少し走ると218号との交差点に来た。
ここで見つけた弁当屋で朝飯を買い、駐車場で食べる
さて、ここから10号とはおさらばで、
218号を高千穂に向かうことになる。
しばらくはどちらかというと平坦な道が続いた。
それほど急な勾配とはいえないが決して楽ともいえない程度の坂が、
延々と続き出したのだ。
ただ、嬉しかったのが広くてきれいな歩道が整備されていることだった。
どうやらこの道はサイクリストが走ることを意識しているように
見受けられる。
それはこんなところにも現れている。
普通なら歩行者と自転車の絵の標識には
[自転車通行可]
のように書かれている。
ところがこの道沿いの標識には
[自転車もどうぞ]
と書かれているのだ。
「あ、これはご丁寧に。んじゃ遠慮なく。」
ってな具合に恐縮しながら走る。
かなり致命的な状況だ。
しかし今さらどうこういっても始まらない。
何とかせねば。
下りは漕がずに進み、登りは降りて歩く。
いつまでもこうしてはいられないぞ。
軽トラックの親父が何か作業しているのを見つける。
「すいません。ナット締める道具何か持ってません?」
すぐに道具箱からいろいろ出してくれた。
Y字型のレンチで合うものが見つかった。
助かった…。
思いっきり締める。
「分かんないかも知れませんけど、ナット締める道具ありません?」
そのまま行くのも悪いので名物といってる団子を買う。
「ひとりでやってるんですか?」
「えぇ、バラック屋ですから…。」
恥ずかしそうにその子はこういった。
団子をほおばりながら登りを歩き、下りを滑べる。
やがてガソリンスタンドの向かいにあるというバイク屋を見つける。
レンチを借りてさっきより念いりに締める。
「レンチ余ってたら売ってくれません?」
「これ売ったら商売にならないよ。」
そりゃそうだ。余ってないんだな。
「どっか売ってる店なんか…、ないですよね、このあたりじゃ。」
「あ、高千穂に行けばホームセンターがあるからそこで買えるよ。」
高千穂はもう7Kmくらいに迫っている。
結局30日には雨は降らないとの予報から、
今日は高千穂で泊まることにする。
そうと決まればあとは高千穂観光だ。
まずは天の岩戸神社に向かう。
頼めば天の岩戸自体も拝めたらしいが面倒で頼まなかった。
湯に浸かろうとしてとび上がった。
続けて流れてきたテレビの音声に耳を疑った。
「雨は今夜から明日の昼すぎにかけて強く降り…」
え?
30日にはやむんじゃなかったの?
ここで一度決めた心に揺らぎが生じる。
山道を雨の中走るのは危ない。
昼すぎまで降るとなると、
30日はほとんど進めないぞ。
2日には佐賀に着かなくてはいけない。
すると1日がかなり強行軍になるな…。
地図を見ながら必死に考える。
どうする。
これから次の町を目指すとなると20Kmは走る。
その間に雨が降り出さないとも限らないぞ。
しかし、明日一歩も進めなかったらどうする。
2日に着くのは森さんとの約束。絶対条件だぞ。
悩んだ末に空の様子を見て先に進むことを決める。
そうと決まればこうしちゃいられない。
さっさとそばを平らげると218号に戻るべく急勾配を下る。
さて、次に進むといっても2つの選択肢があった。
1つは325号に乗り換えて阿蘇に近い高森町に向かう道、
もう1つはこのまま218号を進んで五ヶ瀬町に向かう道だった。
五ヶ瀬町は見るからに何もなさそうだ。
もしこっちに向かったら矢部町まで行かないと宿はないだろう。
最悪の場合雨の下の野宿になるな。
結局高森町に向かうことにする。
よし、行き先は決まった。
どうせだからその前に高千穂峡を見ていこう。
…これが間違いだった。
325号との交差点から少し行ったところに高千穂峡はある。
問題はそこに至るまでの道だ。
地図上は非常に近いのだがその道は
いろは坂をホウフツとさせるほどの急な下り坂で、
これを登るのは骨が折れそうだった。
やがて渓谷に着く。
100mを越える断崖に挟まれた渓谷には
カップルをのせたボートが何台か浮かんでいる。
どうやらこの辺りのメジャーなデートスポットらしい。
さて、高森に向かうにはあの坂を登らないといけないわけだ。
五ヶ瀬町では案の定宿など見つからない。
[九州のヘソ 蘇陽町] なる看板が見えた。
どうやらこの町は九州の中心に位置するらしい。
ということはまさに「半」周しているわけね、私。
いよいよ矢部町に行かなくてはいけなくなった。
矢部町は意外に遠い。雨の中走るのはほんとに辛い。
国民宿舎通潤荘に電話する。
地図に載っていたもので、タウンページを見ても
218号沿いにあるのはもはやこれしかなかった。
ここで気に入ったのは夕食だ。
外は雨が激しく降っている。
明日も午前中は雨らしいし、ゆっくり起きればいいな。