リズム(本郷亮)

3-5  リハーサルではPAさんに敬語を使おう

■ 高級レストランなどでしばしばピアノの生演奏が聴けるが、演奏者はクラシック系ピアニストであることが大半である。そして彼らがジャズを弾くと、1拍目に強拍を置くので、な感じがする。クラシックでは1拍目つまり「小節の頭」を強くするのが基本であるが、ジャズでは1拍目を強めちゃダメである。ジャズのリズム、すなわちスイングでは、「1・2・3・4」という4ビートの、「2」と「4」に強拍が必要だ(アフター・ビート)。
■ジャズとロックとを比べると、アフター・ビートという点では同じだが、ジャズの4ビートはしばしば「(小節線を越えて回転するような)丸いリズム」と呼ばれるのに対し、ロックの8ビートは「(小節内にカチッと収まる)四角いリズム」と呼ばれることもある。まあ、呼び方は色々あろうが、とにかくスイングはジャズ固有の特徴の1つである。
■ スイングにこそ、ジャズの本質があると言っても過言でない。確かに、聴衆の興奮はリズムに依存するところ大である。スイング感さえ力強く出ていれば、メロディーなんて多少ミスしても、聴衆は十分に楽しんでくれよう。

Ex 3-5-1  ベースを真似る

「スイング」を学ぶための最も効率的な方法の1つは、ジャズ・ベースを真似ることだ、と私は断言する。下は「F-Blues」のベース・ラインの具体例だが、ギターでは3-6 弦だけでで弾くこと。

@スイング感を出して弾くこと。4ビート、すなわち「1小節=4音」という基本的状況の中で、ベーシストはスイングを作りだすのだ。
A2・4拍目は強く。1・3拍目は弱く。1拍目を強くすると、ドンドンドンドンと重い感じになってしまう。一般にジャズ・ベースでは、1拍目に必ずルート音を弾くのだが、ここにワナがある。どうしても1拍目に注意がいってしまい、無意識のうちに1拍目にアクセントが付いてしまうのだ。気をつけるべし。
Bジャズ・ベースは、コードに即しながら、非常に論理的に動く(1拍目に必ずルート音を弾くという風に)。それゆえベース・ラインがどのように作られるのかを理解すること。この知識は、後にコード・ウォーキングを学ぶ際に不可欠となろう。
Cなお、耳コピで、曲のコードを探す際、論理的に動くベース・ラインは最大の手がかりとなる。加えて、ダイアトニック・コード等の「知識」があれば、コードを探すのは格段に楽になろう。


    -------------------0-1------0-1-2-3-1-0-------0-------0-1-2-------------------0---------1-0-----------3弦
    -3---------0-1-2-3------0-3-------------4-3-4---2-3-3-------1-0-------------0---2-3-1-0-----0---4-3-
    ---0-3-2-1------------------------------------------------------0---0-1-2-3-------------------3-
    ------------------------------------------------------------------3-------------------------------6弦


    -10-8-7-6-5---1-0-----0-------------------------4-5-----6---9-7---0-----------0---------1-0-4-5-9-10---3弦
    ------------3-----3-4---2-3---------3-0-----0-3-----------0-----6---0-----------2-3-1-0-
    ----------------------------0-3-2-1-----1-2--------3-4----------------1-2-3-4-------------5弦

参考: もっとベースを知りたい人に(お勧めアルバム)

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■ ベース奏者のアルバムで、おそらく一番有名なのは、 Paul Chambers の『Bass on Top』だと思う。そのベース奏法は、派手さはないが、まさに古典的・正統的とも評されているので、ぜひ聴いてみて欲しい。ちなみに彼はソロでは、弓で弾くことが多い。
■ より現代的なベーシストの名盤としては、Ron Carter の『The Bass and I』(右写真)を私は勧めたい。彼は非常に先進的で、例えば、クラシック・ギターのトレモロのような奏法、ハーモニクス奏法など、ギター的手法を積極的に取入れている。また『Pastels』も秀作である。ちなみに、これら2枚のアルバムは『スイング・ジャーナル』誌推薦の Gold Disk でもある。
■ その他に、@「ソロでもないのに常にギター・ソロ状態」のベーシストであるスコット・ラファロ(ビル・エバンス・トリオのベーシスト)、Aソロになると信じられない早弾きをするベーシストとして、ニール・ペデルセン、も挙げておこう(笑)。興味があれば聴いて欲しい。
 

F-Bluesのテーマ

■ バップ的なフレージングおよびリズムに慣れるには、ブルースのテーマ練習も勧めたい。というか、よく演奏される曲なので「常識」として覚えておくべきかもしれぬが(笑)。
■ 特にチャーリー・パーカーの曲のテーマは、かなり勉強になるであろう。彼特有のクロマティックな動きや、意表を突くリズムのために、けっこうコピーが大変だが(昔、私も苦労した記憶がある)、それらを少し変えれば、フレーズ作りのアイデアになるのだ。

 Ex 3-5-2  Billie's Bounce (ビリーズ・バウンス) 

     (7) (6)(7)(8) (7)
    (6)"(10) (7) (4)
    (5)(2) (7) (10) (9) (8)

    ------5-6-7----------------------------6-7-3-5-3---3-5-3---4弦
    ---8--------8-5-8-5-8---8-5-8---8-5-8------------5-
    -8--------------------------------------------------6弦

    ------------8----10-8-10-------9---------8-----------3弦
    -6-8---6-8----10---------10----------------10-11-12-
    -----8---------------------------10-8-9--------------5弦

    -12-11------------10-10-9-9-7-7-----3弦
    -------12-8---------------------10-
    ------------10-----------------------8-5-8---8-5-8-5-8-5-8---5弦

     上を覚えて、それだけで満足してはいけない。1オクターブ上げて練習せよ。タブ譜は省略するので、ポジションや指使いは、弾きやすくて響きがいいように、自分なりに模索すべし。というのも、本番では、ブルースのテーマは最低でも2回繰り返す。そのとき2回目を1オクターブ上げるだけで、何となく盛り上がる感じがでるのだ
     次に Bb に移調せよ。というのも、ご存じのようにブルースでは、キーはたいてい「F」か「Bb」だから。「F」の曲で学んだネタを、「Bb」の曲で使えないのでは、全く不効率である。確かに、面倒くさい地道な練習ではあるが、いつかは、やらねばならぬ練習である。頭で分かっていても、なかなかできないかもしれないが(笑)。

 Ex 3-5-3  Au Privave (オ・プリヴァーヴ) 

    (8)  (6)(7)  (10) (9)
     (8)"(7)(5) (4)
     (3) (2) (1) (4)(3) (2)

    -------------------------------------------------------10-9---1弦
    -------------10-9-10-------8-------8-10-11-10-----8-
    -10-9-10-----------------9---10-9-------------10----8-
    ---------10----------10---------------------------------4弦

    -------13---------------------------8---------8-8---1弦
    -12-13----12-11------8-9----8---------10-11-8-
    -------------------------10---10---------------3弦

    -------------------------------------13----12-13---3弦
    -10-11-13-11-10--------------10---------13-
    ----------------12-10-9-10------12-----------5弦

 Ex 3-5-4  Straight, No Chaser (ストレート・ノーチェイサー)

     ここで紹介するセロニアス・モンクの『Straight, No Chaser』という曲のタイトルはシャレなのだ。「チェイサー」という英語は2つの意味をもつ。1つは酒を割る (ないし酒後の) 水の意。ゆえに「Straight, No Chaser」は、ストレートで飲むという意味をもつ。2つめはジャズの仕事で各ステージの最後を締めくくる短く軽快な曲 、これをチェイサーと呼び、その演奏中にフロントはメンバー紹介をしたり、「有り難うございました。次のステージは○時○分からで〜す」とアナウンスしたりする。『Straight, No Chaser』はモンクのチェイサー曲だった。チェイサーなのに「No Chaser」なんだな。

      管楽器が入ると超カッコイイです

    -------8-9-10--------8-9-10-11-9-------8-9-10-----8-9-10------8-9---2弦
    ----10------------10----------------10---------10----------10-
    -10------------10----------------10----------10----------10-----4弦

    -------8-9-10-11-9--------8-9-10-------8-9-10---2弦
    ----10-----------------10-----------10-
    -10------------------10-----------10-----4弦

    -------8-9-10-11-------------------7-8-9-10-11------8-9-10---2弦
    ----10----------------7-8-9-----10---------------10-
    -10--------------10-11-------------------------10-----4弦

 

メトロノームをめぐって

■ 上級者ほどリズムにはうるさい。昔、先輩に「メトロの音を2・4拍にとり、それに合わせカッティングしていれば、気持ちよ〜くなるものさ」という意味の事を言われ、当時「なるほど、そんなものか」と納得したものだが、それはさておき、たまにはメトロを用いて、自分のリズムの正確さをチェックすることは大切である。
 第1に、メトロに合わせて練習すると、たまにリズムがずれることがある。理由はたいてい、技術的ストレスのために 演奏に必死になり、メトロを聴かない瞬間があるからである。もっと楽器と「精神的距離」を置くべきだ。演奏中に自己世界に没入する者は、ある種の神憑りの状態にあるので、@周囲への注意力が散漫になり、A仕草に落ち着きがなく、頭や体が大きく動く傾向がある。むろんこの狂気には、芸術上、良い面もあるのだが、とはいえ通常においては、やはり冷静さが大切である。メトロをよく聴くこと!
 第2に、バンド・コンテスト等で、審査員が最も注目するのはリズムである。例えば想像せよ、テレビの生演奏でギターが少し間違えたって、決して致命的ではない、だがドラムが乱れたら、素人でもミスに気が付くのだ。
 第3に、例えば上級者に「144のテンポでスイング感を見失うようじゃ、まだまだだ」なんて言われても、メトロを使わない初心者には、この「144」という速度がわからない。しかも初心者は、速い曲でリズムを見失いやすく、「裏と表」がひっくり返り、そのまま回復できぬ者すらいるのである。この笑えない悲劇は、メトロを「2・4拍」で感じねばならぬのに、「1・3拍」で感じてしまうことで生じる。ギターを弾かずに、メトロの音だけを鳴らしながら、速いテンポでもスイング感を見失わないかどうかチェックして欲しい。貴方の限界の速さは、どれほどだろうか?

■ 貴方は、ドラマーがメトロの音に合わせて練習パッドをポコポコ叩いている光景、部室横の暗い廊下の隅で黙々とポコポコやっている基礎練習の光景、を見たことがあるだろうか? 「パッドの打音とメトロ音が完全に一致すると、メトロ音が消える。まあ5分は消えたままでないと、まだまだだぜ」と彼らは自慢する。残念ながらフルアコのカッティングでは、メトロの音は消えないが、ぜひ一度試して欲しい(むろんメトロは裏、つまり2, 4拍でとる)。カッティングとメトロとが完全に一致した瞬間、突然無重力になったような、表と裏がひっくり返るような、幻覚の世界に入るような、神秘体験ができるかも(笑)。


ポリリズム

フォー・ヴァース  フォー・ヴァースとは「4小節」という意味で、例えば、トランペットが4小節ソロしたら、次はドラムが4小節のソロ、すると再びトランペットが4小節のソロ...という風な4小節ずつの掛け合いをいう。
 1番多いケースは、「全員 - ドラム・ソロ - 全員 - ドラムソロ - ...」というタイプだ。この場合、「最後のテーマに戻る直前のコーラスは、4バースで行くぜい!」という風に誘われることが多く、また「全員」の部分は、皆で息を合わせて一斉に、思い切り派手に入るとカッコイイ。
なお、ドラム・ソロの最中はけっこうリズムを見失いやすい。4小節ぐらいなら大丈夫でも、長いドラム・ソロだと上級者でも大変だ。ドラム・ソロのリズムの取り方には、独特のタメがあるので、よく分からないときは、遠慮なくドラマーに説明を求めること。知ったかぶりしてはならぬ。

■ ポリ・リズム(複合リズム)  例えば、16ビート (1小節=16分音符*16) のファンキーな曲では、4小節の間に計64個の音(16分音符)があるわけだが、この64個の音は、4*16 = 64 と発想するのが普通であろう。
 しかし 64÷3=21(余り1)と発想して、「3連のフレ-ズを21回繰り返した後、16分音符を1つ入れる」ことで処理してもいいわけだ(あくまで一例である)。もちろん聴衆は、このリズムに不思議さを感じる。こういう発想のリズム処理を「ポリリズム」という。これを体得するには、音符の割り算をした後にメトロノームと向き合い、ひたすら修行する他はない。ポリリズムは強力かつ危険な術であって、ソロ奏者がいきなりポリリズムのフレーズを弾くと、不慣れなリズム隊を崩壊させることもあり、またソロ奏者本人が勝手に自己崩壊するケースすらある(笑)。

■  12小節のマイナー・ブルースだが、4小節毎にいわゆる4ヴァースが入り、しかもそれが3連ポリリズムで行われる。この4小節を詳しく見ておこう。
 本来は4ビートの曲であるが、より細かく16ビート(1小節=16拍)で発想せよ。すると問題の4小節は、下のような64拍になり (16*4=64)、さらに3拍毎に太字にした。3連ポリリズムでは、この太字のところでドラムが鳴る(計22回)わけだ。うまく4小節内に収まっているよね?

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 この「 3連ポリリズムによる4ヴァース」は、ドラム・ソロでよく行われるので、ぜひマスターして欲しい(音声ファイルを繰り返し聴くこと)。太字の22箇所でドラムが鳴るので、22回数えてもいいのだが、その際、「さ・ん・れ・ん・が・こ・わ・く・て・ジャ・ズ・が・で・き・ま・す・か・1・2・3・4・5」などの呪文で数えるとよい。3連ポリリズムについては、『abc-Guitar』というサイトの「Jazz上級編」に素晴らしい解説があるので、ぜひご参照あれ。

 Ex 3-5-5  最後に

 他のページでも述べたが、バップの基礎は、あくまでコードに即しつつ、「タタタタ...」とソロをすることである。そうすると自然にソロの旋律が「コードを浮かび上がらせる」ので、伴奏なしでも、メトロだけを頼りに、ソロの練習ができるはずである。もしソロ中にコード感を見失い、どこをやっているのか自分でも判らなくなったら、厳しいようだが、君のソロはバップ(伝統的ジャズ、普通のジャズ)ではない。ポリリズム等の高度な技に関心をもつのもよいが、基礎は確実に固めておくべきである。例えば、「II - V- I」を4回繰り返す次のフレーズを真似よ 。このリズムでアルペジオ・フレーズを弾けば、必ずバップに聞こえる。
    --------------------10-8---------------6----------------------------------------6-4-------------2---------------1弦
    -----------------11------9-10---10---9---8-7-6-----6-----------6--------------7-----5-6---6---5---4-3-2-----2-
    ---------10-9-12--------------9------8---------8-7---7---------6--------6-5-8-----------5-----4---------4-3---3-
    ----8-12-----------------------------6-----------------8-5-8---4----4-8-----------------------2-----------------4-1-4-
    -10----------------------------------8-------------------------6--6---------------------------4--------------------------5弦
■ 常々思うに、ボサノバの伴奏は難しい。よく歌手に「歌いにくい」と苦情を言われたものだ。難しさは、ボサノバ特有の、@シンコペーション(次の小節の頭の音を、前の小節の最後に出すような、フライング気味リズム)と、Aリズム・パターン(強弱パターン)を明確にする必要性、の2つにある。
 特に、Aの強弱パターンは固定すべきであり、意味もなく変えると歌手を不安にさせてしまう。また、珍しいコードなどを使う必要もなく、ありきたりの基本コードで十分である。一貫したリズム・パターンを保つ方がはるかに重要だ。主役は歌手なのである。
■ ジャズに限らず、スロー・バラードの曲では、ソロ奏者は 「ためて」 弾くものである。それをまともに相手にしていると、伴奏はどんどん遅くなっていく。伴奏者はリズムを維持し、1小節1小節を明確にせよ。とはいえリズムを維持しようとすると、ソロ奏者のフレーズの語尾に重なってしまうため、「ソロを聴いていない」などと文句を言われるのではないか、と心配する人もいるだろう。だが心配無用だ!
 フレーズの最中だろうが、音を出して小節を明確にせよ。逆説的かもしれないが、伴奏者が積極的に動く方が、ソロはのびのびと歌えるのだ。伴奏者がリズムをキープしてくれるから、ソロ奏者は安心して存分に遊ぶことができる。スローな曲は、伴奏者がしっかりしないと確実に遅くなってゆく。一方、快速の4ビート曲は、やや走り気味の元気のよい伴奏がよい。けっしてモタらぬように!

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