Bクラスの人生-進学教室の日々-

 無難に日常生活を送るために必要な常識は、学校で言えば何年生程度なのでしょうか?。亭主考えるに恐らく大部分の場合、平方根や三角関数の計算はまず必要なく、英会話が必要なシーンも恐らく年1回あるかないか・・と言う事が多いのではないでしょうか。つまり買い物でごまかされない程度の計算力と、教育漢字が全部読める程度の読解力があり、最低限の地理や歴史、理科の学力を持つこと・すなわち「小学校卒業程度の学力」があれば日常生活で困ると言うことはほとんどないのではないかと亭主は思います。そして事実、亭主は小学校卒業程度の学力で毎日暮らしています。ただし30年前の小学生なので、「太平洋ベルト地帯」とか「四日市の石油コンビナート」なんて死語も出てしまうのですが、ともかくその当時、中学受験をめざして覚えたことは、まるでパソコンのROMに焼き付けられた記憶のように、その後どんなに自分自身がバージョンアップしても変わらず残っています。

 亭主は両親が仕事にかまけてくれたおかげで、小学5年生までは全くの野放図・見事なまでの放任状態で育ちました。ただ3歳年長の兄がたまたま荒川区の私立中学に通っていたため、なんとなく、中学は区立じゃないほうがいいのかなあぐらいのことは考えましたが、5年生の夏まではまさか自分が受験生になるなんて考えはありませんでした。
 当時、中学受験の進学塾は「四谷大塚」てえのと「日進」てえのが2大メジャーで同級生の頭の良い美人の子(たしかワダケイコ(^^;)さん:元気だろうか)が通っていたこともあり、亭主も四谷大塚進学教室を希望し、通うようになりました。この進学教室のシステムは、今考えてもかなりぞっとするほど実力主義というか士農工商といいますか厳しい世界だった様に覚えています。そこではまず会員・非会員という区別があり、ときどき行われる「会員選抜テスト」で300点満点(算数・国語各100点満点+理科・社会各50点満点)の250点ぐらいとらないと会員にはなれません。亭主の兄は大した準備もなく一発で会員になったのでたかをくくったのがよくなかったのか、結局5年生の夏からはじめて、3回目ぐらいの挑戦でなんとか亭主も会員になれました。まあこの時点で身の程を知れば良かったのですが、四本の矢をイメージした黒光りする会員バッチと藤山一朗のうたう「進学教室の唄」のソノシートをもらっただけで当時は有頂天。なんといってもあこがれのワダケイコさんと同じ教室の会員になったもんねってなぐらいなもんでした。
 実際には会員になってからも競争は厳しく、テストのできによってA,B,Cの3クラスがあり(なぜかA→B→Cの順番で難しい)その3クラスも各々3つに細分化され結局、9段階の実力べつクラス分け(それ以下の非会員をくわえると10段階)がなされ、点数がさがるとすぐにクラスもさがるという誠にわかりやすいシステムでした。難しいCクラスのなかでも一番・つまり9段階のトップ「中野・国立組」にワダケイコさんはいました。このクラスは300点満点のテスト(Cクラスはテストの問題自身もとくに難しい)でつねに280点以上をたたき出すような猛者ばかりあつまる、男子なら麻*・*成・武*、女子ならば桜*・女**院などをめざすクラスです。

 で、てめえはどうだったのかい?といえば、あこがれのワダケイコさんの応援もあって、5年生の冬に会員になって本格的に(一応!)勉強をはじめたのですが、結局最後までCクラスには入れませんでした。小学校高学年ともなればいささかの自意識はあるもんの、大人のような打算とは無縁で、今考えてもこの生涯で二度とないほど純粋に努力したつもり、でもBクラスどまりが亭主の実力でした。そして、ワダケイコさんなどCクラスの子たちと遊んだりするなかで世の中には本当に頭の良いヒトがいるんだなあということも何となく解りました。最も「違うなあ」と思うのは、幾何の問題の解き方で例えば補助線のひきかたなどは、単なる知識ではなく「知恵・ひらめき」というものが必要で、それはなかなか努力だけでは得られないということを思い知りました。Cクラスの子供たちは元々の「知恵」が高い(=排気量が大きいエンジン)所へもってきてさらに努力して「知識」も身につけている(=回転数が高い)ようなもんで、どうにもかなわんなあといういわば、11歳にして「身の程」を知ってしまったことが亭主にとって幸なのか不幸なのか未だに解りません。

 結局、亭主は兄の通う荒川区の進学校には進まず(受けたけど落っこちちゃったもんねー(^^;))、身の丈にあった中学に進み、今日に至るまで身の丈にあった人生を送っているつもりです(もちろん女房と子供は別格:四谷大塚ならCクラスだもんね!)。ちなみにあこがれのワダケイコさんは最初から最後までCクラスのトップだったにも関わらず、なぜかまさかまさかの第一志望、桜*中学は不合格で、良妻賢母の跡*中学に進学しました。きっと今頃はいいおかあさんになってるんだろうな。