玄関ではご主人が訪ねてきた客と話している。
まったく解読不可能。
東北弁はハングルに似ているように聞こえることに気づく。
恐れていた強風は逆に助けとなっていた。
つまり追い風になっていたのだ。
登りになってもギアを下げずに進める。
お、八戸への分岐だ。
ここからはほとんど下りでしかも追い風と来ている。
35Km/h出して無風と感じるということは風速は10m/sくらいか。
八戸はかなり大きい街だ。
104号線をひたすらまっすぐ走ってこの街をつっきり、
海に出られればそこに目的のウミネコ繁殖地がある。
あれ、今たしか104号線を走ってきたよなぁ。
まっすぐ走ったつもりがどこかでずれたかな。
交差点で地図を見ているとおじさんが声をかけてきた。
「どこへ行くんだい?」
「ウミネコを見に行きたいんですけど。」
「それじゃこの道をまっすぐ行ったらいい。蕪島って看板が出るから」
おじさんが指した道は自分が行こうとした道を左折した道だった。
「危ねー、まっすぐ行こうとしてましたよ。」
「あー、そっちいっちゃ駄目だ。山の方に行っちゃう。」
てつや危機一髪。
この道まっすぐ行きゃいいってんだからあとは楽だ。
途中で広い道を横切る。45号線だ。
青森に向かうにはこの道を十和田市の方に行けばいい。
ウミネコを見たらまっすぐ戻ってくればいいな。ラクチンラクチン。
やがて蕪島が見えてきた。
おいおい、なんだいありゃ。
海岸にお椀を伏せたような蕪島の周りにおびただしい数のウミネコ。
そばにいってみた。
遠くからウミネコのたくさんいるさまを見るのかと思ったら違う。
前も後ろも右も左もウミネコだらけ。
おりからの強風に向かってホバリングしているウミネコもいる。
手を伸ばしたら掴めるぞ、こりゃ。
蕪島には頂上に神社のようなものがあるようなので登ってみる。
足元にもウミネコがいる。足の踏み場もないくらいだ。
テリトリー侵されたっつって襲ってこないかなぁなどと思いつつ、
神社の裏手に回って海側の斜面を見てまた驚いた。
さっきまでと大違いの辛さにヒィヒィいいながら、
来るときと同様にまっすぐ進む。
何だかさっき通った道と違うような気がするが気のせいだろう。
……いや、明らかにさっきと違う道だ。
おかしいなぁ、来るときはまっすぐだったのに。
って、当たり前だ。道なりの逆が常に道なりであることはない。
風に気をとられて道をちゃんと見てなかったなぁ。
しかたないのでそのまま進む。
やがて45号線への交差を示す看板発見。
ラッキー、これであとは十和田市を目指すだけだ。
さて、どのくらいずれてしまったろう。
来るときに交差した道は覚えている。
しかしどれだけ進んでもその交差点は見えない。
結局30分ほど走ってやっとさっきの交差点に来た。
ずいぶん遠回りしたものだ。時刻は10時30分を回っていた。
距離だけではない。10m/sの強風が真正面から行く手を阻む。
しかも例によって遮るものの何もない田園風景!
さっきまでの快調さが嘘のようにベダルが重い。
坂はほとんどないがせいぜい15Km/hしか出せない。
無論、後輪のギアは最低にしてある。
結構な下り坂でも20Km/h程度しか出ない。最悪。
ふと前に並んで走る2台のMTBが見えた。
女性の2人組らしい。
こんな私より遅いので、ベルで道をあけてと頼む。
一人がスピードをあげてどいたら追い付けないくらい速い。
後ろの娘が「速い!」といって止めてくれたおかげで抜けた。
どうやらどいた方がずいぶん余力があって、
もう一人の方に合わせているのだろう。
2人を抜いてからも状況は変わらない。
完全に周りなんか見る余裕ない。
1時間30分くらいこんな状態だったろうか、
右折して4号線に合流するとの看板発見。
助かった。逆風とはいえやや左めから吹いていたので、
ここで右折すれば追い風になるはず。
信号も何もないので車の流れが途切れるのを待つ。
1分ほどそうしていると後ろから1台のMTBが来た。
慌てて横のスペースにどくと隣に止まった。
あ、さっき抜いた2人のうちの1人だ。
「こんにちはー。」
「ども。」
(中略)
「どこまで行くんですか?」
「青森まで。」
「へー。大変。」
お、やっともう一人がやってきた。
さっきの推測は当たっていたようだ。
「ねぇねぇ、この人青森まで行くんだってぇ。」
「えぇ?頑張ってくださいねぇ。」
ひょっとして、あきれられてる?私。
やっと車の流れが切れた。
「では、さようなら。」
登り坂にもかかわらず30Km/hを超える速度で走れたのは
追い風になったせいか、それとも女の子にいいとこ見せようとしたのか。
結局道の駅についたのは13時近く。
女子高生の集団を発見してなんとなく足元に目をやる。
ほとんどストッキングの中1人だけルーズソックス。
1人だけだと何だか浮いているように見えるな。
天間林村に入ったころからやけにカメラを構えた人が数人。
おいおい、俺なんか撮っても何にもならないぜ。
ん?どうやら彼らは線路に向かってカメラをセットしているようだ。
何を撮ろうとしているんだろう。
それからしばらく走ってみると数人どころじゃない、数十人の人がいる。
これは単に鉄道オタクが日曜日に写真をとりに来た感じじゃないぞ。
みちのく道路は青森までの近道で15kmほどショートカットできるらしい。
もうどっち向きに走っていても風が向かっている。
20Km/h以上出すことはほとんどなくなった。
青森市に入ったころには16時をすぎ、宿に着いたのは17時すぎ。
結局150Km以上を10時間かけて漕いできたことになった。
今夜の宿はビジネスホテルなのに24時間入浴可能の大浴場を持つところ。
疲労回復には風呂が一番だ。
そろそろタウンページで探すのにも慣れ、
アイウエオ順で一番最初のものに決めてしまうこともない。
しばらく休んでから夕食は地料理が売りの居酒屋に。
明日1日は漕がないので今日呑んでも平気だ。
当然ホタテを頼む。めちゃくちゃ旨い。
さて、いよいよ明日は今回の最大の目的である弘前城桜見物。