親父の言う通り手持ちのMTBで行くしかないらしい。
しかしMTBは2カ月前に買ったものの、
構造やメンテ方法はほとんど分かっていない。
まあ普通の自転車と同じだろう。
この考えが甘かったと気づくのはずっと後だった。
しばらく進んだ頃だろうか、
普通ならこれで答える気がないと思ってあきらめるだろう。
しかし、こいつは未だかつてない反応を示したのだ。
「あ、クイズだね!」
な、なにぃ?
「うーんとねぇ、日比谷!」
「違うよ」答えてんじゃねぇよぉ。
「じゃぁ、表参道だ!」
「まぁ、一応そこで降りるっつえば降りるな」
そんなこんなで表参道までみっちり相手をさせられてしまった。
あの震災で倒れた高速道路に沿った道を走る。
まだ高速は切れ切れだ。
「最初は来年復旧とかいっていたけど今年の秋には復旧するらしい」
おそるべし神戸市。
もっとも、土地買収は要らないし資材置き場にも困らない。
夜に作業しても文句をいう住民は近くにいない。
通常の見積りよりも早めに仕上がるのも無理はないな。
こんな話をしながら神戸の街を走ってもらった。
一昨年自転車で走った国道2号も様子が変わってしまっている。
「もうみんなずいぶん前のことのようにいうけど、全然復旧してへん。」
高雄さんのこの言葉が印象的。
空が白み始めた頃、新神戸駅で降ろしてもらった。
これから始発のひかりで小倉に向かう。
高雄さん、ほんとに助かった。ありがとう。
結局えらい遠回りしてしまった。
10号に乗れればあとはひたすら別府を目指すだけだ。
今回はMTBのため平地での速度が稼げない。
せいぜい28Km/hというところだ。
先を急ぐ必要もない。 40Kmほど先の中津市
にお昼に着ければいいという予定である。
それにしてもやけに狭くてデコボコした道だ。
車道を走ろうが歩道を走ろうがあまり変わらない。
ほんとに国道か?
…速度も分からないし、走行距離も分からない状態になったわけだ。
やがて来たものはご飯に漬物、そしてアサリの味噌汁だった。
でも出発するときには手を振ってくれたし、ま、いいか。
宇佐神宮ってのは、ええっと、説明読んだけど忘れちゃった。
全国の八幡宮の総本山だそうだ。
手水で清めて入る。
(右手、左手、そして左手に受けた水で口をすすぐんだよ、知ってた?)
さて、やっと着いた。
下りるときも3段飛ばしで下りる。
登りもそれほどきつくない。
MTB は最高速度は出ないけど登りには強いみたい。
要するにギア比がロードレーサーよりも小さくなってるわけだ。
しっかし、何にもないところだなぁ。
時おりウグイスの鳴きごえが聞こえるだけだ。
すっかりピクニック気分になってしまった。
わざとギアを数段落してゆっくり進むことにする。
スピードメータのセンサをなくしたことは逆に良かったかも知れない。
自分の速度や走行距離が分からないだけに、
ペースを守ろうとかあと何キロ走らなくちゃとか、
そういうものから解放されてただサイクリング自体を楽しんでいる。
そんなことを考えながら走っていると[立石峠]の看板発見。
とりあえず最初の峠は難なく越えることができたようだ。
自転車を降りてひと息つく。
しばらくは下るが、やがて平坦な道が10Kmほど続く。
赤松峠は立石よりももっと低い。
おそらく知らないうちに越えちゃうんじゃないか。
見つけた、見つけた。[赤松峠]の看板。
全然楽勝だったぜ。
…これは大きな間違いだった。
この看板は赤松峠の「開始」を表示していたのだ。
ここから立石峠のときを凌ぐ勾配の坂道が待っていた!
ギアを一気に軽いものにする。
なめてたらえらい目に会ってしまった。
ひぃひぃ言いながらも止まることなく登っていく。
おっと、そうだ。今夜泊めてもらう佐藤さんのとこに電話せねば。
やがて朝見川なる川にさしかかり、佐藤さん宅が近いことを示す。
出発前から地図で見て気になっていた湯都ぴあ浜協で待ち合わせる。
普通の銭湯がひと勝負かけて泡の風呂やら打たせ湯やらの
いろんな風呂やスポーツジムをくっつけて総合健康センターらしきものを
目指したものらしい。
その日の風呂はそこに入る。
別府の人って近くに安い風呂屋があるから自分の家に風呂は作らないそうだ。
打たせ湯で腕と腿をマッサージする。
さすがに今回はほとんど準備をせずに来たから初日はかなりキイた。
次に泡風呂で全身をほぐす。
普通の風呂で浮かぶ。
そうこうするうちに、ノボせる寸前まで堪能してしまった。
さて、明日は延岡だ。