その2 三戸〜青森

2.1 強風吹きすさぶ

4月27日午前6時起床。
12時間ぶっ続けで寝ていた ことになる。
いつものストレッチの後着替えて朝食。

おいおい、何だか外はすごいぞ。
台風でも来てるのかというくらいの強風が吹いている。
自転車に風は天敵だ。
これに登りでも加わろうもんならやめてーって感じになる。

玄関ではご主人が訪ねてきた客と話している。
まったく解読不可能。
東北弁はハングルに似ているように聞こえることに気づく。

2.2 ウミネコ

今日青森に着くことは必須条件。
ここから110Km程度あるが、早く出たから余裕がある。
地図を見て発見した八戸のウミネコ繁殖地に行こう。
4号線からはだいぶ外れるが、増えても20Km程度のはず。

恐れていた強風は逆に助けとなっていた。
つまり追い風になっていたのだ。
登りになってもギアを下げずに進める。
お、八戸への分岐だ。
ここからはほとんど下りでしかも追い風と来ている。
35Km/h出して無風と感じるということは風速は10m/sくらいか。

八戸はかなり大きい街だ。
104号線をひたすらまっすぐ走ってこの街をつっきり、 海に出られればそこに目的のウミネコ繁殖地がある。

あれ、今たしか104号線を走ってきたよなぁ。
まっすぐ走ったつもりがどこかでずれたかな。
交差点で地図を見ているとおじさんが声をかけてきた。

「どこへ行くんだい?」
「ウミネコを見に行きたいんですけど。」
「それじゃこの道をまっすぐ行ったらいい。蕪島って看板が出るから」
おじさんが指した道は自分が行こうとした道を左折した道だった。
「危ねー、まっすぐ行こうとしてましたよ。」
「あー、そっちいっちゃ駄目だ。山の方に行っちゃう。」
てつや危機一髪。

この道まっすぐ行きゃいいってんだからあとは楽だ。
途中で広い道を横切る。45号線だ。
青森に向かうにはこの道を十和田市の方に行けばいい。
ウミネコを見たらまっすぐ戻ってくればいいな。ラクチンラクチン。

やがて蕪島が見えてきた。
おいおい、なんだいありゃ。
海岸にお椀を伏せたような蕪島の周りにおびただしい数のウミネコ。
そばにいってみた。
遠くからウミネコのたくさんいるさまを見るのかと思ったら違う。
前も後ろも右も左もウミネコだらけ。
おりからの強風に向かってホバリングしているウミネコもいる。
手を伸ばしたら掴めるぞ、こりゃ。

蕪島には頂上に神社のようなものがあるようなので登ってみる。
足元にもウミネコがいる。足の踏み場もないくらいだ。
テリトリー侵されたっつって襲ってこないかなぁなどと思いつつ、 神社の裏手に回って海側の斜面を見てまた驚いた。

陸側から見えるのの数倍の数がそこに見えたのだ。
数千羽はいるだろう。
ちょうど目の前のフェンスに乗ってるやつと向うに見えるやつらを まとめてカメラに収めた

2.3 まっすぐの逆はまっすぐでない

さて、では戻ろうか。
さっきの道を戻れば45号線と交差するからそこで曲がればいい。
う、風がもろに逆風になってる。
来るときは追い風だったから当たり前といえば当たり前だ。

さっきまでと大違いの辛さにヒィヒィいいながら、 来るときと同様にまっすぐ進む。
何だかさっき通った道と違うような気がするが気のせいだろう。
……いや、明らかにさっきと違う道だ。
おかしいなぁ、来るときはまっすぐだったのに。
って、当たり前だ。道なりの逆が常に道なりであることはない。
風に気をとられて道をちゃんと見てなかったなぁ。

しかたないのでそのまま進む。
やがて45号線への交差を示す看板発見。
ラッキー、これであとは十和田市を目指すだけだ。

さて、どのくらいずれてしまったろう。
来るときに交差した道は覚えている。
しかしどれだけ進んでもその交差点は見えない。
結局30分ほど走ってやっとさっきの交差点に来た。
ずいぶん遠回りしたものだ。時刻は10時30分を回っていた。

2.4 果てしなき逆風

45号線に沿って十和田市を目指す。
しかし、十和田市は三戸からは20Km程度のところ。
十和田市についたところでさらに80Km以上の道のりが待っている。

距離だけではない。10m/sの強風が真正面から行く手を阻む。
しかも例によって遮るものの何もない田園風景!
さっきまでの快調さが嘘のようにベダルが重い。
坂はほとんどないがせいぜい15Km/hしか出せない。
無論、後輪のギアは最低にしてある。
結構な下り坂でも20Km/h程度しか出ない。最悪。

ふと前に並んで走る2台のMTBが見えた。
女性の2人組らしい。
こんな私より遅いので、ベルで道をあけてと頼む。
一人がスピードをあげてどいたら追い付けないくらい速い。
後ろの娘が「速い!」といって止めてくれたおかげで抜けた。
どうやらどいた方がずいぶん余力があって、 もう一人の方に合わせているのだろう。

2人を抜いてからも状況は変わらない。
完全に周りなんか見る余裕ない。
1時間30分くらいこんな状態だったろうか、 右折して4号線に合流するとの看板発見。
助かった。逆風とはいえやや左めから吹いていたので、 ここで右折すれば追い風になるはず。

信号も何もないので車の流れが途切れるのを待つ。
1分ほどそうしていると後ろから1台のMTBが来た。
慌てて横のスペースにどくと隣に止まった。
あ、さっき抜いた2人のうちの1人だ。

「こんにちはー。」
「ども。」
(中略)
「どこまで行くんですか?」
「青森まで。」
「へー。大変。」
お、やっともう一人がやってきた。
さっきの推測は当たっていたようだ。
「ねぇねぇ、この人青森まで行くんだってぇ。」
「えぇ?頑張ってくださいねぇ。」
ひょっとして、あきれられてる?私。
やっと車の流れが切れた。
「では、さようなら。」
登り坂にもかかわらず30Km/hを超える速度で走れたのは 追い風になったせいか、それとも女の子にいいとこ見せようとしたのか。

2.5 カメラ小僧たち

正午すぎた。
予定では十和田で昼食のつもりだったが、店がない。
七戸まで行けば道の駅 があるのでそこで食べることにする。

4号線に入ってからずっと追い風になるかと思ったら
いつの間にかまた向かい風になっている。
30Km/h出せたのは4号線に入ってから数百メートルだけだった。

結局道の駅についたのは13時近く。
女子高生の集団を発見してなんとなく足元に目をやる。
ほとんどストッキングの中1人だけルーズソックス。
1人だけだと何だか浮いているように見えるな。

天間林村に入ったころからやけにカメラを構えた人が数人。
おいおい、俺なんか撮っても何にもならないぜ。
ん?どうやら彼らは線路に向かってカメラをセットしているようだ。
何を撮ろうとしているんだろう。
それからしばらく走ってみると数人どころじゃない、数十人の人がいる。
これは単に鉄道オタクが日曜日に写真をとりに来た感じじゃないぞ。

ふと、歩道にいる赤ちゃんを抱いたおばさんが線路の方を指差している。
赤ちゃんは線路より変な格好で走ってくる自転車にいちゃんに興味があったようだが、 私の方はその指にしたがって線路を見た。
なんじゃありゃ?
肌色の屋根にくすんだピンクの車体。
およそ奇麗とはいい難い電車の姿が一瞬見えた。
何でみんなあんなもの 一所懸命撮ってるんだろう??

[みちのく道路]の看板が目につくようになってきた。
思わずみちのく一人旅のサビの部分を口ずさむ。
考えてみりゃ、これもみちのく一人旅じゃん。
サビの歌詞に複雑な気持ちを感じつつ、看板を見るたび思わず歌う。
はたから見たら変な奴に見えた ことだろう。

みちのく道路は青森までの近道で15kmほどショートカットできるらしい。
しかし惜しむらくは有料道路で当然自転車は通れないと思われる。
しかたないので野辺地町の方に向かう。

2.6 宿に着いてから

野辺地からしばらく海沿いを走る。
至るところにホタテの売場がある。
ホタテ大好きの私としては寄りたい買いたい持って帰りたいの衝動を 押えるのにひと苦労だった。

もうどっち向きに走っていても風が向かっている。
20Km/h以上出すことはほとんどなくなった。
青森市に入ったころには16時をすぎ、宿に着いたのは17時すぎ。
結局150Km以上を10時間かけて漕いできたことになった。

今夜の宿はビジネスホテルなのに24時間入浴可能の大浴場を持つところ。
疲労回復には風呂が一番だ。
そろそろタウンページで探すのにも慣れ、 アイウエオ順で一番最初のものに決めてしまうこともない。

しばらく休んでから夕食は地料理が売りの居酒屋に。
明日1日は漕がないので今日呑んでも平気だ。
当然ホタテを頼む。めちゃくちゃ旨い。

偶然隣に座ったおじさんがいた。彼も一人らしい。
聞くと毎年この時期にいろんなところで山スキー をやっているそうだ。
今年は八甲田だといっていた。
一人旅どうし気が合ったのか、いろんな話をしながら呑んだ。

さて、いよいよ明日は今回の最大の目的である弘前城桜見物。
自転車はお休みだ。