我が「初ゲット」未遂記

1998.11.8

○この文章は本来、『我が「初ゲット」記』となる予定だったものである。だが、その相手となるはずであった女性は、私の前から姿を消してしまった。そのことも含め、この際(カウンターが5000を超えたことの記念もあるし)、少々書いてみたいと思う。

○テレクラは、一般的にどのようなイメージで見られているだろうか。利用している男性は、女性に声もかけられないような根暗な奴ばかり、かけてくる女性は、男に相手にされないような、欲求不満の溜まった暇人か、援助交際希望者ばかり、そのような通り一遍の認識を持っている人は、この文章の読者の中には少ないだろう。しかし、私自身は自分が行ってみるまでは、それに近い認識を持っていた。

○私が彼女に出会ったのは、このサイトを始めて一週間経った日のことであった。詳細はフィールド・ノートに記した通りであるが、彼女はごく普通の大学生だった。むしろ、普通の女子大生よりは真面目なタイプだった。そして、付き合っている彼がいた。

○そんな彼女が、さっきテレクラで知り合ったばかりの男の目の前に、裸身を晒していた。いや、彼女についてだけ記すのは不公平だ。私だって同じだ。今は彼女こそいないが、会社では真面目で通っている。ナンパなどしたこともない。前の彼女がいたときは、他の女性には目もくれなかった。そんな私が、見ず知らずに近い女とともにベッドにいる。

○私は、「自己」の行為が「他者」に及ぼす影響というものを、これほどまでに強く感じたことはなかった。もちろん、場合によっては、彼女はこういったことには慣れていて、相手は私でなくても同じだったかもしれない。あるいは、何か嫌なこと、忘れたいことがあったのかもしれない。(私の眼にはそのどちらにも見えなかったが。)しかし、彼女を呼び出し、酒を飲ませ、ホテルに連れ込んだのは、紛れもないこの自分のしたことなのだ。

○結局、この日の私たちは、一緒に眠っただけで終わった。当然だ。私は上のような下らないことをずっと考えていたのだから。彼女がどう思っていたのか、今となっては知るすべもない。その後彼女とは、もう一度会う機会があった。デートは楽しかったが、彼女は体調を理由にホテルへ行くことを断った。彼女は言った。

「また今度ね。絶対だから。」
そして、キスだけで別れた。だが、「今度」はなかった。3度目のデートの約束をしていた当日に、彼女の携帯は通じなくなったのである。

○携帯の番号を変えたのは、単に電話会社を変えてみたかった(以前に電波の状況がよくないことについての不満を聞いたことがあった)だけなのかもしれない。そして、彼女にとって私は、電話番号の変更の連絡も必要ない程度の人間だった、ということなのかもしれない。おそらくそれが正しいだろう。それでも私は考えてしまう。彼女は怖くなったのではないかと。

○彼女は就職するまでに少し羽を伸ばして遊んでおきたい、というようなことを口にしていた。しかしテレクラで私と知り合ったことが、彼女の望んでいたことだったかどうか。このまま付き合っていたら、どうなるのか。約束をしていた当日(しかも次回はホテルに行こうと言っていたその次回)に連絡を絶ったところに、私は彼女の意志を感じる。

○冒頭にテレクラ利用者のことを書いた。テレクラの利用者は、別に特殊な人種ではない。もちろん中には変な男もいれば変な女もいる。しかし、テレクラの外の社会にも、それは言えることだ。


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