考えないヒット

第七回 「ちょこっとLOVE」プッチモニ(1999年)

2000.6.19

♪「ちょこっとLOVE」ついて語ろうとするとき、この作品の偉大さに比べて自分があまりにも貧弱な言語しか持ち合わせていないことに気づき、いささか呆然とせざるを得ない。もちろん、芸術作品を言語によって批評しようとする試みに常に一定の限界があるのは自明であり、その限界を乗り越えようなどという大胆な企みは、初めから持っていない。ただ、この作品からぼくが受けた感銘が、いかに筆を尽くそうとも、その10分の1も表現しきれないであろうことが、まことに残念でならない。しかしそれでも、大げさに言えばぼくの人生にさえ影響を与えたこの作品については、やはり何事かを語っておきたい。そのため、無理を承知の上でこのような文章を書き綴っているのである。

♪「この作品」という表現を使ってぼくが指そうとしているのは、言うまでもないことだが、つんくによって作詞・作曲され、プッチモニによって歌われた、「ちょこっとLOVE」(EPDE-1063)というCDそれのみについて、ではない。市井紗耶香・保田圭・後藤真希によるユニット結成の発表から、最終的に大ヒットとなるまでの一連のTV出演における彼女たちのパフォーマンスまでを含めたすべてが、「ちょこっとLOVE」なのだ。

♪一種のブームを巻き起こした「ちょこっとLOVE」の大ヒットについては、例によって数多くの分析がなされてきたし、それらの分析は、まあどれもそれなりに妥当なのだろう。アイドル・ポップスにスカがうまくはまった、とか。コミカルな振り付けが小中学生に受けた、とか。「LOVEマシーン」の大ヒットという追い風に乗った、とか。別にそういった意見に反対するつもりはない。だが、ぼくが何故この作品にここまで惹きつけられたのかを考えてみると、やはり市井紗耶香のあの尋常ならざる輝き方こそが、その最大の要因であったことは間違いないのである。

♪もちろん、プッチモニというユニットが、保田圭のお姉さんらしい落ち着きや歌唱力、後藤真希の天真爛漫さやそのアイドル性がなければ成り立たなかったことも、ぼくは十分に承知している。これからぼくは市井紗耶香を中心としてこの文章を書き進めてゆこうとしているわけだが、ぼくが決して他の二人を軽視しているわけでないことはご理解いただきたいと思う。

♪さて、市井紗耶香である。


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