初音ミク論?

今年になってから、Macのおまけ「ガレージバンド」でDTMのおもしろさに気がついてしまったてえしゅが、仕事帰りのある日、ひょこっと寄ったヨドバシカメラの、なぜかゲームソフト売り場にそいつはいました(ページのバックの画像は、さなりうむさん http://www.q-ice.com/diary/blog/diary.cgi より拝借しました)。

「はつ・ね・・ミク??あぁ、ニコニコ動画で流行ってるやつかぁ〜」
興味はあるけどMacじゃつかえないのか・・んっん、ん〜なんだこのパッケージ。と、手にとってしげしげとながめるうちに、なにか・・こいつが自分のことを呼んでいるような気がしてきたのです。

もともとゲームはほとんどやらないし、アニヲタでも二次元マニアでもないのだけど・・っていいわけかぁ?・・結局、欲しかったデジカメの売り場とミク売り場を何回か往復して、ヨドバシをでるときには手の中にしっかりとあいつをにぎりしめていたのです。そして、あいつはわがIIDAKEにやってきました。同時にヤフオクでDELLのノートも買った・・

(すいません以下の伴奏カラオケはみんな使い回しです<m(_ _;)m>)。

記念すべき第一声はそのころ気に入ってたサントリーオールドのCMでしたが、ことばの乗らないスキャットなら得意中の得意とばかり思う存分高音を響かせるミクでした(クリック)

うちのミクが最初に日本語で唄ったのがこれです(クリック)デフォルトの設定ですが、そのままでも歌詞が聞き取れないということはなく、その完成度の高さにやられました。

何回も聴いてるうちに機械に励まされている自分に気がつきました。ニコニコ動画でランクを競う神職人たちにはかないっこありませんが・・これでいいのだと。

しかし、デフォルト設定のままでは、やる気のない唄いっぷりが耳につきます(クリック)

「退屈しのぎに、おっさんにつきあってカラオケにきたけど、なんだこの古い歌(−_−#)。もう、めんどくさいしぃ、100えんショップでお菓子買ってはやく帰ろう・・」
とでもいいたげな、そんな唄いっぷりもおもしろい。

色々パラメータいじることもはじめましたが、もともとの声の細さはかわりません。この、紙のように薄っぺらく透明な声質はハモったりコーラスを響かせる場合には好ましい特徴になります(クリック)童謡みたくなるけど。

フランジャーやエコー、EQなどのエフェクトのかかりも上々です(クリック)。声質的にはもともとロボットみたいなユーミンとか山下達郎、大貫妙子などおっさんホイホイ系にもぴったんこです。

日本の歌ばかりじゃつまんないんで、洋ものにも挑戦してみました(クリック)。これなんか声質から最適?と思ったのですが(クリック)、どうも外国語は余り得意じゃなさそうです(=_=;)。

さて、
初音ミクの衣装は、1980年代の音楽シーンを塗り替えたヤマハの名機DX7がテーマです。

ちょうどそのころの音楽界は、MIDI規格の統一など、いまにつながる様々な革新の真っ最中でした。シンセによる合成音だけでなく、生楽器のサンプリングによるPCM音源が様々なシーンで使われるようになりはじめたのもそのころです。

とりわけ画期的だったのはLinnドラムの登場でした。

1980年代初頭に登場したLinn Drum LM-1(写真はLM-2:1982年発売)は、世界で初めてPCM音源を使用したドラムマシーンで、それまでのエレクトーンのオマケ的なリズムマシーンとは一線を画す、ホンモノのドラムからサンプリングした音源による、プロのレコーディングで使えるリズムマシーンでした。黒いボディにオレンジのパネル文字、両サイドの木製パネル、叩き出されるタイトな音色・・・新車が買えるほどの値段でしたが、すぐに普及しました。有名なところではクリスマスの定番、ワムのラストクリスマスのドラムがLM-1だそうです。

打ち込みドラムがあたりまえの現在では考えられないことですが、当時アメリカのスタジオミュージシャンにとって、このリアルなドラムマシーンの登場は脅威で、録音スタジオでのリン・ドラム使用の中止を求めて署名運動や賠償請求なんてことがあったそうです。いまでは笑い話ですが、当時は人間のドラマーが失業すると本気で恐れられていたのです。

世の中には新しいテクノロジーをおもしろがって利用し、共存しようとする人がいる反面、改革によって自身のアイデンティティーが失われるのではないかと恐れる人々も必ずいます。お医者さんで聴診器にこだわってレントゲンを信用しない人はさすがに今はいませんが、新旧あわせて両方同じように使えればもっとよい、という貪欲な発想にならず、あれかこれかの二分法でしか考えられない人はどの世界にもいるんですねえ。逆説的に抵抗感を持つ人がいればいるだけ、そのテクノロジーが画期的でありホンモノだということなのです。

今、現役の歌手やアイドルにとって初音ミクがけしからん存在であって、有名TV局が「初音叩き」をするのもおそらく同じ流れなのでしょう。しかし、それだけ脅威に感じられていると言うことは、それだけ初音ミクがホンモノである証拠です。どのプロダクションにも属さない、どの放送局でもかからないバーチャルアイドルの歌が、ネットで何百万回も視聴され、ヒットしているということは、従来の音楽業界の慣習や利権を根底から覆す現象なのです。つまり、後世振り替えれば2007年のいまがまさに時代の転回点、ブレークスルーのまっただ中なのです。

もちろんボーカロイド達がいくらがんばっても、人間の歌い手がいなくなることは絶対ありません。でも80年代以降、普通のポップスの伴奏パートの多くがすぐに「打ち込み」に入れ替わったことを考えると、バックコーラスは機械の声で行うのが普通という時代はそう遠くありません。そういえばミクの妹の「リン」という名前はもしかして・・・。

鏡音リンときいて・・・
初音ミクがDX7ならば鏡音リンはLinnのドラムかと妄想が止まりません。
(2007年11月29日・亭主記)

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