フィールド・ノート…1999年2月

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2月5日…23歳OL、ワケアリの彼氏との別れ

17日に面接した25歳の女性からは、その後もときどき電話がかかってきている。先日は、彼女にホルモン異常があるという話が出た。「ねえ、○○さん(彼女はぼくのことを、名前ではなく独自の呼び名で呼ぶようになっていた)は、子供が産めない、って初めから分かってる女の子と、結婚できる?」と彼女が訊く。(これには、「私と結婚して欲しい」という含意はないと、ぼくは判断した。)ぼくは結婚したら確かに子供が欲しいと思っているが、だからと言って子供が産めない女性と結婚したくない、とは思っていない。会社の上司でも、子供がいないために却って夫婦仲が良いような例があるのも知っている。そういうことを話した。ぼくにはそういう言葉をかけるのが、彼女にとって「良いこと」だったのかどうかよく分からなかったが、それしか言えなかった。

木曜日の深夜。金曜日に休暇を取る(取らされる)ことになったぼくは、久しぶりにツーショットダイヤルにつないでみた。東京ではなく、地元の県のセンターである。無言、ガチャ切りが何件か続いたあと、23歳のOLとつながった。1年ほど前から一人暮らしをしている。部屋は比較的ぼくの家に近い。

ツーショットは、最近よく利用するようになった。変な人も多いが、中にはマトモな人もいる。一人暮らしで夜が寂しいので、かけるようになったらしい。少し話が前後するのだが、ぼくは最近一人暮らしの若い女性には、親元を離れたキッカケについて訊くことが多い。たいていは、親の干渉を嫌って家を出たり、地元で付き合っていた彼と一緒に東京に出てきたり、というような話が聞ける。彼女の場合は違った。結婚して家を出ていた兄が実家で住むことになって、しぶしぶ家を出たらしい。「離れてわかる親のありがたみ、って感じだね。本当に、親のところが一番いいよ。今でもよく実家帰ってるし」。結局、人それぞれなのだ。

彼はいるの? というお決まりの質問をしてみる。「いたんだけど…。ちょっといろいろあって、最近連絡ないんだよね。もう自然消滅かも。話せば長くなるんだけど…」。ぼくが、聞かせてよ、と言うと、「えー、変わってるね。普通、こんな話聞きたいなんていう人、いないよ」と言いながら、話し始めた。

彼と付き合い始めたのは半年前。好きになったのは彼女の方からだった。付き合う前に言っておくことがある、と彼は言った。彼の前の彼女は事故で身体が麻痺し、今も入院中である。彼にはもう彼女への恋愛感情はないが、今でも一週間に一度はお見舞いに行っている。「このことを言ったら、今まで付き合った女の子はみんな逃げちゃったんだって。でも私は気にしないって言ったの」。

彼との仲はうまく行っていた。だが、彼女が彼の車の中で、前の彼女にあてた手紙を読んでしまったことから何かが狂いはじめた。彼女は前の彼女に嫉妬したわけではない。むしろ、前の彼女に感情移入してしまったという方がいいかもしれない。彼女は去年のクリスマスに彼へのプレゼントと一緒に、そんな彼女の気持ちを綴った手紙を渡した。だが、それが彼には気に入らなかったらしい。前の彼女とのことには、触れられたくなかったのだ。電話で言い合いになり、彼が「年明けにこっちから連絡する」と言って電話を切った後、いまだに連絡がない。

連絡してみればいいのに、と言うと、それはぜったいにイヤ、なのだそうだ。「今考えれば、ガンコで付き合いづらいところもあったし。このまま別れようと思ってる。でも、ヒドイと思わない? 別れたいんなら、ちゃんと言ってくれればいいのに…」。

そんな話を聞いてあげていると、彼女はぼくのことを、いいひとだね、と言う。「こういうのだと、自分のことばっかりしゃべる人が多いよ」。その後彼女の趣味であるパチスロのことなどを聞くうち、彼女も明日休みであることを知る。彼女は事務員だが、業種は客商売で、土日は出勤なのだそうだ。じゃあ、ぼくと遊びに行かない? と誘ってみる。意外なほどあっさりとOKが取れた。待ち合わせ場所はぼくの家から車で10分ほどの、とある大きな公園のある駅だ。携帯電話の番号を訊くと「持ってない」というのが気になるが、「絶対きてね!」という言葉にはまずまず真実味が感じられた。

ぼくは翌日、5分ほど遅れて待ち合わせ場所に着いた。彼女らしい人影はなく、しばらく待っても現れなかった。残念ながらすっぽかされたようだ。家から近い場所だったのは幸いだ。ぼくは近所の図書館へ向かい、たくさん本を借りた。読みたかった雑誌のバックナンバーも手に入れた。こんな有給休暇もたまにはいいだろう。

2月7日…23歳OL、テレクラ2度目、「ハマるのが怖いからもうやめる」

渋谷のテレクラへ行くのは久しぶりだ。前回行った時、フロントのお兄さんに割引チケットを勧められた。「お客さんくらい来てくれる方でしたら、ゼッタイにおトクですから」。それで却って、その店を使う頻度を下げよう、と思った部分もある。ともあれ、3時10分前くらいには、いつもの部屋に陣取っていた。

1本目は2,3語交わしただけでフロントに戻された。2本目は、「遊びに行こう!」「いいよ」「カラオケ行こう!」「いいよ」「その代わりお小遣い1万円ちょうだい!」「それはイヤだなあ」ガチャン。26歳だと言っていたが、どういうつもりなんだろう。3本目は16歳。彼の「オーディション」の付き合いで渋谷に来たが、彼がその「オーディション」に行ったきり帰ってこない。それでかけてみたらしい。会ってお話しよう、というとあっさりOK。が、待ち合わせ場所を決めている時にあっさりと切られる。

4本目がかかってきたのは、3本目が切れてから1時間くらい経ってからだった。23歳のOL、自宅から。家族と住んでいて、今も階下に母親がいる。後でわかったことだが、彼女は自分のPHSでかけていた。つまり、フリーダイヤルではなく、身銭を切ってテレクラにかけているのである。今日は久しぶりに外には出ず、部屋の片付けなどをしていた。そのせいか、話し方もまったりした感じだ。声は比較的幼い。

昨年大学を卒業して今の会社に勤めはじめた。(最初訊いた時、「受付」と答えたが、しばらくするうちに「さっきのは嘘」と訂正が入った。)入社してもうすぐ1年。仕事は楽しい。同僚も若い人が多いし、何と言っても好きなを扱う仕事だからだ。ただ、不況のあおりで残業代を削られ、お金はたまっていない。

半年前から付き合っている彼は40歳独身で、大手企業の課長をしている。すごく優しいし、包容力もあって、彼女は彼のことが大好きだ。「あと彼の考え方が好き。すごく家族思いなところも」。だが、実はそろそろ別れようと思っている。「お互い、今の関係がベストなの。でも彼の年齢のことを考えると、そろそろ結婚相手を見つけた方がいいと思うし。でも、私にも彼にも、結婚するような気は全然ない。だったら、早いうちに別れた方がいいんじゃないかって思って」。遊びで付き合ったわけではない。本当に好きだし、本気で付き合っている。でも、どこかで終わりがくるのなら、お互い好きでいるうちに…ということらしい。

テレクラの話になる。「かけたの? 2度目だよ。昨日が初めて。お酒飲んで帰ってきて、なんか眠れなくて、何となく…。昨日話した人は、高校大学と海外に行ってたんだって。その話をしてくれたんだけど、知らないことがいろいろ聞けて、けっこう面白かった。で、今日も暇だったから…」。こういうのって、かけてみる前の印象と違った? 「うーん、かける前は、『裏の世界』って感じがしてた。普通の人もいるんだね。まだ分からないけど…。でも、ハマるのは怖いから、もうやめようと思ってるんだ」。40分くらい話して、ぼくの部屋の電話番号を教えて(ブーメランを投げて)から切る。

正直、かかってくる(ブーメランが帰ってくる)ことは期待していなかったのだが、帰宅後、彼女から電話が入った。今度は彼女のPHSの番号を教えてもらい、1時間弱話す。今まで付き合った人は何人もいるけど、本当にマジメに付き合ったのは高校卒業から大学2年くらいまで付き合っていた人が最後かもしれない、という話を聞く。「その後は、付き合ってる、って言っても他の子とも遊んだりとか、よくしてたし。でも私、遊ぶだけだったら遊び人みたいな人でもいいんだけど、付き合うんならマジメな人がいいな」。本当に根は真面目な子だと思う。「ああいうところ(テレクラ)、よく行ってるの? もうやめた方がいいんじゃない?」と言われる。ごもっともである。「インターネット、やってるんだ。じゃあ、ホームページとか持ってる?」これにはさすがに本当のことは答えられない。答えられるわけがない。

なぜか向こうから、会いたい、という話が出た。「だって、電話だけなんて変じゃない? 一度会って、どんな人か知らないと…」。一応、今度の土曜日がその期日だ。果たして実現するだろうか。

2月12日…テレクラと彼女

読者の皆様にはご期待いただいていたのだが、2月7日の彼女との「面接」は当面実現しそうもない。かといってすぐに「切れる」ということも、とりあえずはなさそうだ。また、彼女からはその後もいろいろと面白い話が聞けた。ここまでの途中経過を記しておきたい。

月曜日。早くも彼女は前言を撤回した。「やっぱり怖い。緊張する。もし会って、うまく行ったとしても、友達とかにどうやって知り合ったかとか言えないし。彼にも悪いし…。実はさっきまで電話してたんだ。もし自分がその(彼の)立場だったら、やっぱりヤでしょ? 会わない方がいいんじゃないかなあ…」。ぼくはいろいろと説得した。別に今決めなくてもいい、と言った。会話は楽しかった。

火曜日。彼女は女友達と飲みに行っていたと言った。「友達にね、テレクラ電話したこと、言おうかなって思ったんだけど、言わなかった」。ここからテレクラの話になった。「男友達だと、けっこうテレクラ行ったことある、っていう子が多いの。でも、女の子とはそういう話、しないし。みんな、かけてるのかなあ?」ぼくは、まあみんな一度くらいはかけててもおかしくないんじゃないの? と言った。「そうだよね…。そういえば中学生の頃、一回すごい流行ったことあった。3人ぐらいでかけて、なんかオジサンに、『赤いバラをくわえて待ってて下さい』とか言ってからかったり」。この手の話を聞いたのは何度目だろう。どうやらテレクラへの悪戯電話は、当時の小中学生のあいだで爆発的とも言える流行だったようだ。「でも、流行ってたのはほんと、3ヶ月くらいだった」。あの年頃の女の子は気まぐれだ。

実は彼女は月曜日もテレクラにかけていたという。「夜8時くらいに、暇だったからかけてみたんだけど、変な人ばっかりだった。話がぜんぜんつまんなくて、こっちが黙っちゃって、そしたらフロントに戻されて、って感じ。最後の人なんか、結局何にも言わずにこっちからガチャって切っちゃった。すごい虚しくなった。私何やってんだろう、って。もうゼッタイやめる」。何となく、ぼくが「PHS番ゲット」まで進んでいる一方で、ガチャ切りされた人がいるということは、ぼくのコミュニケーション・スキルも満更ではないのかな、と思った。「じゃあ、ぼくとは話しててもつまらなくなかったわけだ。そうでしょ?」「うん、そうだね。楽しいよ」。

ついでに、テレクラの歴史や仕組みについてぼくが講義をする。いや待てよ。こんなに詳しくてはマズイのだ。ぼくはテレクラには「せいぜい月に一回程度」しか行かないことになっているのだから。なお、彼女は月曜日も7日と同じ、ぼくのよく行く店にかけたらしいのだが、フロントのお兄さんの声やしゃべり方がキモチワルイ、ということである。ぼくから見ると、わりあい好印象だったのだが…。

水・木も電話したのだが、会う話は出さなかった。そして金曜日。「毎日電話してるね。なんで?」という会話から始まる。明日の予定を訊く。「ごめん。やっぱりダメになっちゃった。彼とデートなの」。渋谷のラブホテルのフリータイムを使ってゴロゴロする計画だそうだ。(ちなみに、これはぼくの前の彼女との定番デートコースだった。)「でも彼が疲れてて朝起きられないかもしれないんだけど…」。ぼくは冗談っぽく、「じゃあ、その時は代わりにぼくと行く?」と一応言うだけ言ってみた。彼女はとんでもない、という調子で、「行かないよぉ。そんなことゼッタイしないからね」と返事をした。ぼくは、まあそれは冗談として、もし暇になったら、会ってご飯でも食べたいし、良かったら連絡をくれ、と言ってから電話を切った。彼女は最後は半分眠りながら話していたようだったが…。

2月13日…ケンカの腹いせ・テレ特との面接

内心、まず実現することはあるまいと思っていた7日の女性との「面接」が実現した。金曜日の夜、「フィールド・ノート」の更新をした後、4時半過ぎに寝床についたぼくが彼女からの電話で起こされたのは、朝の9時だった。「今日(彼とのデートが)ダメになっちゃった」。わざわざ電話をくれたということは、面接OKということだ。ぼくは必死に眠っていた頭を揺り起こし、アポイントメントの具体化に取り掛かった。決めるまでのあいだも、「やっぱり知らない人の車に乗るのは…」とか、「平日の夜のほうがいいかなあ…」とか、彼女の心は揺れていたようであったが、何とか場所と時間を決め、電話を切った。ぼくの車で、彼女の家の近くまで行く。それから昼食、ドライヴという段取りだ。彼女もぼくも夜は別の用事があるため、最終的には夕方5時過ぎに家まで送らねばならない。

その後事態は二転三転する。朝食もそこそこに、昼食の場所をインターネットで探したりしていると、再び彼女から架電。嫌な予感がした。案の定、「ごめん…。彼からさっきまた電話があって、やっぱり行こう、って。『他の予定が入った』とは言いづらくて…。良かったら明日空けるから」とのことである。それだったら仕方ないね、明日のことはまた考えよう、と言って切る。ところが更にその10数分後。「彼とケンカしちゃった。あのね、彼の家の近くにミスタードーナツがあるんだけど、(ホテルで)食べたいからそれ買ってきて、って頼んだら、怒り出しちゃったの。『こっちは疲れてるのに、まだ寝てるお前にそんなこと命令されたくない』っていう感じで。彼、怒り出したら怖いの。『この関係はどうせうまく行かないから、もう終りにしようか』とか、すぐ言うんだよ。頭にきちゃう」。というわけで、再びぼくにお鉢が回ってきたようだった。

待ち合わせの場所は、都心の某ターミナル駅に程近い住宅街だ。携帯で連絡を取り合いながら、ほぼ時間通りに落ち合うことができた。一部にはつとに知られていることだが、女性の容姿に関するぼくのジャッジは、非常に甘い。だからそのぼくが「テレ特」などと言ってもさほどの説得力はないのだが、彼女は小柄でスリムな体型、そしてかなりの美人だった。一色紗英に似ている、というのが事前の情報だったが、確かにその言葉に偽りはなかった。そしてこちらの方がぼくにとってもっと重大だったのだが、彼女はぼくが高校のときに片思いをしていた同級生の女の子によく似ていた。

「あれだけ毎日電話してたら、あんまり『初めて会った』っていう感じしないね」。乗り込んでしばらくしてから彼女が言った。お台場で食事をする。ここで彼女の父上がぼくの大学の先輩に当たることを知る。某大企業のかなり偉いひとらしい。自宅のロケーション等も考え合わせると、やはりお嬢様だ。

どういう話の流れだったのか、オウム事件の話になった。「ああいうの、どう思う? 私のちょっとした知り合いで、やっぱりT大の人がいるんだけど、その人はオウムがサリンを撒いたのも理解できる、って言うの。今の日本はダメだから、いっぺん壊さなきゃダメだ、って」。ぼくはここでプチ宮台(笑)となって「終わりなき日常を生きる」ということを分かり易く解説しようと試みるも、あえなく挫折。何をやっているのだか。

その後もぼくは、事故を起こさないようにできるだけ知っている道を選んで走り、ぼくの地元でケーキなどを食べた後、時間通りに何事もなく彼女を送り届けた。彼女を降ろす場所が近づいてきた時、「また、会えるかな?」と訊く。彼女は複雑な表情をして黙っていた。その顔には、「今日は彼とケンカした腹いせで会っただけだし…。まあ悪い人じゃないけど、今イチ、ピンとこないな…」と書いてあるように思えた。「今日はすごく楽しかった。会えて良かった」と言ってみる(というか、本心である)。「それなら、良かった」と彼女。この科白はできれば発言者が逆であることが望ましかったと思う。彼女が車を降りる。「今日はありがとう。ばいばい」。次回はないかもしれない。

2月16日…「もう会えないよ。」

もう会えないよ。」彼女の口から、ある程度予想していた通りの言葉が出た。「面接」後、2度目の電話だった。「あの日は(彼と)会えなくなって、誰でもいいから会いたかっただけだし、やっぱりああいうことするの罪悪感あるし…。別に『会いたくない』ってわけじゃないけど、私は彼と(今すぐ)別れるつもりないし、どうもならない、って分かってるのに会ってても、お互い、しょうがないじゃん」。

あの日は初めから、「今日だけ」のつもりだったと彼女は言う。「もしキムタクが来たとしても、もうその後は会わないつもりだった。私、もうああいうことはやめるんだ」。あの日、ぼくは楽しかったんだけど、つまらなかったかな? 「そんなことない。楽しかったし、ケーキもおいしかった」。

「こういうことって、ハッキリ言った方がいいと思って。電話を無視したりとか、そういうのヤでしょ? だから。電話だけだったら、こっちが部屋にいるとき話するのはぜんぜん構わないけど、電話だけ、って分かってるのも何か変じゃない?」

予想通りだった。本当に予想通りだった。でもぼくはやはり、いくらか気落ちしていた。だが、ハッキリ言ってもらえたことはありがたくもあった。たとえば電話を無視されたり、PHSの番号をいきなり変えられたりするような(あり得べき)事態と比べ、今回の彼女の態度はどれだけ誠実だろうか。ぼくは、これも何かの縁だから、まあたまには電話するかもしれないけど、その時は話を聞いてよ、と言い、受話器を置いた。

2月28日…ある男性読者との面接の後

この日ぼくは新宿で、一人の男性読者との「面接」を行った。詳しい事情についてはここには記さないが、「○○さん(ぼくの名前)がテレコミをやっている目的が分からない」という意味のことを、ここでもやはり指摘される。ぼくの中にはそれなりの目的意識があるような気がするのだが、それを言葉にするのは困難だった。自分でも説明がつかないのだ。

彼と別れたのが午後4時半。(彼は地元で出撃すると言って駅に向かった。果たして首尾はどうだったろうか。)ぼくは小さな本屋で「熱烈投稿」誌を購入した。掲示板に書き込みのあった「成宮観音嬢の媚態」を拝むためである。この雑誌はぼくが中学生の頃、初めて買った「エロ本」だ。買うのはものすごく久しぶりである。雑誌を背中のデイパックにしまい、ぼくは歌舞伎町のテレクラへ入った。

問題のグラビアはとても楽しく見ることができたのだが、問題は誌面の他の部分である。思えば、ぼくは昔からこの「読者投稿」というやつが苦手だった。見るのがキツイのである。もちろん、あれらの「ニャンニャン写真」の大半が「ヤラセ」であることも今のぼくは分かっている。そして同じように、中には「本物」が混ざっていることも。ぼくがテレクラへ行くようになった理由の一つは、たとえばそのような写真が生み出される現場に自分が近づくことによって、そういう「キツさ」を解消するためだった筈だ。なのに、今に至るまでそのキツさは解消するどころか、激しくなってきているような気さえする。

このような本筋と関係のないことを書き連ねていることからも推測可能だと思われるが、この日の成果は何もなかった。一度外出すれば終了の1時間コースで入ったのだが、店内にいた約1時間のあいだに取ることができた電話は3本だった。1本目は23歳、妙にハキハキした物言いだったが、そういうケースの常として、援助希望である。2本目は意味不明な嫌がらせじみた電話。深夜のツーショットダイヤルでよく遭遇するようなコールだ。

3本目は「仙台から友達の家に遊びに来た」26歳店員。新宿コマ劇場近くの公衆電話からだ。少し話をして、遊びに行かない? と誘うとOKである。店を出ることにする。店員さんにアポが取れたので終了する旨伝えると、「おめでとうございます! キレイな子だといいですね!」と明るく祝福される。「まあ、とりあえず来ればいいけど」とぼく。「いや、この時間の公衆コールなら、スッポカシはないですよ」と店員さんは自信たっぷりである。だが、待ち合わせ場所にはそれらしき人影はなかった。


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