第1日 雨の西明石


もう7時半だけど…。高雄さんの声で目覚めた。
あ、やべ。7時には起きて準備するつもりだったんだ。
やっぱり夜中まで岩田君と対戦ゲームやってる場合じゃないよな。
おはようの挨拶もそこそこに、急いで着替える。
天気悪いよ…、再び高雄さん。
分かってる。天気予報は見た。今日と明日はあまりよくないらしい。
まあ、ゆっくり行けばいいさ。

すべては飲み会のひとことだった。
うちに来ればラーメンのおいしいところに連れてってやるよ。
20年近く九州に住んでいてここほどおいしいところはないってところ。
ゴクリ…。行く行く。
今年もやることになるとはこの時までまったく頭になかった。

いや、それは嘘だ。
高雄さんの家の前で組み立てた自転車を整備しながら思う。
九州の実家に帰るという森さんが事故って
行けなくなったと聞いた時、
それでも九州に向かうと決めたのはなぜだったのか。
ただの意地か。
それともすでに買ってしまった西明石行の切符を払い戻すのが嫌だったのか…。
いや、ラーメンはきっかけに過ぎなかったのだ。

うし!準備完了だ。
雨も小粒。今のうちに進めるだけ進もう。
じゃ、行くよ。どうもお世話になりました。
フンッというかけ声とともにペダルを踏み込む。

むむむ。
大通りに出た途端に雨が激しくなってきた。
路面はあっという間に濡れ、
泥よけも何もついてない2つの車輪が前後から泥水をかけてくる。

まずは姫路を目指す。
2号線にはまだのれないがとりあえず西にいっとけば平気だろう。
新幹線の高架下の道を発見した。
この雨の中屋根のある道は貴重だ。
迷わず行く。
看板があった。明石姫路自転車道。
素晴らしい!
これをひたすら行けば姫路につけてしまうではないかいな。

新幹線に沿ってしばらく進む。
行き先は一つ。迷う心配はない。

あ、また看板だ。どうせまっすぐ姫路とかいうのに違いない。

    白浜 <---> 国分寺
      250  |   2
           |

???
ひ、姫路は?
しかたなくまっすぐ行く。
しばらく行くと大きな川(市川とかいったかな?)に当たった。
もちろん橋はない。
しかたない。2号線の方向に向かおう。

そうこうしているうちに姫路だ。
ちょっと見物しちゃおうかな。雨だし。
ん?なんだあの変な建物は。
おばさんに聞いてみる。
保健センターって書いてありますけどなぁ。
姫路市のもんとちゃいますかぁ。
なんだ。博物館かなんかかと思ったぜ。
さて、姫路城に行ってみよう。
しかしさすがにこの濡れねずみで中に入る気はしない。
よし、見た。行こう。

止まったおかげで体が冷えてしまった。
セーターは水をすぐに通すので
保温効果は雨の中でもほぼ変わらない。
だが中に着ている濡れたTシャツが体温を奪うのだ。
裸にセーターでもよかったかも知れない。

荷物は極力減らした。
いつも通勤に使ってるディバッグに着替えを1日分。
工具は自転車に付けてある。
下着や靴下なんか現地で買えば済む話だ。

相生市が近付く。
相生はべりいまそかり、などという下らない洒落が浮かび、
看板に相生の文字が出るたびに頭を回る。
や、やめてくれぇ。

ここまではほとんど道は平坦だ。
2号線は起伏が激しいと聞いていたが
あまり大したことないな。
そう思っていた時だ。
にわかにペダルが重くなる。
むむむ。もう疲れてきたかな。
そういえば出てすぐのパンと牛乳の朝食から
何も飲み食いしていない。

しかしそうではなかった。
登坂車線が現れている。
知らないうちに道が登りはじめたのだ。
とにかく登ろう。
峠には大抵あるドライブインで昼食をとろう。

おろ?渋滞だ。
まあ、自転車には関係ないけど、なんだろう?
路肩に大きな影が見えてきた。
あちゃー、トラックが電柱に突っ込んでるよ。
道を半分塞ぐようにしてトレーラーが路肩に突っ込んでいた。
運転手は見えない。もう病院に向かっているのか。
飛び散った金属の破片でパンクしないように慎重に登る。
トラックの向うには折れた電柱と
横を向いて止まってる別のトラックが見える。

くわばらくわばら。
あんなんに巻き込まれたらどうやっても逃げ切れんな。
ま、そのときはそのときか。

やっと峠についた。
しばらく行くとうどん屋発見。
ズブ濡れの状態で入る。
タオル出しましょうか。
大変ですね。
ありがたいことに追い出されなかった。
暖かいものが食べたい。
鴨鍋うどんなるものを頼む。
色は薄いが塩気が強い。
しかし、疲れた体にはちょうどいい感じだった。

さて、腹ごしらえもすんだし行くかな。
備前に入る頃には道も再び平坦になり、
ペースが上がる。
雨は相変わらず降り続いているが、
いくぶん小降りになってきた気がする。
大きめのコンビニを発見、滑り込む。

下着とタオルを買う。
顔拭き用に腰に下げていたタオルは
雨と水しぶきで用をなしていない。
新しいのと交換する。
下着は宿に着いてから替えよう。
岡山はすぐそこだ。

岡山市に入ると早速宿を探した。
まだ3時にもなってなかったが、
今日の目標は岡山までだった。
雨の中無理をしたくない。
駅前には死ぬほどビジネスホテルがある。
ビジネス旅館の方が安くていいのだが、
今回は荷物を減らした関係上、
いろんなものが揃っているホテルの方を選ぶ。

雨はあがった。
夜までの時間、適当にプラプラ歩きますよという私に
ホテルの人は後楽園と岡山城を勧める。
自転車ならすぐにまわれそうだ。行こうかな。

岡山城は回りを一周して眺めた。
妙に屋根が黒っぽいと思ったら烏城と呼ばれてるそうな。
なるへそ。
後楽園は中に入る。ここまで漕いできた格好のままで…。
雨上がりの庭園はなかなか奇麗でよろしい。
中で出してくれるきび団子と抹茶もなかなかうまくてよろしい。
ただならもっとよろしかったが。
美味しいでしょう、きび団子。
アン入りはここでしか売ってないのよぉ。
一所懸命売り込むオバさんを後目に庭園を回る。

さて、帰って服でも乾かすか…。
この分だと明日は雨は降らないだろう。


    第1日    西明石〜岡山
              8:00 - 15:00
              走行距離 126.80km
              最高速度 メータの使い方が分からず不明
              平均速度 同上(明日からは計れる)