教会旋法に登場する音しか用いない。だから、これらを使ってコード・ソロを行うと、いくら工夫してもなかなかジャズ独特の「アウトした感じ」が出ない。ここでメロディック・マイナー・スケール(第7音からスタートすればオルタード・スケール)の出番となる。メロディック・マイナーは、アウトする音を含んでいるので、「メロディック・マイナーから導かれるコード群」を用いれば、アウト感のあるコード・ソロが可能であることは容易に推測できよう。
 ただし、厳密な3度積み、4度積みでは、押さえるのが困難なフォームになることもあるので、その場合は適当にフォームを変えればよい(でも、スケールに含まれない音を入れてはダメ)。私は、E メロディック・マイナーを前提にし、次のようなコード群を導いてみた。コードを弾くついでに、その周辺でスケールを弾く練習もすべし。アイデアの正体は、才能ではなく、こういう地道な考察です。
    IIIIIIIVVVIVII
     (2) (4) (5) (7) (9) (11) (13)
     (7) (9) (10) (12) (2) (4) (6)
下図がメロディック・マイナー・スケール。上のコード群にとらわれず、自分でも自由にコード群を考えてみてね。

#3  5度円 (Circle of fifth) の活用

キーの判別  5度円を覚えていると、メチャメチャ簡単に5線譜から調 (key) を見分けられる。5線譜に「b」も「#」も付いてなきゃ「C Major (ハ長調)」だよね。「b」が1個だと、「C」から1つ左の「F」すなわち「F Major (へ長調)」となり、逆に「#」が1個なら、右へ進んで「G Major (ト長調)」。このように「C」を中心に、「b」と「#」の数だけ、それぞれ左と右に進めば、調を判別できる。だから、右図のように「#」が4つなら「E Major (ホ長調)」、「b」が3つなら「Eb Major (変ホ長調)」てな具合である。
 「b」や「#」がたくさん付く曲は演奏者泣かせなので、実際、ジャズでは「C」からあまり遠くないキーが多い。50〜60年代のマイルス黄金時代を支えたピアニスト、R.ガーランドなどは、「b が3つ以上付くと、弾けない」という噂さえある(笑)。もちろん「C Major(ハ長調)」は「A Minor(イ短調)」かもしれないが、判別には、曲最後のコードが「C」か「Am」かを見るのが常識的。

裏コード  7thコードは、5度円のちょうど反対側の 7thコードで代理できる。いわゆる「裏コード」だ。例えば、「C7」の裏は「F#7」だし、「F7」の裏は「B7」である。

(3)  (4)
 7thコードの構成音は、「P1, M3, P5, m7」の4つ。この中の「M3」と「m7」の間の音程(増4度)は「トライトーン」と呼ばれ、クラシックで「悪魔の音程」と呼ばれているほどの不安定感をもつ。7thコードの特徴は、このトライトーンによる不安定感にある。上左の「G7」なら赤丸2つがトライトーン。実は、同じトライトーンを持つ 7thコード同士は代理できる
 では「G7」と同じトライトーンをもつ 7thコードとは何だろう? それは上右の「Db7」だ。「G7」と「Db7」は、赤丸で示したトライトーンが完全一致している点に注目せよ。「G7」の裏コードは「Db7」なのだ。5度円でも確認せよ。

 そしてここが重要だ! 1つおきにこの代理を使い、5度円を書き改めると「5度進行」は「半音下向進行」に変換される。この「裏コード代理による半音下降への変換」は、ジャズでは頻繁に用いられるので、覚えておけば絶対役に立つ。
 例えば、5度円を「E」から始めれば、E - A - D - G - C - F - Bb - Eb - Ab ...だよね。これを、1つおきに、裏コードへ代理する。すなわち以下の ( ) 部分にそれぞれの裏コードを入れると、どう? 半音下降の出来上がり

    E - (  ) - D - (  ) - C - (  ) - Bb - (  ) - Ab ...
    E - (Eb) - D - (C#) - C - ( B ) - Bb - ( A ) - Ab...
 下は『枯葉』前半のコード進行だ。動きもほぼ完全な5度進行でしょ ? ここに登場する7thコードに裏代理を適用すると、やっぱり半音下向進行になる。
    Cm7 - F7 - BbM7 - EbM7 - Am7-5 - D7 - Gm...
    Cm7 - ( B7 ) - BbM7 - EbM7 - Am7-5 - ( Ab7 ) - Gm

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