平成14年10月3日更新

平成14年10月1日から医療費負担が更に増えました。

 平成14年10月1日より老人が医療機関にかかったときの窓口負担が増えました。医療機関と薬局の両方で原則1割負担で、収入の多い人は2割負担です。この制度によって医療機関が受け取る収入(いわゆる売り上げ)は全く増えません。老人が窓口で多く支払った金額は国や健康保険組合の得になります。
 平成15年4月1日からサラリーマン本人は3割負担になります。

日本の医療費

 日本の医療費は27兆円。国民一人あたりの医療費は先進国のなかで特に多いわけではありません。
 ちなみにパチンコ産業は30兆円で医療費の27兆円の方が少ないのです。
 日本の医療費の3割は薬剤費です。一方、欧米各国の薬剤費の医療費に占める割合は1割です。この割合の差は日本では薬価が高い薬を医師が多用することと日本の医師の技術料が外国より低く抑えられているためです。

自覚症状が無くても命に関わる病気があります

 高血圧症、高脂血症、糖尿病、慢性肝炎など自覚症状のないことが多いが動脈硬化を速め、直接寿命を縮める病気があります。動脈硬化自体も自覚症状がありません。動脈硬化は脳梗塞や心筋梗塞など血管が詰まって体の一部が死んではじめて症状が出ます。
 病気で苦痛があれば医者にかかりますが自覚症状に乏しい病気ではすぐに医者にかからないでしょう。病気が体の中で起こっているのに気がつかなかったり、検診で異常を指摘されたのに自覚症状がないから大丈夫と放置したりしがちですが、重大な合併症が起きてからでは元に戻りません。

しかもカゼをなめてはいけません。

 カゼと思っていたら別の病気で命に関わる病気だったということがよくあります。
 白血病、肺炎、急性肝炎、膠原病、亜急性甲状腺炎、髄膜炎、虫垂炎などではしばしば自覚症状がカゼのような症状です。カゼだと思っていたら白血病だったなんて、笑い話にもなりません。でも実際によくある話です。
 「お金がかかるからカゼぐらいでは医者に行かない」という人は、金が大事か命が大事かよくお考えを。
 老人が死ぬ原因として多いのは肺炎です。インフルエンザが毎年冬流行しますが、インフルエンザにかかった老人がただのカゼとすぐに医療機関にかからずに肺炎を併発して死んでしまうことが心配です。平成13年12月から自治体の補助によって老人は格安にインフルエンザワクチンが打てるようになりました。 

さらに平成14年10月1日から難病、慢性肝炎の人々にも負担金

 平成14年10月1日から、東京都でも慢性肝炎で税金を納めている人は医療機関受診時に正規の負担金を支払わなければならなくなりました。

次に予想される健康保険法の改定

 とうとう、行き着くところまで来てしまったというところです。たいした収入もない老人からも金を国に納めろというのですから、財務相は、弱者からむしり取るお金が好きですね。
 男性の平均寿命は77歳。60歳で定年を迎えてから17年間仕事をしないで退職金なり年金なり子供の生活援助なりで生きるわけです。しかも、老人になれば病気になりやすいので、医療費負担が1割となり生活費が大変です。金で寿命と老後を買う世の中になってしまいました。
 老後の医療費のため若いうちからお金を貯めておくべきでしょうか?「若いうちからお金を使わずに利殖に励み老後は金にものをいわせて健康で長生きする。」世の中になっていきそうです。

平成14年10月からの医療環境とは

 長期入院させる医療機関は、実質的なペナルティが課せられ(1日あたりの入院費が、長く入院するほど医療機関にとって安くなり)、経営が成り立たなくなります。実際には人道的に退院させられないために赤字になっている病院が増えています。
 病状がどうであれ、たとえ治っていなくても入院が長引いたら、「これ以上の入院は病院の損になるから退院してくれ」といわれることになります。社会的入院(医学的には入院が必要ではないが家族の都合などで自宅に帰らず入院し続けること。住民票を病院に通して入院十数年という患者を知っています。)の防止にはなりますが、長期重症患者の切り捨てにもなります。

生活習慣病と疾病自己責任論

 厚生省は平成8年から成人病を生活習慣病と呼び改めています。多くの人が誤解していますが、成人病イコール生活習慣病ではありません。生活習慣病とは悪い生活習慣により起こされた疾患です。ですから、成人病といわれていた多くの癌は生活習慣病には含まれません。生活習慣病に含まれる癌は家族性を除く大腸癌と肺扁平上皮癌ぐらいです。そういった癌になるのは悪い生活習慣(高脂肪食や喫煙)を行ってきた個人の責任ということになります。生活習慣病になったら疾病自己責任論により公的な保険は使えず医療費は全額自己負担という世の中になるかもしれません。
 生命保険に『成人病特約』はあっても『生活習慣病特約』はないでしょう。『成人病』にはなったら仕方のない病気、『生活習慣病』になったら自分に責任がある病気、という印象を与えます。でも、『生活習慣病』は個人の生活習慣だけで起こるものではないでしょう。職業生活も関係しているでしょうし(作業関連疾患)、環境中の健康に悪影響を及ぼす物質(ダイオキシンなどの発癌性物質)も関係しているのではないでしょうか?

医療費負担増は景気を後退させます。

 医療費自己負担の増額のために我々庶民の手元に残るお金が減ってくるので買える物が少なくなります。購入手控えに拍車をかけています。さらに景気が後退します。
 平成12年4月から公的介護保険導入され、老人医療費1割負担で老後を金で買う時代に突入しました。老後の生活は金次第と中年以上の人たちは貯蓄に励んでいます。しかも銀行倒産の時代ですから利子の付かないタンス貯金です。お金を貯めていない老人の中には子供たちから見捨てられる人も。
 日銀は金利を抑えて設備投資を促すことを目的にしているようですが、国民が消費意欲を失っていて製品を作っても売れるわけがないことがわかっているのに設備投資に金をかける経営者がいるでしょうか?
 また、年金暮らしの老人は金利が低すぎて利子が付かないので生活費・医療費に困っています。低金利で一番儲かっているのは貸出金利で利ざやを稼ぐ銀行です。

 働き盛りのサラリーマン本人の医療費負担が増えたので、サラリーマン本人が医者にかからなくなって、病気をこじらせて長期入院や死亡という事態が心配です。働けるサラリーマンがどんどん病気でいなくなったら日本はどうなってしまうのでしょうか?

 貧乏人は借金をして医者にかかり、病気が治らなければ働きに出られなくて借金は利子が膨らむばかりとなりそうです。

 ソビエトが崩壊し社会保障が縮小したため、ロシアでは平均寿命が5歳下がったそうです。
 これは他人事ではなくなってきています。老人医療費1割自己負担が実施され、多くの人は医者にかかるのをやめてしまいます。高血圧の人が医者にかかるのをやめて血圧の薬を飲まなくなれば血圧が上がり、血管が切れたり動脈硬化が速まり早死にします。せっかく良い薬があるのに残念です。

 これからの日本は医者にかかりにくい国になって平均寿命が頭打ちまたは減少という時代に突入しそうです。政府はこのような事態を望んでいるのでしょうか?

 病人の自己負担を増やして景気を冷え込ませて、その一方で景気対策と称してゼネコンに税金を還元するのは「おかしい」と思いませんか?ゼネコンに投資しなくても景気を活発にする方法があるのではないでしょうか?
 ちなみに医療や福祉に国が投入してくれる金額は20兆円、公共事業には50兆円です。選挙での得票をにらみすぎていませんか?
 私は税金の使い方がおかしいと思います。
 公共事業関連会社には何千人もの天下り官僚がいるのと選挙での票のとりまとめがしやすいから、このような配分になるのです。日本医師会は傘下の各医師会と各老健施設に厚生労働省官僚・財務省官僚の天下りを奨励したらどうでしょうか?日本は官僚のための政治・予算配分ですから、結果的に医療への予算配分があがり、国民の医療・福祉も向上するでしょう。自民党に献金するより効率的です。

・公益法人の子会社は黒字で公益法人そのものは赤字にして多額の補助金をもらっているのはおかしいと思います。補助金は税金です。
・財務省の官僚は高級ホテルの会議室を連日使って仕事をしていますが、本当に必要があるのでしょうか?その費用も税金です。
・会計検査院がしっかり税金の使い道を監視すべきです。ここが日本では一番機能していません。役人の税金無駄遣いをお目こぼしして「院長の財布は大きい」と賞賛されるのは税金を使わせていただいているという意識の欠如です。

 お金が切実に必要なのは病人なんです。
 病気で充分収入のない人間が医療費を支払うには限度があります。

景気回復への私の提案

 政府は景気をよくすることによって税収を上げることを考えるべきです。
 そのためには、

  1. 消費税率を3%以下に下げるか消費税を廃止することによって、国民の消費を拡大する。
  2. 医療費患者負担を軽減することによって、労働者が健康で働け、生産性を確保する。
  3. 都心の国保有の土地を売却する。土地の売買を活性化させることが期待できる。これによって他の地価が下がることはないでしょう。
  4. 景気対策として今までは公共事業に税金をばらまいて建設業の人たちの金回りをよくしてお金の循環を刺激してきました。しかし、これだけ健康不安を国民に抱かせた今、政府がやることは、医療福祉政策の充実です。税金の投入先を医療機関にすればよいのです。そうすれば医療従事者の金回りがよくなりお金の循環を刺激するし、国民も健康に労働に従事できる。ゼネコンからの政治献金は減るでしょうけれど。
  5. 公益法人への補助金を打ち切り、その分の国家予算(税金)を国民の健康のために使う。補助金をもらっている公益法人の子会社が大黒字というのは、おかしい。
  6. 配偶者が労働した場合に税率が変わる今制度をやめるべきです。配偶者の労働に足かせをかけるだけです。多くの人が働いて多くの収入を上げてそれに見合った税金を払うのが日本繁栄の道でしょう。

最後まで駄文をお読みいただきありがとうございます。


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 国民が医者にかかりにくくなってムダ死にする世の中にしてはいけません。
 長生きすることは罪悪という政策はなくすべきです。


文責 石垣 宏 


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