その7 苫小牧〜大洗

7.1 さんふらわあ

5月2日も残り1時間となった。
苫小牧発大洗行のフェリー、[さんふらわあおおあらい]は準備万端整った。
入船可能のアナウンスが聞こえなかったが みんながぞろぞろ入っていくのでついていく。

二等客室はひとり一畳分もないようなザコ寝状態である。
1万円ちょっとで関東圏まで連れてってくれるのだからしかたない。
どうせ日がな一日寝て過ごすつもりだ。
出発までまだ少しある。
船内の浴室で体を洗っておこう。

浴室で面白い奴に会った
彼の名は鹿野君。
北海道から東京の学校に出てきているらしい。
客室に戻ってふと横を見ると、そこには鹿野君が。
何たる偶然。これ以降船の中ではほとんど彼と行動を共にすることになる。

7.2 野郎と一緒でなければなぁ

船が動き出した。
狭い客室は嫌なので外で出発の様子を見る。
さらば北海道よ。
鹿野君といろんな話をしながら遠くなる港を見ていると 突然灯りが消された。
すわっ、閉め出されたか。
そう思って慌てて戻ろうとしたそのとき…。

ふと上を見あげると、まさに満天の星空。
星ってこんなにたくさんあったのかというくらいの空。
思わず「うわぁ」と声をあげる。
鹿野君はうちの田舎もこんなもんすよ、と不粋な言葉。
しかし、こんな空は久しく見ていなかった私にとっては素晴らしい光景だ。
一緒に見ているのが野郎でなければもっとよかったろう。

「日の出見てみたくありません?」
鹿野君の言葉に同意して4時30分ころの日の出を待つ。
寝てしまうと起きられない可能性大なので起き続けることにする
ロビーのようなスペースで新聞を読みながら時を待つ。
ついには眠気に耐えられずうとうととし出す。
そうこうしながら空が白んできた。

日の出にはそれからさらに30分ほど待つ。
海にかかる雲は不思議な形をしている。
海面にはもやがかかったように薄く低い雲がかかっている。
その向うに太陽は顔を出した。幻想的な風景。
やがてそのすべてを海上に出した太陽は、雲にさえぎられて真っ赤になっている。
あぁ、一緒に見ているのが野郎でなけりゃなぁ。

7.3 ビンゴ

日の出も見たし、本格的に寝る。
人は多いがたまたま両隣にいないのが救い。
しかしこれ、もし女性が混じっていたら お互いたまったもんじゃないな。

お昼に目覚める。
買い置きしてあったパンを食べる。
鹿野君は何も食べないつもりらしい。
パンも要らない って。

少ししてシャワーを浴びにいく。
風呂は夜の限られた時間だけだがシャワーはいつでも使える。
とはいえ、砧グラウンドのシャワーに匹敵する状態のシャワールームに 人はいない。

さっぱりしたところでゲームコーナーで時間を潰していると15時になった。
15時からはビンゴ大会が行なわれる。
どうやら航海ごとに行なわれるようで、さっそく参加する。
鹿野君はすでに臨戦体制だ。

次々に読み上げられる数字。
ちっとも開かない。
次々にあげられるリーチの声。
リーチすらかからない。
次々に渡される賞品。
以前としてリーチすらかからない。
やがて渡される最後の賞品。
最後までリーチはかからない。

うがー!

7.4 到着

再び寝る。
とにかく寝だめをしておかなければならない。
今夜は大洗に泊まる気などさらさらない。
大洗から東京まで約100km。
夜のうちに走ってしまうつもりだ。

やがて17時くらいになって目覚める。
完全に目がさえてしまったので起きることにする。
到着予定は19時。それまで外でも眺めていよう。

陸が見える。
その上にある雲の切れ目からいく筋もの光芒が海面に注いでいる。
きらきら輝く海面を眺めながらぼーっとしてみる。
ぼーっとしながら水平線までの距離を計算する
船の高さも計算に入れてだいたい10〜20kmくらいのはずだ。
到着は近い。

客室に戻るとみんなが準備をしている。
私も荷物を整理しなくては。
最後に残った2切れのパンと少しの烏龍茶を平らげる。
鹿野君はバイクなので下の駐車スペースに降りる。もうここでお別れだ。
おかげで退屈しないで済んだ。ありがとう。

18時30分。少し早めの到着となった。
事務所に輪行袋につめた自転車を受け取りにいく。
こいつを組み立てたら夜間走行が待つ。

それはまさに恐怖の夜間走行となったのだった…。