考えないヒット

第六回 「Love, Day After Tomorrow」倉木麻衣(2000年)

2000.4.22

この曲を聴いて、「高度資本主義社会」という言葉を思い浮かべるのは、的外れだろうか。
宇多田ヒカルという一人の天才少女の出現。
巨大資本を背後に持つ音楽業界がこの事態を静観しているはずもない。
大人達は瞬く間に宇多田ヒカルのコピーを作り上げる。
プロの仕事に抜かりはない。完璧だ。
そして彼らの思惑通り、この「Love, Day After Tomorrow」は売れた。
これが高度資本主義社会というものだ。すごくソフィスティケートされている。

2曲目の「Stay by my side」を聴いて、ぼくは確信した。
結局のところ、彼女はZard・大黒摩季・相川七瀬…たちと同じなのだ。
咀嚼する必要のない流動食のような音楽。
完璧に無害化された、消費するための音楽を送り出すビジネス。
こういうビジネスを否定すべき根拠を、ぼくは持っていない。

倉木麻衣のヒットをもって、「日本の音楽シーンの未熟さ」を論じることもできるだろう。
だがぼくには、そんなことを論じること自体が、意味のないことのように思える。


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