中央大学『大学院研究年報』文学研究科26 1997 121-132頁
 
 
社会問題としての「淫行」−東京都青少年条例の改正をめぐる攻防−
      
                              山本 功
 
 
はじめに
 
 この論文は、東京都議会に提出された陳情書・請願書を分析し、いわゆる「淫行」処罰をめぐる社会問題過程の一端を記述するものである。これは、「東京都青少年の健全な育成に関する条例」(以下、「青少年条例」とする)に「淫行処罰規定」を設けるべきとするクレイムによって構成されている社会問題である。また、それに反対するクレイムもなされ、今なお進行中の問題である。
 いわゆる「テレクラ」を規制する条例が1995年に岐阜県で成立して以来、全国各地で「青少年の性」をめぐる議論がなされ、条例制定・改正が行われているが、東京都では「淫行」処罰が焦点化している。その是非を問うことは本稿の関心事ではなく、端的に誰が、どのように、どんな場で「青少年の性」についてクレイムの申し立てをしているかを記述したい。したがって、「淫行処罰」制定を求めるクレイムもそれに反対するクレイムも等価に、同じ手法で分析を加える。関心の焦点は「淫行」にではなく、「淫行」をめぐるポリティックスにある。
 
T 「淫行」概念と青少年条例
 
 ここでは「淫行」概念を概観するが、まず各道府県の青少年条例について触れておかなければならない。簡単に述べれば「淫行(いんこう)処罰規定とは、18歳未満少年少女とのみだらな性行為を禁じるもので、東京都及び条例のない長野県を除く他の道府県で既に条例化されている」1)ものである。条例であるために道府県によって条文は異なっているが、飯野守によれば「典型的な表現は、『何人も、青少年に対しいん行又はわいせつな行為をしてはならない』とするものである」2)という3)
 「淫行」概念をめぐっては、法学的な議論も少なからずなされているが、1985年10月23日の最高裁判所判決で合憲との判断が下され、この判決文がしばしば言及される。
「『淫行』とは、広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性行又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱つているとしか認められないような性交又は性交類似行為をいうものと解するのが相当である」4)
 このように、青少年条例の「淫行」概念は、「満18歳未満の青少年」を保護する目的でつくられたものである。その際、法的には「青少年」とは男女ともに含んだ概念であるが、主要には女子を想定しているように思える。
 本稿で論じる「淫行」問題は、この青少年条例に限ったものであるが、この他にも「児童福祉法」第三四条一項六号で「児童に淫行させる行為」を禁止する条項があり、同法の裁判の判決でも「淫行」概念をめぐる判断が下されている5)。さらに、刑法第一八二条では「淫行勧誘」の罪が定められており、「営利の目的で、淫行の常習のない女子を勧誘して姦淫させた者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する」とある。
 
U 東京都青少年条例の「淫行」処罰規定と関連する動き
 
 本稿で扱う「淫行」処罰規定の制定運動は、単に東京都だけの独自の運動というより、近年の全国的な流れのひとつとして位置づけるのが妥当であろう。それは、ブルセラ・デートクラブ・テレクラといった女子の性的な非行にまつわる一連の動きである。1990年代初頭の「有害コミック」問題6)では、主要には男子の性非行が想定されていたと言える。「有害コミック」が性非行の誘因とみなされ、男子少年は「加害者」たりえる者との想定がなされていた。それと対称的に、これらブルセラ・デートクラブ・テレクラでは、女子少年は性的な「被害者」たりえるとの想定がなされている7)
 その典型的な現れが1995年に成立した岐阜県「テレクラ規制条例」である。これを嚆矢に、複数の府県でテレクラ規制が検討され、この流れは今なお進行中8)である。また1996年2月には参議院でテレクラ規制を求める国会質問がなされ9)、渋谷区では独自に条例を制定する動きも報道されている。東京都での「淫行処罰規定」制定運動は、こうした流れの中にあると言えよう10)。同3月に都は青少年問題協議会11)に「淫行」処罰規定の導入を諮問することを決定し、4月には都議会文教委員会で、6月には都議会定例会で青少年条例の強化を求める陳情・請願が賛成多数で採択された。社会問題としての「淫行」をめぐる社会過程は、いま現在進行中であると言える。
 
V 東京都青少年条例改正を求める請願・陳情
 
 ここでは東京都青少年条例の改正を求める陳情・請願12)を分析し、誰が、どのようにクレイムを申し立てているかをみていく。
 
(1)概要 
 これらの陳情・請願は全部で431件あり、のべ署名者数は178,275名にのぼる。この署名者数は従来の陳情・請願の署名者数と比較しても非常に多いと言える13)。種類別には陳情が15件、請願が416件。前者には紹介議員がおらず、後者はいるという違いがあるが、実際の議会での取り扱いに差異はないため、この区別はせずに分析を進めていく。
 
(2)提出時期14)
 最初に提出されたものは1994年9月の1件である。ただし、これは文面において全く独自なもの15)であり、例外と見なしてよいだろう。これ以降の提出時期は以下の通りである。 1995年6月1件、9月2件、10月3件、11月66件、12月14件、1996年1月78件、2月172件、3月94件。すなわち、この運動は1995年6月から1996年3月の10ヶ月間に渡るものであり、とりわけ11月から翌3月の5ヶ月間に集中していたと言える。
 このように数ヶ月間の間に陳情・請願が集中しているのは特徴的であろう。さらに詳細に提出月日をみると、同時に多くが提出されている日がある。多い順位で並べると3/13の35件、1/4の28件、2/27の26件、11/16の23件、2/22の20件、3/26の18件、2/16の16件、2/23の15件。これが集中している上位8日であり、のべ181件で全体の42.0%を占めることになる。
 
(3)市区別
 提出者を市区別にみると、以下の表のようになる。表中の「総署名者数」とは、本稿で分析している陳情・請願の代表者と「外○人」と表記されている人数を加算したものの累計であり、代表者本人も含まれている。
 
表1 青少年条例改正を求める陳情・請願の市区別分布
市区名 件数 総署名者数 北区  9  2,152 小金井市  5  2,015
千代田区 28  2,489 荒川区 50  1,257 小平市  1   272
中央区 11  1,630 板橋区 11 18,388 日野市  1  1,107
港区 11 10,425 練馬区 13  2,003 東村山市  7  1,608
新宿区 30  1,035 足立区 32  2,267 国分寺市  3   798
文京区  4  2,467 葛飾区  1    21 田無市  2   101
台東区 13   189 江戸川区  1   104 福生市  1    87
墨田区  5  2,669 区部計   370 159,310 武蔵村山市  1   545
江東区  3  6,833 八王子市  8   843 多摩市  1   404
品川区 47 11,590 立川市  1   315 稲城市  1   253
目黒区  1  5,604 武蔵野市  5  2,227 羽村市  1    14
大田区 69 31,773 三鷹市  3  2,611 あきるの市  1  2,621
世田谷区 10 21,975 青梅市  2    11 市部計   56 18,676
渋谷区  1    70 府中市  6   252 神奈川県  1   109
中野区  5 29,541 昭島市  2   346 埼玉県  3   149
杉並区  9   688 調布市  3    77 千葉県  1    71
豊島区  6  4,140 町田市  1  2,169 総計    431 178, 315


 
 都内各地から陳情・請願がなされているということが分かる。区部では23区全てから提出されており、市部からも21市を数える。ただし、この表はあくまでも代表者の住所をもとに作成したものであり、署名者が当該市区の住民であるとは限らない。
 この表から何らかの規則性を読みとろうとすることは難しい。市区によって件数・署名者数ともに大きな偏りがあることは明らかだが、それが何によるのかはこのデータだけでは何とも言えない。例えば「繁華街」を抱えている新宿・渋谷・豊島区だけをみても30件1,035人、1件70人、6件4,140人と大きな違いをみせる。大田区の69件31,773人、中野区の5件29,541人、世田谷区の10件21,975人といった非常に数多くの署名が出されている区と、渋谷・葛飾区のように100人に満たない地域の違いは何によるのか、この表からはとりあえず分からない。
 そこで、第3節と第4節の分析軸である「提出主体」「紹介議員」を先取りして、まずは署名者数の多い大田・中野・世田谷区だけを取り上げて詳細を検討してみよう。
 大田区は件数・署名者数ともに最多であり、提出主体もバラエティに富む。「肩書なし」が18件、青少対14件、自治会・町内会11件、「その他」8件、保護司(会)・補導員6件、スポーツ・武道団体4件、PTA3件、業者団体2件、環境浄化、子ども会、商店会、各1件である(各カテゴリーについては第4節を参照されたい)。すなわち、この区では青少対、自治会・町内会、保護司(会)・補導員、PTAといった地域に根ざした諸団体が多くの署名を集め、陳情・請願したと言える。ただし、大田区で特徴的なのは請願の紹介が特定の議員に集中していることである。陳情の1件、A議員の2件を例外として、残り66件をB議員が紹介している。どの市区においてもその選挙区選出議員が紹介議員となる傾向があり、必然的にそれぞれの市区ごとに紹介議員が固定化しがちであるが、大田区はとりわけその傾向が強いと言えよう。
 中野区で署名者数が多いのは、5件中の1件が28,825人と飛び抜けて多くの署名を集めているからである。しかもこの請願は紹介議員が23名と、会派・選挙区16)を越えた議員が名を連ねている。提出主体は5件全て「肩書なし」。紹介議員は5件とも異なる組合せ(23名、4名、2名、1名、1名)であり、先の大田区とは対照的である。
 世田谷区は10件中3件がPTA、1件が保護司(会)・補導員、残りは「肩書なし」である。個々の署名者数は3桁から4桁と多く、また中野区と同様に紹介議員は10件全て異なる組合せ(7名、5名、4名が6件、1名、1名)である。
 ついで、件数だけをみて多いのは先の大田区69件、荒川区50件、品川区47件である。
 では、大田区は上述したとおりなので、荒川区はどうであろうか。団体別にみると、多い順に「肩書なし」21件、自治会・町内会13件、PTA6件、「その他」5件、スポーツ・武道、商店会、青少対、保護司(会)・補導員、母の会、各1件である。署名者数は、3桁が2件あるのみで、あとはみな2桁と少ない。荒川区の特徴は紹介議員である。50件の請願で、紹介議員は2名しかおらず、両者とも同区選出議員である。興味深いことに、代表者の肩書の有無に明確な傾向が表れている。C議員は「肩書なし」21件中19を占め(残り3件はD議員)、他方D議員は何らかの肩書きのある29件中27件の紹介議員となっている(うち1件はC、D両議員が紹介者であり、1件はC議員)。C議員の紹介した請願は「肩書なし」の請願であり、D議員では地域の団体の代表者名による請願の紹介者となっているのである。すなわち、この区では紹介議員の違いから請願書の傾向の違いを見て取れるということになる。
 最後に、品川区をみる。47件中13件がPTAであり、ついで「肩書なし」10件、自治会・町内会7件、「その他」6件、スポーツ・武道団体4件、業者団体2件、保護司(会)・補導員2件、環境浄化、青少対、母の会が各1件である。紹介議員となっているのはE、F、Gの3議員であり、みな同区選出議員である。同区では大田区と同様、F・G議員連名の1件を例外として、いずれも単独で紹介議員となっている。内訳はE議員32件、F議員10件、G議員4件である。
 
(4)提出主体
 陳情・請願書には、提出者の欄に氏名とともに肩書が記されているものが半数を超える。それをもとに、提出主体を団体の種類ごとにみていこう。ここで「提出主体」としているのは、肩書で「○○会会長」「○○会代表」というようにある団体を代表する肩書だけではなく、「○○会社代表取締役社長」といった個人の職種や役割を記入している人もいるためである。
 表の数字は左から陳情・請願の件数、署名者の総数、1件あたりの平均署名者数である。
 
表2 提出団体別件数・総署名者数・1件あたりの署名者数
団体種類 件数 総署名者数 総署名数/件数
肩書なし  195 @103,292  C  529.7
自治会・町内会   59   3,496      59.3
PTA   46 C 13,676  D  297.3
青少対   30 B 16,945  B  564.8
その他   27   3,305     122.4
保護司(会)・補導員   16   2,408     150.5
スポーツ・武道団体   13    754      58.0
母の会   13 A 17,059  A 1,312.2
環境浄化   11   4,529     411.7
防犯協会   7 D 11,568  @ 1,652.6
業者団体   6    763     127.2
子ども会   4    196      49.0
商店会   4    324      81.0
   計  431  178,315     413.7


 
 代表者個人の氏名のみで、団体の役職等の肩書が記入されていないものを「肩書なし」とした。件数、署名者数ともにこれが最も多い。
 次いで多いのが「自治会・町内会」の59件である。ここには連合町内会やアパート・マンションの自治会も含まれている。署名者数はさほど多くはない。最多のもので386人、最小は1人、平均で59.3人に過ぎない。したがって、「自治会・町内会」の陳情・請願は件数は多いが、他団体と比べて、さほど署名を集めていたわけではないということが分かる。市区別にみると、千代田区が13件と最も多く、ついで大田区11件、荒川区8件、品川区7件が「町内会・自治会」で目立つ市区である。
 PTAの46件が件数としては3番目に多い。学校別にみると小学校PTAが23件、中学校17件、高校3件、その他・不明3件である。署名者数は5千数百から代表者のみによるものまで、バラエティに富み、1件あたり平均297.3人と自治会・町内会の約5倍になる。市区別には品川区14件、足立区12件、荒川区6件が上位3市区である。
 「青少対」とは「青少年対策○○地区委員会」との肩書が示されているものである。これは、「青少年問題協議会設置法」に基づく都および市区町村の青少年問題協議会の下部組織として、1957年に都が「設置基準および運営要領」を作成し、結成するよう都が指導してできた組織であり、現在都内に740地区存在し、44,179人の委員を擁している17)。1件あたり平均署名者数が564.8人と提出主体別では3番目に多いのだが、これは1件で1万2千人以上もの署名を集めている請願があるためであり、それ以外は全て平均値を下回る。署名者数が2桁台の請願も30件中17件を占め、必ずしも青少対が多くの署名を集めているというわけではない。市区別には大田区が12件と最多だが、いずれも署名者数は100人未満である。ついで東村山市からの6件が目に付く。6件中4件が3桁の署名を集めており、また10名の会派を異にする議員が紹介議員として名を連ねている。同市からは7件の請願が出されているが、うち6件がこれであり、しかもみな同一内容でかつ同じ日に提出されていることから、東村山市では青少対が運動の中心だったと言えよう。
 「その他」に分類したものは何らかの肩書が付されているが、他のカテゴリーに分類できないもの、固有名でどのような団体か分からないものが含まれている。
 「保護司(会)・補導員」は、青少年の非行問題に直接関わる役割ということでまとめて分類した。「補導員」という個人の肩書と、「少年補導会代表」や「保護司会代表」と団体を代表するものが含まれている。大田区から6件出されており、うち1件が千人以上の署名を集めている。
 「スポーツ・武道団体」の内容は、テニスサークルが5件、柔剣道が4件、体操2件、野球1件、その他1件である。ひとつ435人の署名を集めたものがある他は、いずれも2桁台である。警察署名を冠した団体がひとつ含まれる。
 「母の会」は「子を持つ母親の立場から女性の特性を生かしつつ広報啓発、街頭補導、社会環境の浄化活動等を行う」18)、警察署に連絡先をおく民間団体である。13件の陳情・請願を出しており、署名者数をみると5千人台1件、2千人台4件と、多数の署名を集めたものが多い。
 「環境浄化」としているのは、「○○地区少年を守る環境浄化推進協議会」や「○○青少年の環境を守る会」「○○の青少年を守る有志の会」といったように、団体名の中に「環境」「青少年」という語句が入っている団体を一括した。これも千人台の署名のある請願が3件あり、1件あたりの平均が411.7人と多い。次節で分析する、紹介議員が33名もいるという請願はこの中の一つである。
 「防犯協会」は、名前の通り肩書にそう明示されてあるものを一括した。1件あたりの平均署名者数が1,652.6人と最も多いのはこの団体である。5千人台が2件、3桁台が4件と多人数の署名を集めている。市区別には板橋区から4件、練馬区2件、北区1件である。板橋区では11件提出されているが、肩書のあるものは6件で、うち4件が防犯協会であり残りは母の会と警察署名を冠したスポーツ団体であり、いずれも警察と関係のある団体である。
 「業者団体」の内容は、地域名と「料理飲食業組合」「商工会議所」「トラック協会」「米穀小売商組合」「青果物商業協同組合」といった名称で構成される団体である。
 「子ども会」はその名が明示されているものと、「学童クラブ」という名称のものを分類した。商店会と同様、件数・署名者数・1件あたりの署名者数ともに少ない。
 請願者が何らかの肩書を記入しているもの431件中236件(54.8%)をもとに分析してきたわけだが、残りの195件(45.2%)がいかなるつながりで署名を集めたのかが分からない以上、ここでの分析は部分的なものに過ぎない。「肩書なし」の提出者の中には全く新たなカテゴリー化可能な団体があるかもしれないし、また上記の分類に含まれるものもあるかもしれない。
 このことを確認した上で、一定の考察を加えよう。第3節で陳情・請願の代表者の住所と署名者のそれは必ずしも一致するわけではないと断ったが、それはここでの提出主体の分析においても言えることだ。だが、図らずも、団体の性格によって一定の傾向を見いだせるように思える。というのは、ここで分類して取り上げた諸団体・役職は、どれもがみな地域で活動しているものである。さらに言えば、「業者団体」「商店会」を除けば、いずれも何らかの形で青少年問題に関わりのある団体である。その中で1件あたりの署名者数をみると、最も多いのが「防犯協会」、ついで「母の会」と、地域で活動し、警察と関係を持つ団体である。両者とも3番目に多い「青少対」よりも倍以上の署名を集めている。この3者だけが1件あたりで「肩書なし」の陳情・請願を上回る署名を集めている。それに続くのが「環境浄化」団体、「PTA」「保護司(会)・補導員」である。「自治会・町内会」は件数こそ多いが、署名は少ない。これは、必ずしも青少年問題に特化した団体ではないからだろうか。
 いずれにせよ、今ここで明らかになったデータだけで結論は出しえない。1件あたりの署名者数の違いが、青少年問題に対する「熱心さ」の違いなのか、「資源動員」力の違いなのか、あるいは何らかの別の要因があるのかは、判断できない。
 
(5)紹介議員
 都議会議員94名が青少年条例の改正を求める請願の紹介議員になっており、これは全議員(定数128)の73.4%を占める。会派は「自由民主党」「公明」「新進党」「社会党・市民」「民社・コア東京」「生活者ネットワーク」と、全8会派中の6会派にまたがっている19)
 次に、個々の請願の紹介議員の会派別にみてみよう。請願の紹介議員は必ずしも1名とは限らず、複数の紹介議員がつくこともあるため、算出の便宜上5名以上の紹介議員がついているときには一括して「5名以上」とする20)
 最も多いのは「自民」が単独で紹介議員となっている請願であり、251件にのぼる。以下、民社40件、新進党39件、公明27件、「5名以上」20件、「自・自」15件、社会8件、「自・自・自・自」3件、「自・社」3件、「自・進・公」3件の順位となる。それ以外の紹介議員の組み合わせは「公・公」「公・公・公・公」「公・自・自」「自・公」「社・進・民」「進・自・自・自」「進・社」が各1件である。
 1996年6月26日には「東京都議会平成8年第2回定例会」において本稿で取り扱っている陳情・請願が審議され、結果はここでみた紹介議員の分布と同様に、共産党と東京市民21の2会派以外の賛成で、東京都青少年条例の改正を求める陳情・請願が採択された。
 
(6)請願内容
 本稿は「淫行」処罰規定に関心を払っているが、取り扱っている陳情・請願は必ずしもそれだけのものではない。これらの陳情・請願は、東京都青少年条例の改正を求めるということでは共通しているが、内容は同一ではない。最も多いのは「淫行処罰の条項を加えた条例に改正していただきたい」とするもので426件(全体の98.8%)ある。次いで多いのが「不健全な図書類の指定にCD−ROMを追加指定すること」の279件(64.7%)。以下、「不健全な図書類の指定に『緊急指定条項』の条項を設けること」248件(57.5%)。「不健全な図書類等を収納した自動販売機の規制条項を設けること」や「自動販売機設置場所等を規制すること」といった自販機規制の要望174件(40.4%)、「書店・コンビニエンスストア等で販売される不健全図書等の『陳列区分』条項を設けること」129件(29.9%)、「不健全な図書類の指定数を多くすること」49件(11.4%)、「不健全な図書類の販売方法に規制条項を設けること」26件(6.0%)となっている。21)
 
V 青少年条例改正に反対する陳情・請願
 
 (1)概要
 青少年条例の改正に反対する陳情・請願は401件提出されており、のべ署名者数は8、350人である。うち陳情が2件、請願が399件であった。この案件は共産党と東京市民21以外の全会派反対で不採択となっている。
 なお、同一の条件で収集した陳情書・請願書の中にはこれら以外にも「青少年条例の廃止」を求める陳情13件が含まれているが、これは全会派一致で不採択となっており、本稿の分析枠組みとは趣旨を異にするものであるため、分析対象には入れていない。
 
(2)提出時期
 淫行処罰規定等の制定に反対し、青少年条例の改正に反対する陳情・請願は1996年3月の1ヶ月間の内の5日間に集中している。1996年3月18日に331件で最多。以下、27日に36件、26日に21件、25日10件、19日に3件。以上で全部である。条例改正を求める陳情・請願よりも遥かに短い期間、特定の日時に集中していると言える。これは、この条例改正に反対する運動がそもそも、条例改正運動に対抗するために起こったからであろう。
 
 
(3)市区別
表3 青少年条例改正に反対する陳情・請願の市区町別分布
市区名 件数 総署名者数 北区 13   166 小金井市  5   118
千代田区 18   169 荒川区 13   183 小平市 14   204
中央区  5    5 板橋区 13   18 日野市  1    1
港区  9    9 練馬区  4 3,089 東村山市  8    8
新宿区 33   275 足立区 26   332 国分寺市  3    3
文京区 16    44 葛飾区 13   17 東久留米市  7    7
台東区  3    23 江戸川区 16   16 東大和市  6   11
墨田区  2    2 区部計   248 7,205 武蔵村山市  1   145
江東区  7    7 八王子市 34   135 多摩市  2    2
品川区 10    10 立川市  4    4 清瀬市  6   239
目黒区  4    62 武蔵野市  8    8 国立市  3    3
大田区  8    8 三鷹市  1    1 保谷市  3   33
世田谷区  8    76 青梅市  3   13 大島町 10   10
渋谷区 14  2,481 府中市  2   149 市町部計  148 1,121
中野区  3    85 昭島市  3    3 神奈川県  1   20
杉並区  6    6 調布市  3    3 埼玉県  3    3
豊島区  4   122 町田市 21   21 千葉県  1    1
  総 計  401 8,350


 
 
 青少年条例の改正を求める陳情・請願と同様に、反対陳情・請願も都内各地から出ていることが分かる。23区すべてと22市町を数えることができる。とは言え、署名者数のばらつきが非常に大きいことは明らかである。千人を超える署名を集めているのは練馬区の 3,089人、渋谷区の2,481人だけであり、代表者のみによる陳情・請願(表3で件数と総署名者数が同じ数値のもの)が区部で8カ所、市町部で13カ所と、代表者一人での陳情・請願が多いことが分かる。
 まず、署名者の多い市区町の内実を見ていこう。最多の練馬区では4件3,089人だが、これは肩書きなしの個人名で提出されている1件が2,960人もの署名を集めているためである。この1件には13名の都議が紹介議員となっているが、これは日本共産党東京都議会議員団の13議員全員である。ついで多いのは渋谷区の14件2,481人だが、ここでも同様にそのうちの「新日本婦人の会」による1件が2,334人の署名を集めているのみで、残りはみな100人に満たないものである。この1件も前述したものと同じく、共産党の13議員が紹介議員となっている。
 ついで件数の多い市区町を見ていこう。最多は新宿区の33件である。署名者数はいずれも2桁台にとどまり、うち22件は代表者のみによるものである。提出主体別には、労働組合が16件、「肩書きなし」10件、その他4件、新日本婦人の会2件、母親連絡会1件である。
2番目に多いのが足立区の26件である。内訳は労働組合17件、「肩書きなし」4件、新日本婦人の会2件、民主商工会、母親連絡会、共産党各1件となっている。
 これらの2区では、代表者以外の署名者がいるのは、新宿区の「その他」1件に3人の署名者がいるのを例外とし、すべて「肩書きなし」の請願である。逆に言えば、何らかの団体名を肩書きとしてつけている陳情・請願は、代表者個人しか名前を出していないということが言える。
 町田市の21件が件数で3番目に多い。労働組合14件、新日本婦人の会3件、その他3件、
母親連絡会1件である。いずれも代表者のみによる請願である。4番目に多いのは千代田区の18件であり、内訳は労働組合9件、新日本婦人の会5件、母親連絡会3件、その他1件となっている。
 以上みてきたように、青少年条例の改正に反対する陳情・請願は都内各地から出されているが、いくつかの例外を除いて署名者数がごくわずかか、全くいない陳情・請願が大半であると言うことができる。
 
(4)提出主体
 
表4 改正反対の団体・総署名者数・1件あたりの署名者数
団体種類 件数 総署名者数 署名数/件数
労働組合  156    465     3.0
新日本婦人の会  123   2,546     20.7
肩書なし   39   5,041    129.3
その他   34    195     5.7
母親連絡会   21     29     1.4
婦人民主クラブ   8     8     1.0
日本共産党   6     41     6.8
医療団体   5     5     1.0
民主商工会   5     9     1.8
国民救援会   4     11     2.8
   計  401   8,350     20.8











 

 
 青少年条例の改正に反対する陳情・請願の提出主体を件数・署名者数・1件あたりの平均署名者数をまとめてみたのが表4である。前述した表2と見比べると明らかであるが、改正を求める陳情・請願と比べ、1件あたりの平均署名者数が少ないと言える。表2では1件あたり署名者数が最小なものは「子ども会」の49.0人であったが、この表4では「肩書きなし」の129.3人を例外とし、のきなみそれを下回っている。
 件数的に最も多いのは156件の労働組合である。団体名から判断して分類した。組合の種類ごとにみると、最も多いのは「東京都教職員組合」の41件で、各地の分会から提出されている。ついで、「○○区労働組合総連合」のように、市区名を関したものが20件。3番目に「○○出版労働組合」や「出版労連」といった出版・印刷関係が19件。4番目に、組合名の中に「自動車」「運輸」「交通」という名称が入っているものを分類した運輸・交通関係で14件。5番目に「自治労連都職労」など東京都の職員組合が11件。6番目に「東京土建一般労働組合」の5件。並びに「全逓」や「総務庁職員組合」のような国家公務員の組合も同じく5件である。その他分類しなかったものが41件ある。「労働組合」の提出者の住所で上位5市町区をみると、最多は足立区で17件。ついで新宿区16件、町田市14件、文京区11件、八王子市10件となる。
 ついで「新日本婦人の会」の123件が多い。各地域名を冠し、〇〇支部や〇〇支部△△班として出されているものがほとんどである。略称である「新婦人」を用いたものも含まれる。この団体は目的として「核戦争の危険から婦人と子どもの生命を守る。憲法改悪に反対、主義復活を阻止する生活の向上、婦人の権利、子どもの幸せのために力をあわせる。日本の独立と民主主義、婦人の解放をかちとる」ことを掲げ、1963年に設立された全国的な女性団体であり、会員約20万人を擁している22)
 3番目に多いのは「肩書なし」の39件で、特に団体名を表記せずに個人名で出されているものである。こうした個人名での陳情・請願の署名者が決して少なくないと言うのは改正を求めるものであっても同様で、興味を引かれる。
 「その他」が第4位にくる。ここに分類したものは、その他のカテゴリーに入れられないものであり、様々な団体や固有名でどのような性格なのか分からないものが含まれる。ここでの総署名者195人中103人の署名を集めているのが「『有害コミック』問題を考える会」であり、目をひく。これは1990年頃にやはり都青少年条例の改正を巡って、コミック規制に反対の立場から結成された市民団体である。
 ついで「母親連絡会」の21件が5番目に多い。これは1955年に設立されており、「『核戦争から子どもを守ろう』と世界母親大会が開かれ、それ以来毎年日本母親大会を開催。『生命を生み出す母親は生命を育て生命を守ることをのぞみます』のスローガンを掲げて母親運動を行う」団体である23)
 8件で6番目の「婦人民主クラブ」は、すべて代表者一人による請願である。この団体は「婦人の解放、子どもの幸せをめざす活動を重視。民主的教育を守り発展させる活動。生活を守り豊かにする活動。平和と民主主義を守る活動」を行っているとする24)
 7番目は日本共産党の6件であり、日本共産党○○区議会や△△地区委員会名で出されている。8番目の医療団体5件の内訳は診療所名のものが2件、医療生活協同組合が3件となっている。
 5件を提出している「民主商工会」は全国に610単位あり、39万人の会員を擁し「全国商工団体連合会(全商連)」を構成する団体である。この団体は「戦後、米軍占領下の中小企業者は過酷な徴税攻勢に苦しめられ、営業と生活をまもるために、重税や人権無視の徴税に反対してたたかい、その運動の中で」1951年にうまれた「自主的民主的業者団体」であるとされている25)。4件を提出している「国民救援会」は、「解放闘争の犠牲者を救援するために1928年に創立された大衆的組織。(中略)戦前は三・一五事件、四・一六事件の大弾圧の犠牲者や、天皇制の軍事的・警察的支配下で逮捕・投獄された人びととその家族を救援した。(中略)弾圧対策方針の普及活動を展開し、冤罪事件の犠牲者や労働者差別事件の裁判闘争をすすめ」ている団体であるとされている26)
 以上見てきたように、青少年条例の改正に反対する陳情・請願を出している団体は、労働組合をはじめとして「革新系」と言われる諸団体であることが分かる。改正を求める諸団体が地域住民団体であったのとは対照的であると言えよう。
 
(5)紹介議員
 青少年条例の改正に反対する請願の紹介議員は「日本共産党」と「東京市民21」の2会派に属する議員15名全員である。もっとも多いのは「共・共・共」と3名連名の形の請願で373件、ついで「共」単独の10件、「共・共」7件、「共・共・市」4件、共産党都議会議員団13名全員によるもの2件、以下、「市」単独、「共」4名、「共」2名が各1件である。
 第3章で見てきたように、改正を求める請願の紹介議員はそれぞれの市区選出議員であることが多かったが、それとは逆に、反対する請願の代表者住所と紹介議員の選挙区との間にはほとんど関係を見いだせない。
 
(6)請願内容
 青少年条例改正に反対する陳情・請願の要望は基本的には4パターンである。最も多いのは「1.『淫行処罰規定』や『不健全図書類』の『緊急指定』などの警察権限を拡大する制度を設けないこと。 2.青少年の健全な育成は、都民と行政の努力によって行うこと」
とするもので、362件ある。
 ついで、「『東京都青少年の健全な育成に関する条例』に『淫行処罰規定』や『不健全図書類の緊急指定』を設けないでいただきたい」とするもの32件がくる。以上の2つは、いずれも「共産党」会派所属議員が紹介者となっているものである。どちらにせよ、「淫行処罰規定」と「緊急指定」に反対するというもので、内容的には変わらないと言えよう。
 第3に、「『青少年条例』に『淫行処罰規定』の導入や、CD−ROMを不健全な図書類の指定に追加指定することをしないでいただきたい」とするものが5件ある。この請願の紹介議員には「東京市民21」の議員が名を連ねている。
 第4に「『青少年条例』に『淫行処罰規定』を設けないでいただきたい」とするものが2件あるが、これは2件とも陳情であり、紹介議員はいない。
 
W 「青少年の性」をめぐるポリティックスとそのアクター
 
 どのような団体・個人が、「淫行処罰規定」を中心とする「東京都青少年条例改正」をめぐってクレイムの主体として都議会という舞台に登場していたのか、ここまでの分析を簡単に振り返ってみよう。「淫行処罰」を主張する団体・個人は、総署名者数でみると「母の会」「青少年地区対策委員会」「PTA」「防犯協会」「環境浄化団体」「保護司(会)・補導員」といった、警察等の行政機関との関係を有する、地域住民団体であった。
それに対し、「淫行処罰」に反対する団体は、同じく総署名者順で「新日本婦人の会」「労働組合」「日本共産党」「母親連絡会」といった、いわゆる「革新系」とされる諸団体であった。
 筆者は構築主義的な社会問題研究に関心を寄せるものであるが、とりあえず本稿では誰がクレイムをしているのか、ということの把握に限定して記述をしてきた。
 社会問題とは単なる「事実の関数」ではなく、想定された状態に対する定義づけの過程だとする構築主義的な視座からすれば、社会問題としての「淫行」は、少なくとも二つの論理的水準を異にするクレイムから成り立っていると言える。ひとつには、「淫行処罰規定」が必要だとするクレイムで、これは「青少年が性的被害に遭っている」という状態があるから、「悪い大人を処罰し、青少年を保護する」手段として「淫行処罰規定」が必要なのだ、とするクレイムだ。もう一つは「青少年が性的被害に遭っている」という状態の判断とは別に、「淫行処罰規定」は「青少年の人権を侵害するおそれがある」ことを主要な論拠に、同規定に反対するクレイムだ。
 こうした「青少年の性」を巡る論議は、実は筆者にとっては珍しい光景ではない。先に言及した「有害コミック問題」もまた、基本的には同じ論理構成の社会問題であったと言えよう。すなわち、片や「青少年の問題」、「青少年の健全育成」に心を寄せる警察等行政機関と関係を持つ地域住民団体が「子どものために」様々な施策を要求する。他方、全く違う水準で「子どもの人権」を守らんとする諸団体がそれに反対し、対抗的な運動を行う。主張は異なれど、両者ともに「青少年」「子ども」の問題という領域を構築していることにかわりはない。そこにおいて、「大人」とは違う社会的配慮が必要な存在として「青少年」や「子ども」というカテゴリーが、あるいは「子どもの保護」「子どもの人権」という問題領域が達成されているわけだ27)
 「淫行処罰規定」問題がどのような道をたどっていくかは現時点ではまだ分からないが、
いずれにせよ「子どものために」多くの大人たちが様々な論議を喧々囂々する事態になるであろう。今の日本社会で、「大人」にとって「青少年」や「子ども」というものが現にどんな存在で、どんな存在であってほしいのかを見るのに「性」の問題は絶好の試金石であろう。そうしたより質的な考察は、稿を改めて探求してみたい。
                                1996年9月30日脱稿



1)東京都青少年協会『青少年育成マニュアル 1996』 90頁
2)飯野守「『いん行』ないし『みだらな性行為』の処罰規定」
    清水英夫・秋吉健次編『青少年条例 自由と規制の争点』三省堂 1992 120頁
3)なお、神奈川県条例は次のような定義をしている。
「何人も、みだらな性行為またはわいせつな行為をしてはならない」(第九条第一項)
「第一項に規定する『みだらな性行為』とは、健全な常識を有する一般社会人からみて、結婚を前提としない単に欲望を満たすためにのみ行う性交をいい、同項に規定する『わいせつな行為』とは、いたずらに性欲を刺激し、又は興奮させ、かつ、健全な常識を有する一般社会人に対し、性的しゅう恥けん悪の情をおこさせる行為をいう。」(第九条第三項) また、大阪府条例・京都府条例・千葉県条例・山口県条例はそれぞれ「淫行」「わいせつ行為」の範囲を限定している。例えば大阪府条例(第一八条)では、以下のような限定で「当該青少年に対し性行為又はわいせつな行為を行うこと」を禁じている。「青少年に金品その他財産上の利益、役務若しくは職務を供与し、又はこれらを供与する約束で」「専ら性的欲望を満足させる目的で、青少年を威迫し、欺き、又は困惑させて」「周旋を受け」「売春若しくは刑罰法令に触れる行為を行わせる目的又は青少年にこれらの行為を行わせるおそれのある者に引き渡す目的で」。
4)『最高裁判所刑事判例集』第39巻第6号 413-414頁
5)警察庁少年課監修・福祉犯罪捜査研究会編著『注解 福祉犯罪』立花書房 1993 36-42頁を参照されたい。
6)矢島正見・山本 功「『有害コミック』規制運動の展開」日本犯罪社会学会編『犯罪社会学研究』19 立花書房 1994 74-94頁 を参照されたい。
7)こうした想定に関しては、別稿で改めて論じたい。
8)本稿執筆時点においては、都議会本会議において青少年条例の改正を求める陳情・請願が採択されており、東京都が検討を進める段階に入っている。
9)参議院『文教委員会会議録』第2号 平成8年2月22日 31-33頁
10)こう位置づけることが可能なのは、観察者としての著者だけの特権ではなく、クレイムにおいてもまた、テレクラ等が言及されることによって「一連の問題」として達成されている。すなわち、この部分の著者の記述や「淫行」に関するクレイムによって、「青少年」の「性的」な問題という領域が構築されているわけだ。
11)正式には「第22期東京都青少年問題協議会」。「青少年問題審議会及び地方青少年問題協議会設置法」を受けて制定された「東京都青少年協議会条例」に基づく知事の附属機関であり、「青少年問題に関する総合施策の樹立について調査審議するとともに、関係行政機関相互の連絡調整を図るほか、知事と関係行政機関に意見を述べることができる」と法的に定められている。
12)ここで取り扱う陳情・請願は1996年4月18日東京都議会文教委員会で審議されたものの全部である。改正を求める陳情・請願は1996年4月18日都議会文教委員会で共産党以外の全会派の賛成で採択され、その後の本会議(平成8年第2回定例会)では共産党と東京市民21以外の全会派賛成で採択されている。陳情書・請願書の収集にあたっては前東京都議の橋立けい子氏に御協力頂きました。記して感謝の意を表します。
13)1983年から1994年までの12年間における、東京都議会への平均陳情・請願付託件数は 498.9件であり、最大値が1989年の1,047件、最小値が1991年の223件である。ただし、1989年を含む3ヶ年は改選時における再提出分を含んでいるため、これは見かけ上の数値であり、実数の平均値はより低くなるであろうと思われる。すなわち、改正を求める431件プラス反対する401件の計832件だけで年平均値の倍近くになるわけであり、いかに多い件数であるかがお分かりいただけよう(東京都議会広報課『都議会のはなし1996』1995 9頁より算出)。
14)ここで提出時期として分析しているものは、陳情書・請願書に記されている「受理年月日」に基づくものである。
15)「青少年の健全育成を阻害する有害な雑誌、ビデオテープ、女性の使用済み下着が安易に販売されている実態にかんがみ、青少年が購入できないよう対策を徹底すること」を要望している。内容的には他の請願・陳情と同様であるが、全体の中で陳情が少ないこと、表現が独自であることから、1995年以降の流れとは別のものであろうと考えられる。
16)中野区は単独の選挙区で、定数は4人。
17)東京都青少年協会『青少年育成マニュアル1996』30-32頁、および133-137頁
18)同上 96頁および25頁
19)第14期東京都議会(1993年7月〜現在)の会派は変動が激しく、選挙直後と現在では大きく会派構成が変動したが、ここでは請願の出始めた時点に近い1995年9月21日時点の構成で分類した。同時点での会派別議員数は自民党42人、公明25人、新進党21人、社会・市民14人、共産党13人、民社・コア東京6人、生活者ネットワーク3人、東京市民21が2人である。
20)その内訳は議員数33名が1件、23名1件、10名6件、9名1件、7名1件、6名2件、5名8件である。このように多くの紹介議員がつく請願では、会派を横断することは言うまでもない。
21)ほとんどの陳情・請願の要望は箇条書きで書かれているため、分類にあたって観察者の恣意性の入る余地は非常に少ない。ただし、箇条書きの一項目の中に2つ以上の要望が盛り込まれている場合は、別々にカウントし、また中には箇条書きでないものもあったが、その場合でも個別の要望で分けて数えた。そのためか、都議会議事録による都の計算とは数値が異なっている。都の計算では、「淫行処罰規定」428件、「CD−ROM規制」261件、「緊急指定制度」261件、「図書への規制強化」252件となっている。「自販機規制」や「陳列区分」、「指定数増加」などをひっくるめて「図書規制」としてるため、分類カテゴリーが著者とは異なっている。個別の件数で数値に差があるが、順位的にはかわらない。
22)『全国各種団体名鑑'95年版』シバ 1995 44頁
23)同上 38頁
24)同上 37頁
25)社会科学辞典編集委員会編『社会科学総合辞典』新日本出版社 1992 372-373頁
26)同上 503頁
27)こうした議論は、赤川学「差異を巡る闘争」中河・永井編『子どもというレトリック』青弓社 1993 163-200頁 に詳しい。参照されたい。
 
謝辞 陳情書・請願書の収集にあたって前東京都議の橋立けい子氏、西形公一氏にご協力いただきました。記して感謝申し上げます。