予報では今日の夜、関東地方は雨とのことだ。
今のところ雲は薄く、降り出しそうな気配はない。
このまま降らずにすめばいいが。
大洗には去年友達とドライブに来たことがあるが、道なんか覚えてない。
しかも荷物が増えるのが嫌だったので関東地方の地図は持ってない。
6号線に乗りさえすれば後は一本道のはずだ。
船で鹿野君にちょっと見せてもらった地図の記憶を頼りに進むつもり。
大洗港を出たところで早くも破綻。
左鹿島、右水戸ってどっちにいったらいいんだ?
南に向かうわけだから左でいいはず。
だが、地図の記憶に鹿島の文字はなかった。
下手すると鹿島の方に行くと銚子の方面に連れてかれてしまわないか?
右にする。
看板が出ていても知らない地名のものばかりだ。
関東の地図も持ってきとけばよかった。
お、こっち行けば6号という看板発見。大きな通りに出る。
しばらく走るが一向に6号線らしきものは見えない。
コンビニでバナナを買うついでに聞いてみる。
「この道をまっすぐ行って15分くらいのところで交わってるよ。」
って、そんな簡単な説明をするのに私のメモ帳に書きやがって。
いやどうもありがとう。
道が暗い。
付けているライトの性能が悪いこともあるがよく見えない。
対向車が来るたびにヘッドライトで路面が見えなくなる。
しかも歩道にはやけに植え込みが多く、普通に走っていてもぶつかりそうだ。
傾斜も風もまったくないにもかかわらずスピードは15km/h程度。
やがて6号線との合流が見えた。
しかしライトが暗い。
ぶん殴るとしばらくついていたがすぐにご臨終を迎える。
電池を新しくしても変わらない。
電球がいかれてしまったようだ。
困った。
やがて大きな橋にさしかかる。利根川だ。
やっと茨城脱出。
このころから今までじっと耐えてきた空が泣き出す。
雨対策はバッチリだ。
後輪に取り付けたバッグに雨よけカバーをつける。
水分を一切吸わないシャツとウィンドブレーカーの組合せで体も大丈夫。
タオルを頭で海賊巻きにして準備完了。
メガネにつく水滴が対向車のライトに照らされてキラキラ。
自転車を止めて水滴を拭くことが頻繁になる。
ブレーキは濡れて「ギギギギギーー」とすごい音。
夜中の1時にはちと問題な音だ。
遠慮がちなブレーキングになる。
完全静止はある程度スピードがゆるまったところで飛び降りておこなう。
これはもはやサイクリングではない。
幸い、歩道がない場所は並行して走る道がある。
遠回りになるが命には替えられない。
橋をくぐり、ラブホテルの脇を通り、あぜ道を通って切り抜ける。
どのくらい来ただろう、
広い歩道を走っていたところで突然歩道がなくなる。
左に道があるので例によって回避。
しかし、全然見当違いの方向に向かっている。
ついには来た方向に戻されるようになって回避をあきらめる。
しかし回避しないにしてもここは路側帯は狭いし、カーブしてるし、
道もでこぼこしている。
十分注意しなくては。
後ろを振り返る。車が来た。止まる。
もう一度振り返る。しばらく来ないようだ。
思い切って車道に飛び出す。
「踏め踏め踏めーーー!」
疲れ切った体に鞭打って精いっぱいペダルを踏む。
後ろから車が来たとしても横に回避は不可能。
このカーブで車が自転車を認識できるかどうか怪しいものだ。
車来るなと念じつつ、車道の真中をとにかくつっ走る。
数百メートル走ったところで歩道に戻る。
フゥッとひと息。
何とか生きてる。
柏あたりになって道が都会じみてきた。
男女入り混じった高校生の集団が走り回ってる。
こんな夜中に楽しそうでいいのぉ。
松戸から江戸川を越えるとだいぶ落ち着いてきた。
距離からして家に2時くらいに着く予定でいたが、もう3時近い。
4時を回るのは確実だ。
雨はすでにやんでいる。
やがて見慣れた風景が現れる。
なんだか分からないが心を満たすものがある。
そういえば自転車に乗って帰ってきたのは初めてだったな。
不思議な感覚だ。
5月4日午前4時すぎ、総距離840kmの旅を終え到着。
留守電にはお帰りのメッセージ。
嬉しさも達成感も超越した感情がこみ上げる。
無事に着いてよかった…。