第4日 崩壊!
朝から雨だった。
せっかく洗濯したのにぃ(;_;)。
しかたない。
行くしかあるまい。
徳山は2号線からはちょっとはずれたところになる。
とにかく西に向かえばいつかは合流するだろうと、
ホテルを発った。
しばらく進むと新幹線の高架をくぐる。
このままこれに沿っていけばよさそうだ。
むむ?
なんだか道が左に曲がってきたぞ。
う、なんかいつの間にか南に向かってる…。
いやいや、いくら南に行っても海しかないのだから、
いつかは西に曲がるさ……。
こんな雨の中いちいち地図なんか出す気がしない。
…とうとう道が南東を向き出したところで
やっと気づいて来た道を戻る。
道間違えちゃった。
適当なところで北に向かい、
2号線に合流する。
道は徐々に登っていき、
最後には高架になった。
自転車は相変わらずギシギシいっている。
昨日整備して一度は直ったギアも、
再び7段目に入らなくなってしまった。
まあいいさ。
雨の中急ぐこともない。
わきを走る車は雨なんかお構いなしに、
ばんばん飛ばしている。
高架の道は水はけが悪い。
まだ同じ方向を走っている車はいい、水溜りを避けるから。
対向車線の車がそんな配慮をするはずもなく、
正面から水しぶきが飛んでくる。
こらぁ、耳に入っちゃったじゃないかぁ。
しかし今回の旅は悲惨だ。
雨に降られなかった日が昨日しかないじゃないか。
雨の日なんか人がうろついていることもないし、
こっちだって周りを見ている余裕なんかない。
視界が狭まっているのは水滴のせいばかりじゃあるまい。
ふと横を見ると今までいた街を
はるか下に見下ろす形になった。
ここまで登ってきたか。
なんかベダルが軽いな。
あぁ、7段目に入ってないからだ。
おぉ、ここの道も「←自転車」の文字が。
こうこなくっちゃ。
おろ、何か川沿いの道に出ちゃったな。
むむ?何とか自転車道?
このあたり一帯に縦横に走っているような看板だったな。
(止まって見る気なし)
しばらく走ってみっか。
…むむむ、2km も来ないうちに終っちゃった。
ブーブー。
この辺りからだったろうか。
高速の山陽道と2号線が並ぶような形で、
自転車の通り道はその下を縫うような形になってきた。
「自転車歩道通行可ここまで」
「自転車歩道通行可ここから」
「自転車歩道通行可ここまで」
「自転車歩道通行可ここから」
「自転車歩道通行可ここまで」
「自転車歩道通行可ここから」
「自転車歩道通行可ここまで」
「自転車歩道通行可ここから」
えーーい、いいかげんにせんかぁ!
道路下のトンネルを何度も通った末に
眼前にさんぜんと輝く小さな看板が。
+------+
| 下関 |
| → |
+------+
こんなに小さな道にまで看板を立てておいてくれるとは!
しかも下関までまだ数10kmある。
この看板は明らかに自転車のためのものに違いない。
ここから下関までこのような看板が至るところにあった。
山口、素晴らしい!
さらに、高速とならんで自動車専用区間となった2号線の脇には
必ずそれに沿った道があり、
自転車、軽車両など、こっち
とある。
素晴らしすぎる!
しかし、この辺りからアップダウンがきつくなってきた。
文字通りヒーヒーいいながら登っていく。
いくつかの峠を越えたところでどんぶりもの屋発見。
入るとトラックの運ちゃんでいっぱいだ。
濡れねずみ状態で相席を頼む。
お、にいちゃんさっき自転車漕いどった奴じゃろ。
聞けばおっちゃんは山男で、
昔は自転車でそこらじゅう行ったものだといっていた。
この細い道で雨の日に自転車にフラフラされると
邪魔臭いでしょ。
はっはっは、まあ気をつけてな。
あ、どうも。
ここのどんぶりは
さすがにトラックの運ちゃんが選ぶだけあって
安くてうまい。
おばちゃんも愛想がいいし、繁盛するわけだな。
さて、下関まではまだ2山くらいあるらしい。
もうひと頑張りするか。
ひと山越えた辺りだったろうか。
妙なノボリを発見。
山賊ぅ?何か観光地っぽいな。
何かみんな並んでるぞ。何だろ、何だろ。
なぁんだ。おにぎり買ってるだけか。有名なのかな。
すみません、ここって何なんですか?
駐車場の整理をしているオジさんに聞いた。
ただのドライブインだよ。
…(-_-;;;。
先へ行こう…。
2山めを越えたところだった。
崩壊は突然、しかも意外な形で来た。
このトンネルがおそらく最後のトンネルだろう。
ずいぶん長いなぁ。1km 近くある気がする。
車のエンジン音の反響で壁中がギャーギャーわめいているようだ。
この時もゆっくりとトンネル内を進む。
車はひっきりなしに横を過ぎていく。
こんなところで転ぶわけにはいかない。
あっという間にひかれるだろう。
もうだいぶ来たのに出口が見えない。
音がどこから来るのか分からなくなってきた。
いつも後ろからトラックが来ているように思える。
下手にふらつくとかえって危ないので振り返ることもできない。
非常に嫌な予感がする。
トンネルの中ほどに来たのだろう、登り坂から下り坂になったようだ
自然とスピードが上がる。
25km/h 前後から 30km/h を越えてきた。
もうこんな恐ろしいところはさっさと抜けよう。
そう思ってスピードをあげた時だった…。
ガツン!
え?
自転車は突然自ら進むのをやめたかのように急停車した。
体が中に浮く。
げ、やばい。
こういう場合は下手に受身なんかとろうとするよりも
そのまま力を抜いて飛ぶのに任せた方がいい。
そのまま体はまっすぐ飛んで肩から落ちた。
真っ先に思ったことは落ちたところが車道かどうかだった。
幸い路肩の白い線よりは外側だ。
すばやく自転車をもって脇によける。
後ろを見ると幸い車は一台も来ていない。
危なかった。
もしすぐ後ろに車が走っていたら
足くらいはひかれていたかもしれない。
見ると路肩をちょうどふさぐ形で大きなブロックが置いてある。
暗いトンネルの中ではこんなものは見えない。
まさかこんなところにトラップが隠されているとは…。
さてしかたない、
ここは恐いから降りて押していこう。
ちぇ、ひざ小僧すりむいちゃった。
ひじもちょっと痛いけどまあいいや。
よいしょ、ん?
自転車はまるでいやいやをするように進むのを拒んでいる。
ここで初めて気づいた。
げげげ!前輪がひしゃげてるぅ!
あろうことか、前輪が大きく波打つような形になって、
とても回転するようには見えない。
これではこれ以上先に進むことは不可能だ…。
暗澹たる気持ちでトンネルの出口を目指す。
相変わらず壁はウォンウォンいっている。
まだ先は見えない。
回転することをやめたタイヤはただのお荷物になっている。
車が通過するたびに立ち止まる。
そして前輪を持ち上げながら狭い路肩を歩き続ける。
無限に感じられる時間の後、やっと出口につくことができた。
あぁぁ、まさか下関を直前にしてこんな目にあうとは…。
これでは旅を続けることはできない。
ヒッチハイクでもして近くの駅まで送ってもらおう。
そして帰ろう…。
#相変わらず拙い文章を、最後まで読んでいただきありがとうございました。
完
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
…
いやいや、ちょっと待てい!
あきらめるのはまだ早い。
とにかくやれるだけのことはやってみよう。
前輪をはずす。
どうしてこんなに曲がるのというくらい曲がってる。
あぁ、とにかくこのタイヤさえ直ってくれれば。
九州にいけなくてもいい、一番近い駅くらいまでは走れるくらいに。
強度からして人間の力では元に戻すのは不可能だと思いつつも、
曲がった前輪を両手で押してみる。
ふん!
ガコッ!
え?
奇跡は起こった。
何とあれだけ曲がり切っていた前輪が、
まるで何事もなかったかのようにまっすぐに!
はれ?
そうか、ねじれていただけだったんだな。
あわてて取り付ける。
まわしてみるとまだ若干波打っているが、
ブレーキパッドの幅程度のものだ。
これなら行ける。
あと少しだ、がんばってくれよ。
漕いでいるとひじやひざが若干痛む。
ひざの傷はちょっと深いみたいだけど
放っておけばふさがるだろう。
夕方には下関についた。
今日は下関に泊まろう。
(フグもシーズン終ってた…)
そして明日の朝一に関門トンネル通過だ。
第4日 徳山〜下関
8:00 - 16:00
走行距離 114.07km
最高速度 43.2km/h
平均速度 20.8km/h